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本編
34. 卑猥な…。
ノルフェントのスキル、“不幸招来”を封じてから一夜が過ぎた。
いや~……あの後は、ノルフェントを宥めるのに苦労した……。
お前、何やってんだ? という皆からの冷めた視線に晒されながら、只管、謝罪して頭や背中を撫でて宥める。
疲れもあったのか…そのまま寝てしまったので殿下達のテントに運んで寝かせた。
俺的には、かなり理不尽だったが……。
シュザークと即席ベッドに入って横になると彼に言われた。
「ハーシャ……皆の前で、ノルフェント殿下を極めさせるなんて……鬼畜だね?」
「っ!」
真顔で言われて絶句する。
そういう事かっ…!
非難された理由が、漸く、分かった。
うん…そりゃあ、怒るな…。複数人の前でイかされるなんて…俺でも嫌だ。二人でやるべきだったんだ。
「まさか……極めてしまうなんて…知らなかったんです…」
しなしなと凹んでしまった俺の頭を、シュザークがぽんぽんする。
「ノルフェント殿下は、待ってって言っていただろう?」
「…はい……すみませんでした…」
確かに言っていた。
でも……さっさとスキルを封印したくて、無視したのは俺だ。
──俺の馬鹿!
「まあ…知らなかったんだから仕方ないね。…次からは気を付けるんだよ?」
「はい……」
もう、次は無いけど…気を付けます。
凹んだ俺は、シュザークの腹に抱き着いて眠った。
朝になって起きると、ノルフェント殿下に目茶苦茶避けられた…。当然の帰着だとも言える。
其れでも、朝食を摂る時は俺の隣に座ってくれたので、せっせとソーンの作ってくれた特製オムレツや、ダンジョンの種から育てたフルーツサラダを貢ぎ、ミルクティーまで付けた。
「──どれも、とても美味しいですね…!」
ノルフェントは、“美味しい”を隠し切れず、漸く話し掛けてくれた。
眼が合うと、顔を真っ赤にして俯いた。
「あ、…あの…本当に…昨日は、すみませんでした…」
改めて謝罪をするとノルフェントは僅かに頷いた。
「──もう……いいです…。許します…」
俯いたまま、其れでも許してくれた。ソーンの料理に感謝だ。
ノルフェントの魔力封じを外す為に、一度ダンジョンの外に出る事にした。
万が一を考えて、ダンジョン内で何かが起こっても対処が難しいからだ。階層主の部屋には、入口に戻る転移陣があるので其れを使って外に出る。
念の為、ランドラーク殿下には離れてもらい、魔力封じの腕輪を外す。三つも着けていた。
「──これで…私も魔法を使えるのですね…」
ノルフェントは、感慨深く枷の外れた腕を眺めた。
鑑定しても問題なかったので、ランドラーク達と合流してダンジョンの入口から十一階層に転移した。
生徒達が多く居たので、なるべく早く階層を進める事にする。
一晩休んで元気になった殿下達は、昨日は苦戦した魔物にも苦戦する事はなく、順調に階層を進める事が出来た。
ノルフェントが魔法を使えるようになった事が大きいと思う。
そして、昼頃には二十階層の主の部屋の前に辿り着いたので、ここで昼食を取る事になった。
俺の隣にはノルフェント、シュザークの隣にはランドラーク。いつの間にか定位置になっている。
ノルフェントが自分で用意した食料は、簡単なサンドイッチばかり。何だか心配になって、ワナミリアで獲った、カツ丼を出してスプーンを渡した。
「─これは…?」
初めて見るカツ丼を眺めながら、ノルフェントが不思議そうに聞いてくる。
「ワナミリアのダンジョンで穫れるカツ丼です。美味しいですよ?」
にこりと笑って応えると、ノルフェントは、また顔を赤くした。まだ、昨日の事が恥ずかしいんだろうな…。本当に…すまん。同じ男として気持ちは分かる。
このカツ丼には、ちゃんと割り箸が付いている。俺は使えるけれど、此方の世界の人には難しいのでスプーンを渡した。キディリガン家の皆もスプーンで食べている。
「これは、どうやって頂くのですか?」
「これは、器を手に持って食べるんです。─こうして…上の具材と下の白い米を…一緒に掬って食べるんですよ」
丼ぶりを持って見せて、一口をスプーンで掬って食べて見せる。キディリガン家と人がいない場所では箸を使うが、今は周りに合わせてスプーンを使う。
