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本編
31. 隠しダンジョンへ行こう
ノルフェント・ハイゼンボルク第五王子の鑑定結果に、俺とシュザークの身体に緊張が奔った。
この第三の魔王候補をキディリガン家に連れて帰ったら、キディリガン家に更なる不幸が襲い掛かってしまうのでは……?
それは駄目だ。家の皆のことも心配だが、何より、家には可愛い天使が……可愛い可愛い、妹のシェティーナが居る。――このまま連れて帰るのは駄目だ。
だって、魔力は封じられているけれど、不完全なせいで僅かに漏れ出たものが少しずつ周りに影響を及ぼしている。
俺には一切通用しないし、シュザークも半端ない精神耐性で平常だ。
だが、学園長と護衛騎士二人、隅に控えている従者は顔が僅かに赤い。ランドラークだけは、まだ影響が軽いみたいだ。
護衛騎士の二人はプロ根性なのか、第五王子を見ないようにしている。
魔力を封じられ、淫靡妖艶のスキルが未熟なのに漏れ出たものだけでこれ程の効果があるんだぞ? どんだけ強力なスキルなんだよ……
「ハイゼンボルク第五王子殿下」
シュザークが口を開いた。
「――ノルフェントで、構いません」
第五王子が口を挟む。
「――分かりました。ノルフェント殿下とお呼びしても構わないでしょうか?」
ノルフェントが頷く。
「――では、ノルフェント殿下は、ご自身のスキルを把握していらっしゃるのでしょうか?」
「…………はい」
シュザークは、頷いた。
「ノルフェント殿下、恐れながら殿下に結界魔法を掛けさせて頂いても宜しいでしょうか?」
俺が尋ねると、ノルフェントは俺を見て潤んだ眼を揺らした。
学園長と護衛騎士が、その様子を見てしまったのか……ゴクリと唾を呑んだ。
「――私に結界魔法を、ですか……?」
僅かに震えて不安気にこちらを見詰める姿は、周りの人間に今すぐ抱き締めて護って遣りたくなる衝動を与える。
俺には通用しないけどな。
「はっ、大変言い難いのですが……魔力を封じていても、ノルフェント殿下のスキルが僅かに漏れて周囲に影響を及ぼしております」
ノルフェントは、ハッとして周囲に視線を奔らせる。皆は、更に頬を染めて俯いた。
「――貴方達は平気なのですか……?」
俺とシュザークは、互いを確認するように視線を合わせた。
「私には、そういったものは効きません」
「私も、精神耐性で防げているようです」
俺とシュザークが答えると、ノルフェントは安心したように微笑んで…………被害を拡大した。
「……分かりました。……お願いします」
許しが出たので、早速、結界魔法を張る。
魔力やスキルが出す効果を身体から外に出さないように、なるべく身体にぴったりと沿うように張る。出来るだけ長く保つように設定した。
「出来ました。これで暫くは、大丈夫だと思います」
俺がそう言うと、影響を受けていた者が一斉に安堵の息を吐いた。
「……申し訳ありません……」
それを見たノルフェントが、小さくなって謝った。
「いや……僅かに漏れ出たものだけでもこれか……凄まじいな……」
王太子殿下が溜息を吐いた。
「本当に、申し訳ありません……」
ノルフェントは落ち込んだように、益々、小さくなる。
「ああ、済まない。責めている訳ではない。これでは、さぞ苦労するだろうな、と、思ってな」
「はい……」
ノルフェントは、更に小さくなって俯いた。
「キディリガンの、助かった」
王太子殿下から、お褒めのお言葉を貰った。
「恐れ多いことでございます」
俺は、座ったまま胸に手を宛て礼を執る。
「……ふむ、五日も一緒にダンジョンに潜るのだ。堅苦しい言葉は控えよ。これでは指示伝達に触りがある。呼び名も簡潔にしようじゃないか。私のこともランドラークで良いぞ」
王太子殿下が無茶を言う。
「――そういう訳には……私達のことは名で呼んで頂いて構いませんが王太子殿下をお名前でお呼びするのは……ご勘弁を……」
シュザークが頭を下げる。俺も一緒に下げた。
「ふーん? ノルフェント殿は良くて、私は駄目だと言うことか?」
王太子殿下に睥睨された。
「いえ、そういうことでは……」
シュザークが言い淀む。
「私は何も、呼び捨てにしろとは言っていないぞ?」
「はっ、そこまでおっしゃられるのであれば……恐れながら、ランドラーク王太子殿下とお呼びさせて頂きます」
「殿下だけで良い」
「はっ、――ランドラーク殿下」
シュザークが折れてそう呼ぶと、ランドラークは満足そうに頷いた。
「よろしくな。――シュザーク、ハニエル」
「「はっ」」
「恐れながらランドラーク殿下、愚弟のことはハーシャとお呼び下さい」
シュザークがわざわざ訂正してくれた。嬉しいけど、ランドラーク殿下の不況を買いませんか……?
