俺の幸せの為に

夢線香

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本編

32. 冒険者講習




 隠しダンジョンからギルドに戻ると、ギルマスのマルムさんに呼び止められて、ギルマスの執務室に押し込められた。

「いや~~っ! 皆さんならきっと~、やってくれると信じてましたよ~~!」

 間延びした口調で興奮気味に満面の笑みを浮かべる、マルムさん。

「どういうこと?」

 俺が聞き返すとマルムは、俺達に椅子に座るように勧めてお茶を出す。

「隠しダンジョンですよ~! 条件が満たせなくて~なかなか辿り着ける人がいないんですよ~。ここ数年は辿り着ける人がいなくて~困ってたんです~」

 マルムは、ニコニコしながらお茶を飲んだ。

「条件を開示すれば良かったんじゃないのか?」

 ユリセスが不思議そうに首を傾げた。

「それは駄目です~。十、二十、三十、四十、五十階層の主を千体倒す~。この条件を先に知ってしまうと~、条件を満たしても~隠しダンジョンには行けなくなるんです~」

「え? そうなの?」

 驚いて思わず聞き返した。

「そうなんですよ~。だから皆さんも~他言してはダメですよ~? その魔法契約をして欲しいんです~。よろしいですか~?」

「それは構わないけれど……このダンジョンの魔力値はどうなっているんですか?」

 今度は、シュザークが不思議そうに尋ねる。

「このダンジョンは~ユニークダンジョンです~。魔力値がどれ程上がっても~魔物が溢れることはありません~。ダンジョンがなくなることもありません~。……多分~。その代わりに隠しダンジョンが~どんどん拡がってしまうんです~」

 マルムは頬を撫でながら困ったように言う。

「いや~~! ワナミリアのダンジョンを鎮めた貴方がたに~期待していたんですよ~。良かった~!」

 そうだったのか……でも、もしゲームか物語の知識がある奴等だったらどうなるんだろう? 隠しダンジョンに入る条件を先に知っているのだから、入れなくなるのか?

「それにしても、契約魔法を使ってまで秘匿するんですか?」

 シュザークが大袈裟じゃないか? と言いたそうだ。

「それがですね~、当初の頃は~条件は主を其々百体倒せばよかったんですよ~。ところが~それを広めた人がいまして~、噂が拡がって条件が変わってしまったんです~。結局誰も入れなくなってしまって困りました~。そんなことが何回かありまして~今は千体になってしまったんです~。今でさえ達成出来る人が居ないのに~、これ以上討伐数の条件が上がったら~、このダンジョンがどうなるのか分かりませんから~」

 マジか……俺達でさえ全力ではないけれど二年も掛かっているのに、普通に考えて未熟な学生だけでは無理だろ? 世の中の為にも一般開放した方が良いんじゃないのか?

「普通に冒険者を呼んだ方が良いんじゃないか?」

 俺が思っていたことをユリセスが言った。

「それが~、でなければ入れないんですよ~……一度~冒険者に依頼を出して学園生としてダンジョンに入って貰おうとしたんですが~入れなかったんです~。ダンジョンの判断基準が厳しいんですよね~」

「「「…………」」」

 一体、どうやって判断しているんだろうな? 不気味……

「ですが~! 隠しダンジョンに辿り着いた方は~卒業しても入れるんです~。皆さん~! 今後とも宜しくお願いします~~!」

「「「…………」」」


 ――あれ? 俺達の仕事増えてないっ!?