ノルフェントは頷いて、同じ様にスプーンで掬って食べる。
「美味しいですねっ…!」
ノルフェントは、俺にキラキラした笑顔を投げ付けて、パクパクと食べ始めた。
皆の分も出してあげたので、皆も喜んでバクバク食べていた。
「こんな…美味しいものを…毎日食べているのかぁ…」
フーガルンが遠い目で、ボソリと呟いた。
「おい、冒険者になるとか言い出すなよ?」
ジックバルが釘を刺している。
「そんなことはしませんっ…! 王家に忠誠を誓っていますのでっ!」
フーガルンは、慌ててブンブンと首を横に振っていた。
其れを皆で笑って眺める。
シュザークはランドラークの相手をしながら、デザートにダンジョンでドロップしたゼリーを皆に出していた。
ランドラークはとてもご機嫌で、何かとシュザークに話し掛けていた。
そんな感じで和気藹々と昼食を済ませた。
二十階層の主を、殿下二人をメインにして教官達がサポートをしながら、危険な場面では護衛の二人が援護をして倒す。
俺とシュザークは、其れを眺めていた。
主を倒した後は、その場で小休憩を取り、三十階層を目指すことに。
辿り着けない時は、昨日と同じく俺達が魔物を倒して三十階層で泊まる予定だ。
段々と強くなる魔物だが、殿下達もレベルを上げているので、対処出来ている。
二十五階層に着いた時、シュザークが皆を呼び止めた。
「異常に魔物が密集している地点があります。他の冒険者も、多数…集まって居るようですが…」
ランドラークは、難しい顔で考え込んだ。
「ふむ…。冒険者としてなら危険は避けるべき、何だろうな…。だが…取り敢えず、もう少し近付いてみよう」
俺達は、異変が起きている場所に行く事にした。
二十五階層は、淫獣の魔物が出る階層……。
嫌な予感しかしない……。
そして、辿り着いた先は……淫獄だった。
危険地帯には近付かず、安全な場所から様子を伺う。
「……何だ?…アレは……?」
目の前の光景に唖然としたランドラークが呟いた。
今は、俺とシュザーク、ジックバルとフーガルンが前に出ている。
暫し、全員がその光景を呆然としながら見ていた。
この階層で出る魔物は、淫乱スライム、淫樹、リップフラワー、淫蕾。
どれも、あからさまなネーミングだよな。どんな攻撃をしてくるのか、字面だけで想像がつきそうだよな?
淫乱スライムはピンク色の透ける体を持ち、服や防具、武器を溶かす。即効性は無いが、時間を掛けて跡形も無く溶かしてしまう。なのに人は溶けない。武器で切ると武器が溶かされて駄目になってしまう。淫乱って謂うのは、服を溶かす時、体に張り付いてありとあらゆる場所を、あの動く粘液に探られるのだ。ゆっくりじっくり執拗に。其れは、性感を開発されるのと同じ事。長く張り付かれれば、其れだけ…淫乱にされてしまう。
淫樹。樹の姿をした透明な赤い触手。コイツも服や防具を溶解する樹液を吐き出す。強烈に甘い匂いの樹液には、媚薬効果付き。多数の触手で身体を拘束し、体内に種を植え付ける。種が成長すると…内側から食い破られる。
リップフラワー。淫樹の幼体。三十センチ程の背丈。花の茎や葉の様に見える透ける緑色の体、頭はでっかい唇で舌を持つ。プルリとした赤いゼリーの様な唇と舌で素肌を舐める。ひと舐めされる度に、魔力を奪われていく。すばしっこい。
淫蕾。赤と紫の毒々しい五十センチ程の花の蕾。本当に蕾だけ。コイツ等は地中に潜んでいて、主に男性の股間を狙って喰い付く。即効性の溶解液で喰い付いた場所の服や防具を溶かし、即効性の媚薬を出して、蕾で男根にしゃぶり付き、精液ごと魔力を搾り取る。
こんな感じで、本当に卑猥な階層なんだよ。
そんな場所で起こる異常事態なんて…碌なもんじゃ無いだろ? 実際に…目の前の光景は酷い有り様だ。
一体、何体の淫樹が居るのか…。最早、馬鹿でかい磯巾着のようにも見える。
それに捕まっているのは…男女合わせて、十人以上は居る。服を溶かされ、ほぼ全裸。肌に透明な赤い触手が絡まって拘束している。
元の世界では、赤い紐で縛る性嗜好があったな…。
如何にも、エロゲーって感じだ……。
媚薬で恍惚となった被害者が、ありとあらゆる穴を犯され艶声を発している。
淫樹の周りには、淫乱スライムとリップフラワー。それに囚われている男女。
淫蕾に抵抗も出来ず、只管…搾り取られている男達。
一体、何人被害者が居るんだ……?