「ハーシャ……? ふむ、良かろう」
「「――ありがとうございます」」
二人で礼を執って頭を下げる。
「――私も……お二人をそう呼んで構わないのですか?」
ノルフェントが、おずおずと聞いてきた。
「「勿論でございます」」
「――では、シュザーク殿、……ハーシャ殿……宜しくお願いします」
「「はっ」」
俺達は再び礼を執った。
「では、話を詰めましょうか」
学園長が話の続きを促した。
「そうだな。――確か、結界の話だったか……結界は強固なものを張ってもらって良い。私は冒険者でやって行く訳ではないからな」
ランドラークは、そう言って紅茶に口を付ける。
「冷めてしまったな……淹れ直してくれ」
ランドラークが従者に合図を送ると、すっと側に来てカップを下げた。
「畏まりました」
俺達は頷いた。新しい紅茶が配膳されると殿下方が口を付ける。
うん。二人が飲んでくれないと学園長が飲めないし、学園長が飲んでくれないと俺達が飲めないんだよね。
「――実はな、お前達にはダンジョンの魔物だけではなく、学園生からも護って貰いたいのだ」
ランドラークとノルフェントが難しい顔で話し出す。
「この間の魅了事件が片付いてからは、大分ましになったのだが……まだ、私やノルフェント殿に絡んでくる者達がいてな。今回のこの講習も一緒にパーティーを組もうと煩くてな……」
ランドラークとノルフェントが困ったように溜息を吐いた。
「学園と云うものは、こんなに煩わしい場所だったのだな……」
「いえ、違います殿下。学園がこんなにおかしなことになったのは、ここ数年のことでして……今年は更に酷く……あの魅了事件といい、おかしすぎるのです。何故、あれ程の人数の魅了持ちが現れたのか疑問が残ります」
学園長が渋い顔で首を傾げる。
「もしかして……私のせいかも……」
ノルフェントが青い顔で言う。
可能性としては……無くもない。あの強力なスキルなら、不幸招来だったら可能かも知れない。でも、そのせいだけではないだろう。
「いえいえ、ノルフェント殿下のせいではありませんよ……何にせよ、こちらもどう対処すればいいのか考え倦ねているのです」
学園長が深く溜息を吐いて蟀谷を抑える。
「最近は、押しが強くなって来ていて……ちょっと何をするか分からないんです……」
ノルフェントが項垂れた。
「私も相手にはしていないが……時々、腹に据えかねることもある。――魅了を使って来ないだけマシだが……」
ランドラークも大きく溜息を吐く。どうやらかなり疲弊しているようだ。
「絡んでくる者の多くは、冒険者講習を受けている。今度の講習にも参加する。行動が読めないから……正直、不安しかない」
ランドラークにノルフェントが頷く。
「そうでしたか……事情は分かりました」
シュザークが苦笑しながら頷いた。
それからは、当日の待ち合わせ場所や時間等を決め、退室して家に帰った。
正直、疲れた……貴族の作法は堅苦しくて俺には合わない。
そして、夕食後の恒例のお茶の時間。
俺は今日、疑問に思ったことを皆に話した。
「今日、学園長にギルドカードを見せて気付いたんですが……俺達、学園のダンジョンを攻略済みですよね?」
「そうだね。五十階層迄しかなかったけれど、最深部まで攻略したね」
シュザークが頷いた。
「それなのに、ギルドカードには攻略済みのダンジョンとして記載されていないじゃないですか? 何故なんですかね?」
「言われてみれば……そうだね」
首を傾げる俺にシュザークも首を傾げる。
「――もしかして、隠しダンジョンか……?」
ユリセスがボソリと呟いた。
「「隠しダンジョン?」」
俺とシュザークの声が被った。
「あそこはユニークダンジョンだし、あり得るかもな。何かしらの条件を満たせば、先に進めるようになるダンジョンがあるって聞いたことがある……」
ユリセスが顎に手を添えて考え込む。
「条件……か」
