仮想現実という現実世界

絢瀬レン

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Ⅴ.奇襲

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 祐太達がドライブルーへ到着し、既に3日が経過していた。
モモの傷の回復も考慮した長めの滞在。


 「私の所為で行動が遅れて本当にごめんね、祐太……」

 「気にしないで下さい。僕もダインさんもゆっくり出来るんですから」


 祐太は少しづつ変わっていった。まるで緊張の糸が解けたかの様に、表情が豊かになってきている。モモに優しくほほ笑むと祐太は病室の扉を開ける。


 「ダインさんの所に行ってきますね」






 「祐太、少しいいか…?」


 病室の扉を開けるとそこには祐太をずっと待っていたのかダインが病室の前に立っていた。


 「はい。僕も丁度ダインさんとお話ししたかったので……」

 「そうか……」


 2人は病院内のロビーへと無言で向かう。




 「じゃあ悪いが先に話させてもらうぞ?」


 病院のロビーで缶コーヒーの蓋を開け、ダインは話し始める。


 「君に少しこの世界について話しておこうと思ってな。こちらとしても内部監査委員会には関わりたくない」


 丸一日一切口にしなかった"内部監査委員会"についてをようやく話そうとしてきた。どおやらかなり重要項目らしい。
祐太はダインから貰ったオレンジジュースを一口飲み、ダインの話を真剣に聞き始める。


 「内部監査委員会、国家規格であるこの委員会は国の秩序を乱さない為に形成された機密委員会だ。元々は政府のスパイや内部での紛争を起こさない様に形成されたのだが、最近になって行動が少しづつエスカレートしていった集団だ。一部政府を差し押さえて身勝手な刑法を作成。世に広めていくという大胆な行動に出た時もある。少しやりづらい奴らだな」

 「そうですか……そうするとモモさんを狙った直樹さんという人もそのうちの一人と言う訳ですね」

 「そういう事だ。むちゃくちゃだが従うしか無い……」


 少しの沈黙の後、缶コーヒーを飲み干したダインがゴミを捨て、祐太に話しかける。


 「モモの退院手続きをしてくる。……そういえば祐太、俺に用があるんだったな?」

 「後ほどで大丈夫です。別に大した事じゃないですから」

 「そうか……」


 一人ロビーに残された祐太。外来で込み合ってざわめいている中で一人、違う空気が流れていた……






身支度を済ませ再びリドールの都へ向かう途中、馬車の運転席からダインが話しかける。


 「そういえば、祐太も俺に話があると言っていたな?」

 「…はい。少し真剣な話になるのですが……聞いて貰えますか…?」


 馬車の空気が一瞬で変わった。先ほどまでモモの退院で喜びの話をしていたが、その話が無かったかの様に世界が変わる。


 「多分内部監査委員会の処罰に値するものとみて小声で話します。実は一つ気になっていたのですが、この国に来てからたまに僕の名前を知っている人たちがいるんです。当然僕はその人たちを知らないし、中村祐太だという証明するものもある訳で無い。もしその理由が分かっているなら教えて欲しいんです……」

 「……」


 二人は口を開こうとしなかった。何かを必死で隠そうと俯き、無言のままだ。


 「そうですか……言えない…という所ですね。いいですよ。でも、いずれお話下さいね」

 「祐太……」

 刹那、馬車が動きを止める。


 「?どうしたの?お兄ちゃん…?」

 「一体何の真似だ…!?」

 「お兄ちゃん?」


 ダインが外の何者かと接触した様子。シートの合間を開らき、モモと祐太は外を確認しようとすると…


 「No.25、ダイン・プラインだな?俺様は反政府派のNo.44、霧雨 雄哉。貴様の馬車にNo.01の中村 祐太が乗っていると聞いたもんでな……。そのお命頂戴!!魔風塵!!」

 次の瞬間馬車が一瞬宙に浮いたかと思うと、数十メートル程馬車ごと吹き飛ぶ。祐太たちは馬車に摑まるのがやっとで互いの安否が確認出来ない程であった。


 「くっ……!貴様、何の真似だ……!?」


 転倒した馬車の運転席からゆっくりと脱出したダインが霧雨という人物に脅威を顕わにする。


 「くっくっくっ……いいねぇ……No.25のダイン君?君みたいな奴が一番嫌いでねぇ、すげぇムカつくんだよねぇ?」

 「……質問に答えろ。何の真似だと聞いている…?」


 地面にぽたぽたと血が落ちていく。恐らく先程の衝撃で受けたものであろう。

頭から流れる血は額へと伝い、視界を赤くさせていく。


 「……反政府派と言ったな……貴様、自分のしてる事分かっているよな……?こんなに派手にやったら風紀委員会の奴らも動くのは分かっているだろう……?」


 朦朧とする意識の中、ダインは霧雨に問い続ける。


 「知っているさ、どうせもう立つ体力も殆ど残って無い君に今回特別に話してあげよう。君たちは大きな間違いをしているのさ」

 「……大きな間違いだと……?」

 「ほら、もう意識が途切れてきてるねぇ。……そうさ、風紀委員会が決して君たちの味方では無いという事さ。そもそも風紀委員会とは政府内部からスパイをするのが元来の目的、だからこそ、こちらとしては好都合……するとどうなるか分かるかい?」


 もはや立つ余力も殆ど残って無いダインに霧雨がほくそ笑む様に語りかける。

 「もうやめて……!」


 細く、そして今にも途切れそうな声で叫ぶ声。


 「お兄ちゃんをこれ以上傷つけないで……どうしてそうやって傷つけようとするの……?私はもうこんな世界嫌だよ……だからお願い……」


 先程の転倒で折れたであろう、モモは右足を引きずりながら霧雨に近づいて行く。


 「……お兄…ちゃ…ん……」


 「……けっ、馬鹿馬鹿しい。貴様みたいな下等な奴が俺様に触るんじゃねぇ!!気持ち悪りぃんだよ!!!!!」


 霧雨の右足に縋り付き力尽きたモモに追い打ちをかけるかの様に右足を思いっきり振り払いモモを地面に叩きつけ、そのまま蹴り飛ばす。


 「糞餓鬼がぁ!!」


 「……めろ……」


 転倒した馬車よりまた細い声。まだ幼さを残す男の子の声だ。


 「どうして人は……戦うのだろう……貴様……ダインさんや……モモさんを……どうして……?また……僕は……守れないの……?もう……」




 キサマニハシンデモラウシカナイ……

 刹那馬車より青い炎が灯る。それは直樹と対峙した時と同じ炎。炎の中より一人の少年の姿。一切の輝きを持たない漆黒の瞳。その視線の先には霧雨の姿。もはやそれは"祐太"であり、"祐太"では無かった……。


 「遂に姿を現したな中村祐太ぁ!!貴様を殺して俺様はエリートコース間違い無しじゃぁ!!!早く殺させろぉ!貴様の血を早く浴びてぇんだよぉ!!!!!!!!!!!!」


 狂っていた。霧雨は大剣を玩具の様に振り回しながら"炎"に向かって疾走してくる。瞳孔は完全に開き、最早人間の成せる領域では無い速さで向かって来る。


 「キサマゴトキガワタシニハムカエルトハオモウナ……」

 「いひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ……餓鬼ごときが俺様に向かっていい気になってんじゃねえよぉ!!!!!」


 すさまじい爆音が街道に響き渡る……
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