 それからは、隠しダンジョンに通う日々。ワナミリアのダンジョンは、カドリス、タキート、ヴァークリス、セララー、セリリーに任せることにした。俺達も偶には行くけどね。

 アスロークとホワトムには、主に荒れ地開発を頑張って貰っている。カイヒルは学園の文官科に通いながら、二人を手伝っている。偶に、この三人もダンジョンに行く。

 ミーメナは、家で執務とシェティーナの面倒を見ている。ちょっと、在宅と育児のストレスが溜まって来た……

 そろそろ、ダンジョンで思いっきり魔法を撃たせるべきかも……




 そんなこんなで、王太子殿下達の冒険者講習が明日に迫っていた。

 俺達は、隠しダンジョンでせっせっと魔物を一掃していた。

「なあ、ユリセス。ダンジョンに四日泊まるのに、何が必要?」

 結界魔法に魔物を閉じ込め、その中に青い炎を投げ込みながら側に居るユリセスに尋ねる。

「はっ!? 今頃、何言ってんだっ!?」

 俺の後ろで魔物を一度に何十体も斬り倒して居たユリセスが、驚いた顔で振り返った。

「え? 何か必要なのかい?」

 俺達より少し離れた場所で、結界魔法に魔物を閉じ込めて雷撃を落としていたシュザークが首を傾げた。

「ちょっ……!?」

 ユリセスは、愕然として俺とシュザークを見た。

「ユリセス、後ろ」

 俺が言うとユリセスは、振り向きざまに魔物を斬り捨てる。

「いや、……うん。俺が悪かった。そういや、何も教えてねぇな」

 ユリセスは、頭をガシガシ掻いた。

「えーと、先ず食料は……何時も持っているよな? 過剰な程に。水も……必要ないな……魔法で出せるし、色んな飲み物が無制限に出て来るポットも山程持っているしな。毛布も……ドロップした物を持っているよな? ――あれ? お二人には、何も必要ないな……あ、テントは必要……か?」

 ユリセスは、魔物を魔法剣で薙ぎ払いながら首を傾げた。

「「テント?」」

 俺とシュザークが同時に聞き返す。

「えー、買わなきゃ駄目? 使わないのに……」

 お金が勿体ない。

「そんなこと、言われてもなあ。まさか、あのとんでもない部屋で寝るつもりか? 殿下達の前で?」

 ユリセスに呆れられる。あー、流石に不味いかぁ……

「ハーシャ、ベッドのマットレスみたいなの持っていなかった? あれで良いんじゃない? 後は結界を張れば」

「ああっ、それ良いですね。それで行きましょう!」

 シュザークの言葉に頷いて、風魔法を放つ。

「後は、何か要るのかい?」

 シュザークがユリセスを伺うと、ユリセスは溜息を吐いた。

「薬くらいだけど……持ってるよな?」

 俺とシュザークが頷く。

「……気を付けて行って来いよ」

 ユリセスは、そう言うと魔物をザッパザッパ斬り倒していった。

「ソーンに、何か作ってもらいましょうか?」

「もう充分持っているのに?」

「それもそうですね。――このまま行けば良いみたいだし……一応、剣くらいは腰に下げていた方が良いですかね?」

「うーん……軽いのを持っておこうか」


 俺達、これでもSランク冒険者です。――いいのか?




 そして、王太子殿下達の冒険者講習の日がやって来た。

 冒険者ギルドで待ち合わせなのだが……なんか人が多い。四人から六人くらいのパーティーが多いかな。

 勇者候補が三人か……聖女候補も三人……ピンク女子が二人、ピンク男子が一人、イケメンに囲まれた平凡女子が一人、同じく平凡男子が三人……侍らせている者達は、聖騎士候補、賢者候補、剣聖候補、聖人候補……どんだけ候補者が居るんだよ。

 これでも、魅了事件でごっそり居なくなったんだぞ?

 本当に分からない世界だ……

 眠そうな、ぽっちゃりシュザークを見て安心する。姿を変えさせて本当に良かった。

「殿下達がいらしたら騒がしくなりそうだね」

「ええ、きっと殿下待ちですよ」

「来たら防御魔法を掛けようか」

 それが良い。シュザークに頷く。

「兄上、魔力封じのアイテムって持っていますか? 装着出来るやつ」

「何だい、急に? 魔力封じは持っていないよ。必要なのかい?」

「もしかすると、拘束するものが必要になるかも知れません。――ギルドで売ってるのかな……?」

「売ってますよ~」

 俺とシュザークが隅の方でこそこそ話していると、突然ギルマスのマルムが入って来た。

「おはようございます~。必要ならご用意致しますよ~」

「おはようございます、マルムさん。じゃあ、十個下さい」

「おはようございます。私にも十個、お願いします」

 丁度良いので買うことにした。

「はいはい~。こちらにどうぞ~」

 マルムに売り場の方へ誘導されて、黒い腕輪と鍵を渡された。騎士団で使われている物と同じ物なんだって。

 思った程、高くはなかったが安くもなかった。

 必要経費だ、仕方がない。

「お二人共~、気を付けて下さいね~。今日のダンジョンは魔力値が上がったり下がったりで~……おかしいんです~。こんなことは初めてで~、充分に気を付けて下さいね~?」

 ダンジョンがおかしい……?