俺も考え込む。もしゲームなら……隠し部屋とか、魔物の討伐数とか、種類別に何体倒すとか、か? ゲームの知識が少ない俺では、そのくらいしか思いつかない。
ギルドカードを取り出し、学園ダンジョンの魔物別の討伐数を眺める。二年も居たから階層主以外の魔物は、一種に付き一万は超えている。階層主は千体を超えているし……ん? 三十階層の階層主は、九百八十六体、これだけ千体を超えていない。
「ねえ、皆。学園のダンジョンの魔物、階層主以外で全種一万を超えている人は?」
皆を見渡して聞くと、ギルドカードを確認し始めた。
一万を超えているのは、全員だった。
「じゃあ、全部の階層主を千体以上倒した人は?」
俺が聞くと、全員が何れかの階層主が僅かに千体に届かなかった。
「んー、取り敢えず、全ての階層主を千体倒してみようか……? 俺、今から行ってこようかな? 気になるし」
俺が本気で行く気になっていると、シュザークに腕を掴まれた。
「ハーシャ、本気なの?」
シュザークに、にこりと圧のある顔で笑い掛けられて肩を落とす。
「――俺、あと三十階層の主を十四体倒せば、全部千体なんですよ。それで、隠しダンジョンが開放されるかどうか、目茶苦茶気になるんです……」
がっかりして、シュザークをじとりと見る。
「まあ、ハーシャと潜っているから……私もそうなんだけどね」
シュザークが苦笑する。
「十四体だけっ! 十四体倒したら、すぐに帰るからっ!」
シュザークの腕を掴んで、ぶんぶん振ると溜息を吐かれる。
「もう……しょうがないなあ……」
シュザークが折れたっ!
「流石、兄上! 話が分かるっ!」
「――待ちなさい、貴方達。…………本当に、シュザークはハーシャに甘過ぎるわよっ!?」
二人で立ち上がると、ミーメナに睨まれた。
「うっ……!」
シュザークが肩を落とした。
「今日は、もう駄目よっ! 明日にしなさいっ!」
「「……はい」」
俺も肩を落として大人しく引き下がった。こうなったら――
「ハーシャ、今日は一緒に寝ようね? 抜け駆けされると困るから」
シュザークに読まれた。
なんで、こっそり抜け出そうとしたのがバレたんだろう……?
そして、次の日。早速、皆でダンジョンに向かった。
「兄上。俺達このダンジョンで、かなり魔物を倒しているじゃないですか?」
今は、ダンジョンの中を三十階層に向かって高速で移動している最中だ。お馴染みの身体強化という魔法を使って。
他の皆は、自分の倒した階層主で千体に足りない奴を倒しにバラけている。
今、残って居るのは、シュザークの他はユリセスのみ。
「そうだね」
移動しながらシュザークが頷く。
「このダンジョンの魔力値は大丈夫なんでしょうか? 下がり過ぎたりしないんですかね?」
「「確かに……」」
シュザークとユリセスが同時に答えた。
「言われてみれば、特に魔物が減ったようでもないな……」
ユリセスが首を傾げる。
「ギルマスからも、何も言われないしね?」
シュザークも首を傾げる。
「――後で、ギルマスに聞いてみましょうか。出禁になったら嫌だし」
三人で頷き合い、三十階層の目的地に到着した。
この世界のダンジョンは、階層主の部屋に入ったら入った人が出てくるまで中に入れない、何てことはない。
多分だけど、其々、入る部屋の空間が違うのだと思う。
扉を開けて閉めれば、直ぐに次の人が入れるし、先に入った人が中に居ることもない。クールダウンがないのだ。いつでも、どうぞお入り下さいって感じ。
三十階層の主は、五メートルくらいの図体の割りに、えらくすばしっこいピンクと紫のテディベアみたいな奴。一メートルくらいのたくさんのテディベアを召喚するので、長期戦になると面倒。キャンディを銃弾並の速度で打ち出して来る。他にも綿飴みたいなものを飛ばして来て、身体の動きを鈍くされたり、玩具の飛行機を口から吐き出して高速で飛ばして来たりする。飛行機に当たると爆破される。
だけど、テディベアの頭付近に転移して風魔法の刃を繰り出し、速攻で首を跳ねるだけだから直ぐに終わる。
