仮想現実という現実世界

絢瀬レン

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ⅩⅩⅡ.特殊魔法と禁忌魔法

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……身体がきちんと動く……?

どうやら術が解けたみたい。だけど、この状況はどうしたら…?


「私が……この町を……この手で……酷い……」


見渡す限りの廃墟。建物のほとんどは焼け果て、かつての広場は焼死体が疎らに転がっている。まさに地獄絵図。


「私、咲花愛莉の能力は白魔法よ……?どうして、黒魔法の一種である炎系魔法が私から発動しているの……?」


しかし答えは出てこない。


「それ、多分転移魔法だよ。特殊と言われている闇魔法で光魔法以外の白、黒、時、大地、天気と言った基本5種の魔法を別の魔法使いに移転させる魔法。今のは白魔法が使える愛莉さんに黒魔法を使っている誰かの力を転移されたんだね」

「あなたは……」

「世界一の美少女、飴魅茉莉奈よ。あとダインさんとちんちくりん女、未来のダンナのゆうがいるわよ」

「ははっ……茉莉奈さんって、ホントブレないんですね」

「そんな事無いって。にしても随分豪快にやっちゃってるねー」

「茉莉奈ちゃん!少し空気読みなよ!?愛莉お姉ちゃんは今すごく辛そうだし、そもそも私はちんちくりんじゃなくてモモ!その呼び方やめてよ!」

「……大丈夫です。二人を見てたら少し気持ちが楽になりましたから。皆さんと再開出来て良かったです。ですが……少し空気が重いですね?」


愛莉が四人を見る。すると……


「裕太さん……その目は……そうですか、肉体と精神が剥離されて仕舞われたのですか。お辛いですね……」

「……」


裕太は愛莉の目をじっと見つめながら、首を横に振る。きっと愛莉の現状の方がもっと辛いと言いたのだろう。


「ありがとうございます。大丈夫です。これでも私は白魔法使いですから。ここにいらっしゃる人々は全て救います」

「やめときなよ」

「茉莉奈さん……?」

「それで蘇生させたら愛莉さん、またおかしくなるよ。ここの人達全員殺すのが目的だったろうからまた全員殺すよ?生き返らされてまた殺されるとか、そっちの方が可哀想だと思うけど?」

「そんな……」

「どうせ放っておけば"死体消し"があるだろうしね。この先にはマーケットプレイスの街があるから、そこそこ効果あるんじゃないかな?」

「君は一体どこまで俺たちを困惑させるんだ…?」

「別に、困惑させる気なんて無いよ。ダインさん。茉莉奈はゆうの幸せの為に知ってる事を教えて協力してるだけ。勘違いしないでほしいな。茉莉奈はゆう以外の人間はこれぽっっっっっっちも興味ないから!」

『そっか。わかった』


茉莉奈以外の全員が綺麗に同じ言葉を発した。もう慣れっこといった所だろう。


「ねえ、茉莉奈ちゃん。マーケットプレイスって確か露天商が沢山ある町だったよね?その…さっき言ってた死体消し…ってなんなの……?」

「そうね。話しておく必要あるかもだから茉莉奈の知ってる情報を共有しとこっか」








「あぁー。堤さんよぉ、聞き込みすりゃあする程この街は謎だらけだぞぅ?」

「そうですね。これでは埒が開きません。さすがに表商店の人では話にならない。恐らくマフィアのトップとかでないと知り得ない情報なんでしょう」

「だよなぁ。できれば関わりたくはねぇんだが仕方ねぇか……いや、情報持ってそうな御一行がいるじゃねぇか」

「御一行ですか……?どちらに?」

「あそこにいる男二人と女三人。あれは確実に観光客じゃねぇ。それになぁ、分かるんだよオレには。シケたツラしてる”ワンス”が混じってるじゃねぇか。こいつは大収穫だぜ」