異様なのは、安全な場所から其れを眺める者達。下卑た笑みを浮かべ、助けもせず眺めている、男十人。
鑑定しても、これと謂って目に付く魔法やスキルも無い。何とか候補でもない。レベルは六十から八十ある。生徒の中では、かなり高い方だろうか。
「─あの、周りにいる者達は…何なのだ…? 何をしている…?」
ランドラークが嫌悪を隠しもしないで、見物している者達を睨み付けている。
「─拘束しますか?」
ジックバルとフーガルンがランドラークの傍に跪いた。命令待ちだ。
そこに、ジャックが声を掛ける。
「…遠耳の魔法を使って聴こえたのですが…。どうやらあの者達は…今、囚われている者達が淫らになるのを待ってから、助けるつもりのようです。…仕上がるのが楽しみだと」
そうか、聴覚を上げる魔法で話しを聞けば良かったのか…あまり使わないから咄嗟に思い付かなかった。
「っ…! 何と…下劣なっ…!! あの者達を捕らえよ! 被害者を救えっ…!!」
ランドラークは怒りを顕にして、ジックバルと同じく跪いているフーガルンに命じた。
「「はっ!!」」
二人は、頭を垂れて使命を受けた。
「シュザーク殿、ハーシャ殿。手を貸してくれるか?」
ジックバルが俺達に聞いてきた。
「「勿論です」」
二人で頷く。シュザークは、にこりと笑って見物している者達に視線を向けて…雷撃を放った。
男達は、バタバタとその場に倒れた。
「拘束は、お願いしますね」
ジックバルとフーガルンが口をパカンと開けて、雷が落ちた先を見ている。
「後は、魔物ですね」
俺は、いつもやるように魔物だけを結界に閉じ込めて上空に押し上げると、結界の中に蒼白い炎を放った。
ジュッワワァッ!! と音を立てて瞬時に消し炭になった。ドロップしたアイテムを回収して、ジックバルとフーガルンを見る。
「じゃあ、俺達は救助に行ってきます」
呆けている皆を尻目に、俺とシュザークは被害者の元へと転移した。
「「「「「「………………」」」」」」
被害者の元へ来た俺達は…酷い有り様に閉口する。
念の為、隠蔽している者がいないか索敵するが…引っ掛かる者は居なかった。
「……媚薬の効果を抜けるかな?」
「駄目だよ、ハーシャ」
試そうと思っていたら、シュザークに止められた。
「何故ですか?」
首を傾げる俺に、シュザークは困った顔をした。
「今は媚薬の効果で正気じゃないけれど…此処で一気に正気に戻したら、心が壊れてしまうよ?」
言われて、はっとする。そうだ、ただ状態を元に戻せば良いと謂う訳じゃない。回復して良かったね。で、終わるはずがない。彼等は、ちゃんと自我を持って生きているんだから…。
いつの間にか…俺も…主人公、魔王、勇者、聖女、等の候補者という言葉に惑わされて、ゲームや物語を読む感覚になっていたんだな…。反省だ…。
「すみません。……考えが至りませんでした…」
シュザークは、しゅんとする俺の傍に来て頭をぽんぽんした。
「大丈夫だよ。これから気付いて行けば良い事だよ」
「……はい、兄上」
素直に頷くとシュザークは微笑んだ。
「さて、先ずは浄化だね。あと身体を隠すものが要るね?」
「ダンジョンからドロップした、簡易毛布があります」
気を取り直して、毛布を出す。
「……体内に種を植え付けられた者は…どうしようか…?」
シュザークが難しそうに顔を歪めた。
「確か、それ用の薬がある筈ですよね?」
シュザークは、被害者達に纏めて浄化魔法を掛ける。
「薬の勉強も…しないと駄目だね…」
そう言うシュザークに頷きながら、被害者を毛布で包んで一箇所に運ぶ。媚薬で熱くなった身体をどうにかしたくて擦り寄ってくるが、眠りの魔法を掛けて眠らせた。
シュザークと二人で作業していると、殿下達もやって来て手伝ってくれた。
「参ったね…。生徒だけではなく、教官も数人居るよ」
苦い顔でジャックが呟いた。