「俺達が狩り過ぎた訳じゃないよね?」

「いえいえ~、それはないですよ~。それは無関係です~。兎に角~、ダンジョンは何が起こるか分かりませんので~……本当に気を付けて下さい~」

「分かりました。態々わざわざ、知らせてくれてありがとうございます」

 シュザークが礼を言って会釈する。俺も礼を言って手を振った。

 マルムの言葉を思案しながら、先ほど迄いた場所に戻って来る。

「――兄上。嫌な予感がします。あまり俺から離れないで下さいね?」

 シュザークを見てお願いする。シュザークは俺の腕をぽんぽんと叩くと苦笑した。

「分かった。離れないよ」




 周囲がざわめき出した。殿下達が来たに違いない。

 ギルドの入口から入って来た殿下二人と護衛騎士二人に透かさず結界を張る。これで、誰も彼等に触れられない。

 結界に直ぐに気が付いたのは、意外にもノルフェントだった。周囲を見渡し、俺達を見付けて僅かに微笑む。

 それに、二人で礼を執って返した。

 護衛騎士も気が付いて、こちらに目礼してくる。それに目礼で返す。

 殿下達は、頻りにパーティーに誘われているのを丸っと無視してこちらに近付いて来た。

 そうすると、どうなるか?

 俺とシュザークが睨まれる訳で……

 俺は、自分とシュザークにも結界を張った。

 殿下達が俺達の側に来る前に、殿下達と俺達の間にピンク女子が割り込んで来た。護衛の一人が前に出る。もう一人は後ろだ。

「ノルフェント殿下っ! どうか私とパーティーを組んで下さいっ!」

 おお、ノルフェント狙いか。薄い金髪にピンク色が強めに混じった腰までの髪を、一本の三つ編みにしている。可愛い系の少女だ。聖女候補らしく、胸の前で両手を祈るように組んでノルフェントを見詰める。

「…………」

「ノルフェント殿下の苦しみは、私が癒やしますっ! どうか、殿下のお力にならせて下さいっ……!」

 この人、取り巻きも居たよね? 視線を周囲に向けると、心配そうに彼女を見詰めるイケメン達。どうでもイイけど、この世界はイケメン、美女がやたらと多いよな。家もそうだし。 

「――私は、既にパーティーは決まっている。下がれ」

 ノルフェントが冷やかな声で言った。

 あれ? 意外と強く言えるんだな。どちらかと言えば押しに弱そうなイメージだったけど……

「――そんなっ……ノルフェント殿下……」

 それでも、なかなか引かないピンク女子。何でここまで喰い下がれるのだろう? メンタル強過ぎない?

 でもこのピンク女子は、ヤバいスキルとか持っていないので、危険ではなさそう。レベルも十五だ。

 殿下達は、ピンク女子を避けて俺達の側に来た。護衛騎士が遮音魔法と目眩ましの魔法を張った。

 俺とシュザークが胸に手を宛て、礼を執る。

「――講習の間は、礼は取らなくていい。無礼を許す。普通に接しろ。身の危険に繋がる」

 ランドラークが不機嫌そうに言った。

「「はっ」」

 身の危険に繋がると言われれば、従うしかない。

「おはようございます。シュザーク殿、ハーシャ殿。結界魔法を張って頂き、ありがとうございます」

「「おはようございます」」

 微笑むノルフェントに軽く会釈する。

「護衛騎士を紹介する」

 ランドラークが護衛騎士に眼を向けると騎士は頷いて俺達を見据えた。

 あ、この人……副団長だ。俺達が茶会で、ランドラークが魅了を掛けられていると報告した人。

 暗めの金髪に赤茶の眼。顔の両サイドの髪は短くして後ろ髪だけ細く伸ばし、一つに束ねている。俺もあんな風にしたかったな。如何にも武人って顔だ。三十歳は越えていそう。

「私は近衛騎士団副団長のジックバル・ヤハートル。ジックバルで構わない。何時ぞやは助かった。礼を言う」

 後ろに居た騎士が前に出る。

 栗色の髪と濃い碧眼。ジックバルよりは細身だけど充分逞しい。こちらはフレンドリーな感じ。騎士だけあって容姿は整っているが何処となく無邪気さが残る。二十歳半ばぐらいかな?

