燃え尽きた灰から蘇るもの

庵ノ雲

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隻腕隻眼の勇者の誓い

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視界を奪われるほど強烈な輝きの中で二人の存在が一体化していく。
それはかつて誰も体験したことのない奇跡の瞬間だった。

「力が……俺に」

隻腕のアルフォンスの右手が鋼鉄のように硬くなる。
握りしめた剣から放たれる魔力波動は以前とは桁違いだ。

視界の悪さも不思議と気にならなくなる――
右目の死角を補うように左半身から感じる第六感が研ぎ澄まされていく。

「これが……真の勇者のチカラ、俺が培ってきた勇者の魂のチカラ……」

圧倒的なまでの全能感。
これまで体得してきた技術や知識が極限まで昇華されていく。
どんな相手でも斬り伏せられる自信が湧き上がってくる。

「すごいです……アルフォンス様」

隣に立つリーンもまた変化していた。
聖杖を握る手は銀光を帯び、全身から放出される
オーラはかつてないほど濃密なものとなっていた。

聖女としての資質が完全に開花した証拠だ。

「私の力も……こんなに」

アルフォンスとリーン。

それぞれの頂点に立った二人は顔を見合わせた。
その瞬間、二人の間には言葉を超えた深い理解が生まれていた。

「リーン……」

「はい?」

「俺の失われた部分を治せるか?」

アルフォンスは改めて自分の欠損した部位を見つめる。
片目、片腕―完璧な勇者になるためには必要な回復だ。

リーンは頷いた。「今の私ならば……できます」

聖女として覚醒した今、彼女には最高位の癒し魔法――
パーフェクトヒールを使う資格があった。

「女神フィリアよ……あなたの加護によりこの者の傷を癒し給え」

リーンの祈りと共に白い光がアルフォンスの全身を包み込む。
眩しいほどの輝きが彼の体を覆い尽くし、
失われた組織を再生させていく――はずだった。

「ん……?」

異変に気づいたのはアルフォンス自身だった。
左肩から伸びるべき新しい腕が現れない。
眼球があるべき位置には何も感じられない。

「どういう事だ?」

リーンも困惑の表情を浮かべる。
彼女の全力を込めたパーフェクトヒールにも関わらず、
アルフォンスの失われた部分は戻らなかった。

「まさか……」

一つの可能性が脳裏をよぎる。

(これはカズマの……異世界勇者のチカラで失った欠損が
 呪いとなって、女神フィリアの祝福を拒んでいるのか……?)

アルフォンスは天を仰いだ。雲間から射し込む陽光の中に、
悲しげな女神フィリアの幻影が見えるような気がした。

「あなたのせいじゃない……俺は……
 この身体のままで勇者の使命を全うしてみせよう」

「アルフォンス様……」

リーンが心配そうに見上げてくる。
アルフォンスが見た女神と同じく悲しげな表情で……

彼女の悲しみを拭うように彼は優しく微笑んだ。

「大丈夫……今の俺にはリーンがいる。君と培い女神から祝福された十分な力がある。
 失ったものを取り戻せなくとも、これからの戦いには支障はないさ」

かつての自分なら迷わず取り戻したかったはずの身体の一部。
それが今は必要ないと言い切れる自分がいる。

カズマとアリシアによって深く傷つけられたアルフォンスの身体。
だが、その魂は強く高潔に蘇った。

(しかし何故かパーフェクトヒールですら直す事が出来ないとは……
 やはりこれは……カズマのチカラの影響なのだろうか……?)

疑念は残るが今は前に進むしかない。

「行こう、リーン。俺たちは世界を救わなければならない」

アルフォンスは新たな決意を胸に刻んだ。
隻腕隻眼のままでも女神の勇者として戦い抜く。

二人は互いを見つめ合い頷いた。そこには揺るぎない絆が確立されていた。
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