少し離れた場所で、ダレンが眠っている女性の頭を撫でている。
「…あれ、ダレンの嫁だよ…。一緒に教官をやっていたんだ…。女生徒のパーティーに付いていたんだが…まさか、こんな事になるなんてな…」
ジャックが、遣る瀬無さそうに溜め息を吐いた。
「─何にせよ、早く被害者を外に出して薬を飲ませないと、手遅れになる」
「薬って、なんの薬?」
立ち上がり掛けたジャックに尋ねた。
「除草剤」
「「除草剤?」」
俺とシュザークが同時に聴き返した。
「除草剤って、草木を枯らすやつだよね? …人が飲んでも良いの?」
俺が思わず聴き返すと、ジャックが首を傾げた。
「? 草と木しか枯らさないんだから、飲んで良いに決まっているだろう?」
当然だろ? とジャックに言われた。
……おお…凄いカルチャーショックを受けた…。
元の世界の除草剤とは、全く別物らしい。
元の世界の除草剤なんか飲んだら、かなりヤバいことになるが…此方の世界の除草剤は、草木にだけしか効果がないらしい。
凄いな。成分からして全く違うもの何だろうな。流石、魔法の世界…。
「除草剤なら、持っているね…」
シュザークがゴロゴロとオレンジ色の液体が入った小瓶を取り出す。隠しダンジョンから出たものだ。
「何でも持ってるんだな…。だが助かる。売ってくれるか?」
「援助物資として寄贈します」
「いいのか? 有り難いが…。本部と後で話すよ。早速、全員に飲ませよう!」
ジャックは、数本、薬の小瓶を掴むと真っ先にダレンの元に向かった。
「確かに、薬の勉強は必要ですね…」
魔法がチート過ぎて魔法で何とか出来るから、薬とか重要視していなかったな。
俺も、チートで調子に乗ってたんだな…最悪だ…反省しなければ…。
「ジャック! 媚薬に鎮静剤って効くの?」
離れているジャックに声を掛ける。
「あんまり効果は無いな。出し切るか、身体が満足するまで極めるか、だな。じゃないと何時迄も疼いて厄介だぞ?」
結局は、よくあるエロゲーの設定だって事だよな。
「じゃあ、眠らせても治まらないの?」
「さあ? 俺は出し切るもんだと思っていたから、試したことは無いな。……そもそも、よく眠りの魔法が効いたな…。身体中、極度の興奮状態だから…普通は効かねぇんだけど……」
ジャックは、首を傾げた。
「そっか…。ありがとう」
俺は、礼を言ってシュザークの元へ行く。
「ジックバル殿と合流しよう」
俺とシュザークは、見物していた者達を拘束しているジックバルの元に移動した。
シュザークの魔法で麻痺状態の男達は、魔力封じの腕輪を嵌められて両腕を後ろで縛られている。ゔ~ゔ~唸って一箇所に纏められていた。
「これから、どうするんですか?」
シュザークがジックバルに尋ねる。
「コイツ等と被害者をダンジョンの外に運び出す」
「分かりました」
シュザークが頷いた。
俺達は滅多に使わないが、ギルドが売り出している緊急脱出用の転移陣がある。これを使うとダンジョンの入口に作った専用の場所に、転移する事が出来る。
お値段も中々なので、そんなに枚数は持てないが、冒険者は緊急用に一枚は所持するのが常識だ。
そんな話しをしていると、殿下達とジャックとダレンが合流した。
輪になって今後の事を話していた時、ノルフェントとランドラークの足に木の根のようなものが巻き付こうとした。が、結界に弾かれた。俺は咄嗟にノルフェントを引き寄せ、シュザークはランドラークを引き寄せた。
「「っ!?」」
『チッ…!』
誰かの舌打ちの音がして、魔法剣で舌打ちが聴こえた辺りを薙ぎ払う。手応えは無かった。
索敵魔法を張り巡らしたが、捉えることは出来なかった…。
「─兄上。索敵出来ましたか…?」
「──いや、突然現れて突然消えたよ…。転移で現れて転移したのか…?」
「殿下達を狙って来ましたね…」
「ああ、お前の結界があって良かったよ」
二人で周囲を警戒する。
