燃え尽きた灰から蘇るもの

庵ノ雲

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幕間:勇者カズマ・アリシアside3 - 深謀遠慮

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王宮の廊下を歩きながら和馬は思考を巡らせていた。

(最近のアルフォンスはどうしてるんだろうな?)

かつて騎士団長として慕われていたアルフォンスが失脚した後、
貧民街に追放されたという噂は聞いていた。

とはいえ実際に会ったわけではないので詳しい状況は分からない。
ただ帝国内では完全に忘れ去られた存在になっているようだ。

(もしかしたら、もうこの国には居ないのかもしれないな。
 まあ、俺の邪魔にならないなら別にどうでもいいんだけどね……)

アルフォンスに酷い事をした事も可哀そうだとも思ってはいる。
だが、和馬にとってのこの世界は現実感が薄く、物語のように思っているのだ。

故に彼にとって重要なのは自分が主人公として地位を維持し続ける事だった。
そのためには敵になる前に危険を排除もするし味方も増やしていく。
それが異世界で成功するために最も効率的な方法だと心得ていた。

「カズマさまぁ……♡ そちらの方にいらっしゃいますぅ?」

甘えた声で呼び止めるのは元・騎士団長の婚約者だったアリシアだ。
今や完全に和馬の忠実な僕となっている。

彼女の金色の髪が揺れるたびに和馬の中で優越感が膨らむ。

「なんだ?」

「今日のお昼休みにお茶をご一緒したいと思ってまして……。
 それから……もし夜もお時間が空いていたら……」

アリシアは上目遣いでモジモジしながら言葉を濁す。
その意味合いを察して和馬はニヤリと笑った。

「ああいいぞ。楽しみにしてるよ」

「やったぁ! カズマさま大好きですぅ♡」

喜ぶアリシアの尻を撫で回しながら和馬は考えた。
(クク、俺の魅了スキルで随分と都合の良いオンナに変貌したな……)

魅了スキルによってアリシアの心を支配した結果、彼女は従順で貪欲になり、
その肉体と魔導士としての才能は使える駒だと和馬は思うようにしている。

そう……"思うようにしている"のだ。
アリシアに本気になってはいけないと和馬は考えている。

和馬は自分を過信してはいなかった。魅了スキルは強力だが万能ではない。
人間関係や政治的駆け引きにおいて他者を完全に操ることは不可能だ。

だからこそ油断しない。常に周囲を観察し情報収集する。
(アルフォンスみたいに突然反旗を翻したりする輩もいるからな)

例えば帝国内の有力貴族や聖教会といった勢力も要注意だ。
彼らが俺の味方であるうちは問題ない。
しかし一度敵対すれば厄介な相手になり得る。

和馬は高校生だった頃の異世界テンプレ小説の記憶をフル活用して、
自分こそは上手く乗り切る為に労力を惜しまなかった。

---

勇者の執務室に戻ると侍女たちが書類を運んできた。
その中に一通の封蝋された文書が混じっている。

「これは?」

「東方の辺境伯様から届いたものです。勇者様宛ての急ぎだとか」

和馬は眉をひそめながら封を開けた。
内容は要約すると以下の通り。

・魔王軍による侵攻が激化している地域がある
・現地の兵力では防衛困難なため勇者の援軍を要請したい

和馬は思わず溜息を吐いた。
(まったく面倒くさい……こういう時こそ俺の出番なのかね)

とはいえ国から召喚された以上は義務もあるだろう。
それに名声を得るチャンスでもある。

「仕方ないな……行くとするか」

承諾の返事を書き上げながら和馬は考えた。

(東方に行くならついでに温泉でも楽しんでくるか?
 あそこは有名な保養地でもあると聞いているしな)

そんな軽薄な計画を立てつつも
和馬はアルフォンスの事が気に掛かっていた。
(アイツどうしてるんだろう……まぁもう関係ないけど)

しかしその呑気な平穏は長くは続くことは無いだろう。

聖女リーンと共に復活を遂げるであろうアルフォンス。
再び彼らが相まみえる日は近づいている。
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