はっきり言って何処の階層主もこれで片付くので、あっさり感が半端ない。風魔法が他の属性魔法に変わるだけだ。
そして、ドロップした宝箱からアイテムを獲れば終わり。
このダンジョンは、お菓子に関連したものしか出て来ない。
因みに、今出て来たのはお菓子箱。木で出来ていて金色の金属で縁取りされた、如何にも宝箱っていう見た目。
お菓子箱の中には、有り得ない程の色んな種類のお菓子が大量に入っている。縦三十センチ、横五十センチ、奥行き三十センチくらいのお菓子箱は、中身を全部取り出せば空間拡張された時間停止の収納箱になる。中身よりも、こちらの方が価値が有るかも。十畳部屋、四つ分くらいの容量が有るからね。
階層主の部屋を出ると次の階層だけれど、大体、出て来た場所の隣に階段がある。これもダンジョンによって違うけれど、登るか降りるかすれば階層主の部屋の前に戻れるので、何度でも階層主に挑めるのだ。
それを十四回繰り返し、千体目の主を倒してアイテムを手に入れた途端に部屋が光り、気付けばダンジョンの入口に戻されていた。
ファンシーな、お菓子の家の外観をしているこのダンジョン。本来なら、お菓子のレンガで出来たデカい竈からダンジョンの中に入ることになるのだけれど、今迄はなかった、魔女がよく使っていそうな大釜が出現していた。
大人十人が入れそうな大釜の中には、これ迄のファンシーな雰囲気をぶち壊す、どす黒い紫色の液体がグツグツと煮っだっている。
――アレ、何かの骨が浮いていないか……?
まさか……これが入口になるのか? 何か嫌だな……
そう思ってそれを眺めていると、シュザークが転移して来た。間もなくしてユリセスも。
「――やっぱり、隠しダンジョンがあったんだね」
シュザークは感慨深そうに言いながら、毒々しい大釜を覗き込む。
「――この中に入れ……って、ことなんだろうな……」
大釜の側には、六段の階段が置かれている。それを見ながらユリセスが嫌そうに顔を顰めた。
「ここで、他の皆を待ちますか?」
俺がシュザークに聞くと、頷き返して来た。
「そうだね。一応、ギルドカードで連絡を入れて置こうか」
その場で椅子を出して、お菓子を食べながら待っていると、そう時間も掛からずに全員が揃った。
皆、大釜を見て、何か嫌……と口々に言いながら顔を歪める。
「……皆、揃ったことだし、行ってみるかい……?」
行きたくなさそうにシュザークが言った。
全員が渋々、頷いた。
意を決して毒々しい大釜の中に飛び込むと、辺りを見る余裕もなく、大量の魔物が襲い掛かって来た。
皆は、咄嗟に魔法の武器を創り出し応戦する。俺も蒼白い炎の刀を出して応戦する。
魔法の武器は、切ったものだけではなく、剣圧? 衝撃波? に魔法を載せられるので広範囲で倒せる。やっぱり便利だ。
皆で仲間に当たらないように位置取りながら、蹂躙する。
余裕が出来て来たら魔法で一掃して、それでも直ぐに群がってくる。
「何かっ! ワナミリアのダンジョンみたいですねっ!」
蒼白い炎で広範囲を焼き尽くしながら、離れた場所に居るシュザークに叫ぶ。
「そうだねっ! 暫くの間、人が入っていなかったみたいだっ!」
叫び返しながら、シュザークが広範囲に雷を落とす。
暫く、入れ喰い状態でガンガン蹂躙した。二時間程経った頃合いで、一旦ダンジョンを出た。
皆で簡単なテーブルと椅子を出して、休憩を兼ねた昼食を摂ることにした。
突然、襲い掛かって来たから触れられなかったが、襲って来た魔物は狂犬みたいな黒い大型犬に、狂ったような三メートルくらいの黒い鴉みたいな奴、同じく怒り狂った三メートルくらいの牙が鋭い黒いゴリラみたいな奴、二メートルくらいの異常にブルブル震える黒いスライムだ。
「――なんか、皆、狂っているような魔物でしたね」
ソーンが作ってくれたでっかいチーズバーガーにかぶり付きながら言うと、全員がうんうん頷いた。
「眼を真っ赤に充血させて、涎を垂らしていて……怖かったです……」