「急いで…ダンジョンを出ましょう」
「そうだね…そうしよう」
「あ…あの……」
俺の鳩尾辺りから戸惑った声が上がる。
そう言えば、ノルフェントを腕に抱き込んだままだった。慌てて解放する。
「申し訳ありませんっ! つい、咄嗟に……!」
隣では、シュザークも同じ事を言ってランドラークを解放している。
「い、いえ…! その…護ってくれて、ありがとうございます…」
「─問題ない…。助かった…」
ノルフェントとランドラークは、礼を言って俯いた。
王族の方に、うっかり触っちゃたから…怒られるかと思ったけど、護衛の為だから大丈夫みたいだ。気を付けないとな…。
でも、何でかノルフェントには手が出ちゃうんだよなぁ…。こう、小さな子供の成長を見守る親みたいな心境になるっていうか…。不思議だ…。
そして、ダンジョンの入口に被害者と、見物していた者達を移動させた。
「こいつ等って、どういう扱いになるの?」
側にいたジャックに問い掛ける。
「う~ん…そうだなぁ…。双方の事情を聴かないと何とも言えないな…」
ジャックは、難しい顔で腕を組んだ。
「っ…! 俺達は…見ていた…だけだ…、悪いこと…してな…いっ……!」
シュザークの電撃で、まだシビシビと麻痺している男の一人が言った。って謂うか男子だな。皆、十四、五歳位の少年だ。
「そ、そうだ…! 冒険者…なんだか…ら…自分の…身をまもって…な…にが…悪い…っ!」
「…き…けんが…あるなら…助けに…はい…ら…なくてもっ…文句を…言われる…筋合いはっ…な…い!」
少年達は、痺れて呂律が回らないながらも、口々に訴える。
──そうなんだよね。
少年達が言うことも間違ってはいない。冒険者は、人を救ける為にいる訳ではない。救けるか救けないかは冒険者個人の判断だ。
危ない目に遭っている人がいたからと謂って、自分の敵わない敵に立ち向かう者はいない。被害が増えるだけで無駄死にだ。
「じゃあ、何で、さっさと逃げないで、やっらしい~顔してニヤニヤ見てたんだ?」
ジャックが睥睨しながら問い掛けた。
「……べ、別に…見てた…って、いい…だろ……!?」
「俺さぁー、遠耳の魔法が使えるんだよねー。お前達は、暫くしたら魔物を倒して、囚われていた被害者と楽しむつもりだったんだろう?」
「っ…!!」
ジャックは、怒りを抑えた低い声で問い詰める。
少年達は、ぐっと言葉に詰まった。
「び…媚薬に…侵されて…るんだか…ら…し…鎮めるの…を…手伝うだ…け…だ…! 人…助けだろっ…!」
そうだ、そうだと他の少年も囃し立てる。
「救けるんだったらさー、何で、さっさと救けないかなぁー? 鼻の下伸ばして、眺めてる必要ある?」
ジャックが盛大に溜め息を吐いて見せると、少年達は肩を竦めた。
「……そういう…年…頃…何だか…ら…、みた…って…仕方…ないじゃ…ん…」
「…ど、…どうせ…モブ…なんだ…から…、見るくら…い…いいで…しょっ……!」
少年達は、唇を尖らせてぶつぶつと呟いた。
─モブ、って言ったか…? 元の世界のモブの事か…?
脇役の事をそう言うんだったか。でも、モブが主人公の話しも多かった気がするな……。
という事は、こいつ等って俺と同じ元の世界の記憶がある…?
思春期の年頃の男子で、エロい事に興味のない奴なんて、そうそういないよな…。
元の世界の記憶を持っているなら…生でAVが見られて、本番もヤリ放題の美味しいイベントって事か…?
完全にゲーム感覚だな…。
少年達の行動は、非難はされても罪に問えるものではないように思う。かなり、靄々するが…。
──其れは、俺の感情でしかない…な…。
ジャックはまた、でっかい、でっかい、溜め息を吐いて俺達に向き合って、緩く首を横に振った。
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