「あれは……No.01の中村祐太ですね。ぼくの力を使って少し調べてみましょう」

「そういや堤のにぃさんはどんな力を使うんだぁ?」

「ぼくの力は人の過去を知ったり弱みを握ったり出来るんです。他にもありますが、今やる事はそういう能力を使います」

「すげぇなぁ。確かに人には知られたくない過去とか弱みとかあるもんなぁ」

「ですので渡邉さんが連続放火魔な事も知ってます」

「マジかよ。末恐ろしいヤツだな」

「褒め言葉として受け取りますね。……さて、あの少年ですが、かなり訳ありの様です。そもそも今は傀儡になってますが。使い物になりません」

「へぇ、そいつは最高だなぁ。若けぇ芽は早いうちに摘み取らないといけねぇからなぁ、焼き殺そうじゃぁねぇか」


その刹那、渡邉は裕太たちに向かって走り出す。人間とは思えない速さで。


「オレのナカにある炎の力よ、今その時がきた。さあ、存分に暴れてやろうぜぃ!」


右拳から繰り出される炎の龍、それをストレートパンチをする様に振り被り裕太に向けた。


「燃えよ炎!龍の力で燃え尽きるがいい!」

「!!!?」


気づいた時には既に遅し。裕太は火柱を上げて姿が見えなくなる程の炎に包まれた。


「ゆう!!!?」

「いいねぇいいねぇ、そこのお前。くっそみてぇにびっくりした顔してるじゃねぇかぁ!!てめぇこいつの自称彼女なんだろぉ?こいつは愉快だぜぇ。ひゃひゃひゃひゃひゃ」

「あんたよくも茉莉奈の最愛の人を……!許さない……許さないんだからーーーー!!!」


茉莉奈は泣き叫びながら渡邉に敵意を向ける。


「残念だがてめぇのツレはもう生きられねぇ。わかるだろぉ?青い炎に包まれてるんだぜぃ?……ん?青い炎……?オレの力は赤い色に近かった様な……」

「……ワタナベゴロウ……オマエノチカラハコンナモノカ……?」


青い炎から聞こえる微かな声。裕太の声とは違う太く、恐怖すら感じる男性の声。


「おいおい何だよこれ!?こいつ、生きてるのかよ!?」

「渡邉さん!?やっと追い付きました……って渡邉さん、離れてください!!彼から危険な気配が出てます!」


ようやく追い付いた堤が渡邉に向かいながら叫んでいる。そして、その言葉を聞いた渡邉は疑うこと無く全力で逃げる。


「やべぇぞこいつ。この星の力が全部集まる感覚だぜ。こんなんまともに喰らったら即お陀仏だっつーの!」

「渡邉さん!ぼくの手を掴んでください!この場から転移します!!」


二人がその場から転移した刹那、裕太(?)から放たれた青い炎が燃え盛る。


「……ツギハナイゾ」








「ゆう……ホントに何ともない?」

「うん。まだ感情のコントロールが出来ないし、記憶も飛び飛びにはなるけど……今の所は大丈夫」

「しかし、これからどうするよ?裕太が取り敢えず戻った感じにはなったが……」

「お兄ちゃん、私はそのままセントルチアに向かうべきだと思うの。裕太も安定しないながらも復活したし、何かを見出す可能性はあるんじゃないかなって」

「茉莉奈もさんせー。多分茉莉奈たちは正しい事をきちんと見極めないといけないと思うし。あと、これは勘だけど、あの白髪男が何かありそうなのと、そっちに向かえば会えそうな気がしてさ」

「アラートさんですね。彼はアルビノ体質ですから、日中は動くのが制限はされるでしょうけど。あの方は唯一、一桁ナンバーの外国人ですから。何かしらあると思いますよ」

「……」

「お兄ちゃん?」

「ああ……何か不思議なんだよ。あのアラートという男。そもそも日本にゆかりも何も無い様だが、流暢な日本語を話すし読み書きも出来るそうだ。言語がひとつでないこの世界で日本語という一つの言葉をそこまでピンポイントで話せるものか…?」


ダインのその一言に皆「あっ」という言葉が漏れる。


「……多分ですけど。本当に多分ですけど、リアルタイムで翻訳されてるのではないでしょうか。読み書きはその進化系みたいな。僕や茉莉奈ちゃんたちがいた世界では翻訳が昔よりも容易になったって聞いた事あるんです。だからこの世界でもそういった技術が進んでるんじゃないかなって思いました」

「確かに裕太の言う事は一理あるだろうな。なら、このままセントルチアに向かうのが正解だろう。後は死体消しとやらをしりたいのだが……」

「はいはい、茉莉奈の出番ね。うん、いいよ。死体消しってのは噂程度の話しになるんだけど、禁忌魔法の一つと言われてるの」

「禁忌魔法?」

「そっ、禁忌魔法。ちんちくりんにも分かるように説明するね。
まずは基本魔法の白、黒、時、大地、天気。これらは魔法を使える人なら基本的な事は修得可能よ。
次に特殊魔法と言われている光魔法と闇魔法。数多くの上級魔法はここに集結しているわ。基本魔法を全てマスターして尚且つ、選ばれた人しか受けられない訓練みたいのをしないと修得出来ないすごーくレベルが高いやつ。
そして禁忌魔法。覚える事自体が禁忌で危険な魔法なの。人体錬成や人の存在そのものを消すもの、仕舞いには世界の創造なんかも出来るって言われてるからもー神様気取りみたいな感じね」


茉莉奈の話を聞いた一同は凍りついた様に静まり返っていた。この世界という仮想現実の様相が少しづつ明かされていく。知らない方が幸せだったかもしれない真実。
そんな思いを持ちながら一行はマーケットプレイスの宿へむかうのであった。
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