「お初にお目にかかります。私は近衛騎士団のフーガルン・オーケスター。フーガルンとお呼び下さい」

「分かりました。私はシュザーク・キディリガン。隣は弟のハニエル・アシャレント・キディリガン。私のことはシュザークと。弟はハーシャとお呼び下さい」

「「承知致しました」」

 四人で会釈して終わる。 

 因みに、ランドラークは白い騎士服。金色の布で、襟、前合わせ、袖口、裾を縁取ってある。左胸と背中に王家の紋章が金糸と銀糸で刺繍されている。王家の紋章は太陽と天秤を表したもの。膝下迄の焦げ茶の革の編み上げブーツと焦げ茶の革手袋。腰にロングソードを携えている。

 近衛騎士団の二人はランドラークとほぼ同じ騎士服で、縁取りが金ではなく赤。王家の紋章ではなく剣と盾、聖典を表した近衛の団証が銀糸で刺繍されている。ブーツと手袋は殿下と同じ。剣も同じ。

 ノルフェントは生成りのシャツに黒革の膝上迄の裾の長いベスト。前合わせを革紐で編み込むようにして締めている。茶色の革ズボンに黒革の膝下迄の編み上げブーツ。茶色の革手袋。フードの付いた足首迄の焦げ茶色のローブを羽織っている。

 俺達は黒い騎士服。騎士服と言っても余計なものが付いていないシンプルなもの。左胸と背中にキディリガンの家紋が刺繍されている。風の女精霊を金糸で水の女精霊を銀糸で。黒革ズボンに焦げ茶の膝下迄の編み上げブーツと、同じく革手袋。この服はキディリガン一家の皆とお揃い。

「教官二人は、何処で落ち合うのですか?」

 シュザークが尋ねる。

「教官達はダンジョンの入口で待っている。そこで服装や装備のチェックが入るらしい」

 ランドラークが答えてくれた。

「先ずはパーティー登録からだな。……受け付けで受理してもらうんだったか?」

 ノルフェントがランドラークに頷く。

「では、パーティー登録をいたしましょう」

 俺達はギルドカードを取り出して登録し合った。キディリガン一家から外れる訳ではなく、ランドラークのパーティーに出向するようだ。

「へえ、近衛騎士でもギルドカードを持ってるんだ」

「はは、確かに近衛騎士団では必要ありませんが、近衛騎士になる過程でダンジョンでの訓練もありますからね。皆、持っていますよ」

 フーガルンが応えてくれた。やっぱりフレンドリーだな。



 遮音と目眩ましの魔法を解くと周囲にはまだ人が群がっていた。

 殿下二人が不快げに眉を潜める。

 パーティーを組んで下さい。殿下が居ないと困るんです。私が救ってあげるから。殿下が居ないと入れない場所が。等など、随分と勝手なことを言っている。

 どうやらダンジョンに、この二人のどちらかと行くことで、何かしらのイベントがあるらしい。それがどんなイベントなのか……俺には想像も付かないが……

 受付に向かう殿下達の最後尾で声を拾う。身体強化で聴覚を上げる。


『一緒にダンジョンに行かなくちゃ、好感度が上がらないじゃない』

 恋愛ものかな?


『殿下が一緒じゃないと手に入らない武器が……』

 武器? お菓子しか出ませんが?


『殿下と一緒じゃないと……隠しダンジョンに行けないのに……』

 条件が違うよ? それとも近道か何か?


『殿下と仲良くならなきゃ、あいつが仲間に入らない』

 仲間集め? RPG?


『ノルフェント様を私が救わなければ……』

 何? 闇堕ちでも防いでくれるの?


『ノルフェント、早く抱きてぇ。あの淫乱、皆で輪姦そうぜ。すげぇエロいから楽しみ』

 ……え? まさか男同士のエロゲー……?