メルがふるりと震える。
「……私も……気持ち悪かったわ……」
シリアも情けない顔で震えた。
――――いやいや、お前達……それをバッタバッタ薙ぎ払っていたからな?……とは、口には出さない。
「そうだね。一階層と云うよりは五十一階層とみた方が、しっくり来る強さだったね」
シュザークは、チーズバーガーをモリモリ食べながら言う。本当は、貴族がこんな食べ方をしたら駄目なんだけどね。
俺達は貴族として居なければならない場所とそうではない場所で、マナーを使い分けるのがすっかり上手くなった。
あ、周りには見えないように魔法で隠蔽してあるから、人に見られる心配はない。
「狂っている状態が、平常なんですかね?」
ユリセスは、トマトベースの野菜スープを飲みながらフライドポテトを摘んだ。どちらもソーンのお手製です。
「魔物だから、何とも言えないね」
新しいダンジョンの話をしながら食べる。デザートは、ダンジョンでドロップした、ミルクが濃厚なソフトクリーム。
最後に温かいレモンティーを飲みながら、まったりする。
まったりしながら、ドロップ品を観ることに。
そうそう、俺達は皆、薄い厚さのウエストポーチを付けている。買ってきたウエストポーチに魔法で収納空間を付与して、自分が倒した魔物のドロップ品が自動で入るように設定した。
元々は、魔力の少なかった頃のユリセスに作った物だったけど、皆が欲しがったから全員分作った。かなり使い勝手が良い。
今回、新しくドロップしたものを一つずつ出してテーブルに並べる。色は違うけど、どれも小さな十五センチ程の細めの小瓶だった。
それらを鑑定してみる。
「この薄い水色の瓶は、体力回復薬ですね。こっちの薄紫の瓶は、魔力回復薬。こっちの薄い緑が軽度の怪我の回復薬。それと、濃いめの青が鎮静剤ですね。後は、中程度の魔石と黒いスライムジェル……か」
「今度は薬ばっかりだね?」
シュザークは、繁々と瓶を眺めながら言った。
「じゃあ、階層主を倒せば……凄い薬が手に入るのか?」
ガルドが首を傾げた。
「可能性は高いね」
俺は、頷きながら黒いスライムジェルの玉を鑑定する。
「あ、このスライムジェル。美白効果があるってさ」
「「えっ!?」」
メルとシリアが食い付いた。
「ソーンの手の痣にも、効果があるのかな?」
ソーンの左手の甲には、生まれた時からあると云う黒っぽい痣がある。結構範囲が広くて最初は気にしていたらしいけれど、今はもう諦めて慣れてしまったらしい。
「どうでしょう? ちょっと塗ってみますね」
ソーンは、自分のウエストポーチからスライムジェルを一つ取り出して掌で割ると、黒いジェルを両手で擦るように塗り込んだ。
「あ、三十分はおかないと駄目らしいよ?」
「え゙っ!?」
言うのが遅いと言わんばかりに、ソーンにじとりと見られた。……すまん。
「まあ、良いじゃないか。三十分、休んでいれば良いんだし」
シュザークは、にこやかに笑いながらレモンティーを口にした。
ソーンだけが、手をヌルヌルとハエのように擦り合わせていたのが笑える。……笑わないけど。多分、擦らなくても良いと思うぞ?
そして、三十分後。手を真っ黒にしたソーンが浄化魔法でジェルを取り除いた。
おお~~!
皆の声が揃う。
痣は、なくなっていないけれど、かなり薄くなっていた。
「これ、毎日続ければ消えるんじゃないか?」
「えっ、本当ですか? 俺、寝る前に毎日塗りますっ!」
俺の言葉にソーンは、喜んで宣言した。
「――でも、これ……全身に塗らないと駄目じゃない?」
メルがソーンの袖口を捲る。塗った所と塗っていない所の差が、はっきりと分かった。
「っ! ――分かりました……今日から全身に塗ることにします!」
ソーンは、グッと拳を握って宣言した。
目指せ、美白青年!
ソーンは中性的な顔だから、色白でも似合うだろう……
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