 やっぱり色んなものがごちゃ混ぜだな……

 でもこいつら、疑問に思わないのだろうか?

 まさか、これだけのゲームや物語か何かで、同じ学園が舞台な訳ないよな?

 自分の他にも主人公枠がゴロゴロいるのは、分かっているんだよな?

 それなのに、自分が思うストーリーを貫こうとしている。殿下達は一人しか居ないのに。


 一番危ないのはノルフェントだな。


 まあ、どう見てもR18禁枠だもんな……


 エロゲーのダンジョンで起こるイベントと言えば考えられるのは――触手系魔物に媚薬でトロトロにされて、犯されて、さっきの連中の話しを信じるなら、その後、連中に犯されて、輪姦まわされて……


 現実として考えるなら……酷すぎるな……


 もしかして、ノルフェントの闇落ちイベントなのか……?


 ああ……これは、一刻も早くノルフェントのスキルを何とかしないと。

 シュザークやヴァークリスのように(凍結)出来ないかな。

 俺は、じーっとノルフェントを見詰めた。鑑定しながらスキルを凍結、封印、を念じて……只管ひたすら、見詰め続けた。ノルフェントが俺の視線に気が付いて首を傾げるが、無視してじっと見詰める。

 その内にノルフェントの頬がちょっとずつ紅みを帯びて来て、恥ずかしそうに俯いた。

 え? 何その反応……? ぽっちゃりジト目の俺に見詰められて恥じらうの? ノルフェント趣味悪くない?

 それともイケメン達に執こくされたせいで、イケメンが嫌になったとか?

 なんてね。こんなにあからさまに見詰められては、戸惑うのも無理もない。

 恥じらっているノルフェントを他所に凍結封印を念じる。ガッチガッチに固まっちまえ!

 そう思った瞬間、身体からぶわりと魔力がごっそり持って行かれた。ふらりと蹌踉よろめくと、魔力の動きに気付いたシュザークが慌てて身体を支えてくれた。


「――ハーシャっ……! 何をしているの……!?」


 小声で怒るシュザークに顔を寄せる。


「――淫靡妖艶…………封印出来ました」


「っ!」


 シュザークは、驚愕して俺をがん見する。それからノルフェントに眼を向けた。

 ノルフェントは、何故か潤んだ目で俺を見て来る。

「――本当だ……」

 シュザークがポツリと零した。

 体勢を持ち直してシュザークから離れる。ウエストポーチから魔力回復の小瓶を取り出して飲んだ。ああ……マシになった。

「魔力、ごっそり持って行かれました」

「はあ……何でこんな所でやるんだい!?」

 シュザークに睨まれてデコピンを食らった。痛い……

「あ、あのっ……! 今……何を……?」

 ノルフェントが近付いて来て、俺を見詰める。


 え……? 本当に、何でそんなエロい顔してんのっ……!?


 目元を紅色に染めて潤んだ眼をゆらゆらと揺らしながら見上げてくる……僅かに開いた紅い唇からは……熱い……艶めいた息を吐き出すノルフェント。


 あれ……? 淫靡妖艶のスキルは封じたよな……?


 思わず確認してみると、ちゃんと封印されている……

 素でコレなのか……

 俺は、急いでノルフェントのフードを深く被せながら耳元近くで、後で……と小さく囁いた。ノルフェントの身体がぴくりと跳ねた。驚かせてしまったかと反省し、無意識に頭を一撫でして離れた。

「――ハーシャ……」

 シュザークにまたデコピンを食らった。
 
 ……痛いよ…… 額を押さえて、シュザークをジト目を更にジト目にして睨んだら、眠そうな眼で睥睨された。

 あ、ノルフェントの頭を撫でたからか……いくら無礼が許されていても……あれは拙いな……? 他国の王子だ。

 ノルフェントの頭が俺の鳩尾みぞおち辺りだから……つい、撫でてしまった……ノルフェントを見ると頭を押さえて俯いていた。 


「あ~……申し訳ありません……つい……」


「……いえ……ダイジョウブ…………デス……」


 ノルフェントはフードを両手で押さえながら、くるりと背中を向けた。


「……?」


「はあ……」


 シュザークは深い溜息を吐いて、俺の頭をぼんぼんと強めに叩いた。











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