俺の幸せの為に

夢線香

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本編

54. ざまあ…されてたんだね…。




 チート過ぎるチートに驚きながらも、腕の中で泣きじゃくるノルフェントをきつく抱き締めた。

 ──間に合ったのか……? 間に合ったよな……?

 転移した瞬間、ノルフェントの上に覆い被さっていた白髪の男を、咄嗟に肩を掴んでベッドの上から払い落とした。

 ざっとノルフェントの身体に視線を奔らせる。

 胸の頂きが真っ赤になって腫れている…。そして─。


 何だっ…!? その下着っ…!? 紐パンじゃねぇかっ…!?


 此れを履かせた奴の趣味かっ…!?

 ま、まあ…今はそんな事はどうでもいい。紐パンだろうが脱がされていないなら上出来だ。

 首輪に手枷と足枷、其れに繋がれた鎖……。


 こんなもん着けやがってっ……!!


 怒り任せに引き千切ったら壊れた。手足の枷も同様に素手で壊す。

 俺の握力なんて測定不能だろうしな。

 ノルフェントが俺の胸に顔を埋めて、縋り付くように抱き着いてきた。其れを抱き留めてやると、安心した様に気を失った。

 浄化魔法を掛けて、収納空間から毛布を取り出してノルフェントを包んで抱き抱えた。

 腕の中にあるノルフェントの存在に、ほっとする。

 漸く、辺りを見渡す余裕が出来た。

 床に転がっている男が二人。

 鑑定すると、俺が払い落とした白髪の紫メッシュの男がサドラス・オクトバリのようだ。強く払ったつもりはなかったが、打ちどころが悪かったのか気絶している。全裸で人形みたいに転がっているのは、サドラスに奴隷に貶された侯爵子息……。身体が卑猥なもので汚れている……。

 ノルフェントの前で侯爵子息を抱いてたのか…? 

 え…? どんなプレイだよ…。観られると興奮するとか、そういうやつか…?

 ノルフェントを抱き抱えながら、侯爵子息の傍に近付いて浄化魔法を掛けた。


 ──本当に、胸クソ悪いなっ…!


 性交を禁じたけれど……変更だ。後ろだけは使える様にしてやろう。

 ぐったりと横たわる侯爵子息の側に座る。ノルフェントは、俺の膝の上に横抱きに乗せた。

 彼は、側に来た俺を生気の無い、虚ろな目でぼんやりと見ていた。怯えるでもなく、不安を滲ませるでもなく、全てを諦めている目だ。

 …抵抗する事さえ赦されずに、誰が来ても大人しく抱かれる様に命令されていたのか…? 本当に、酷いことをする…。 

 侯爵子息の下腹にある奴隷紋に指先で触れた。

 ピクリと彼の身体が僅かに震える。

「隷属を拒絶。解除。排除。破壊。掛けた術者の性交を禁ずる。但し、後ろの穴は除外する」

 侯爵子息の奴隷紋が赤黒く光って、直ぐ側で気を失っているサドラスの剥き出しの股間に飛んで行った。

 サドラスの息子の根本に、三つの黒い輪が嵌っている。

 うわっ…。勃起したら…すげぇ痛そう…。

 ぼんやりと俺を見ている侯爵子息の手を取り、小指同士を絡める。

「死なない事……此れは、命令じゃない。─俺との約束だ。……死ぬな。寿命を全うしろ。約束だ……」

 侯爵子息の小指の付け根に、赤い細い線が指輪のように浮き出た。

 ぼんやりとしたままの侯爵子息の目から涙が流れ落ちた。

 表情一つ変えずに…瞬き一つしないまま流す涙に…胸が痛む。─其れが、解放された喜びからなのか…生きて行くことへの絶望からなのか…俺には分からない…。

 ついでに、侯爵子息の中にあるサドラスの魔力もすべて取り出して、薬の空き瓶に移した。

 無表情だった彼の顔が僅かに安堵を浮かべ、そのまま意識を失った。その身体に毛布を掛ける。

「──兄上達を呼ばないとな」

 独り言を呟くと、三人が転移して来た。

「「「っ…!?」」」

 驚いている処をみると、俺が呼んだのかな……?

「ハーシャっ…! お前が私達を呼んだの?」

 シュザークが辺りを見渡しながら聴いてきた。

「たぶん…そうみたいです」

「こいつがサドラスか。拘束するぞ?」

 ユリセスは、鑑定魔法を使ったのか、真っ直ぐにサドラスに向かい魔力封じの腕輪を嵌めて、後ろ手に拘束した。

「何でこいつ、股間を丸出しなんだ…? しかも、なんか嵌ってるし…。”性の戒め“? ハーシャ様がやったのか?」

「ああ、うん。奴隷紋を解除する時に呪い返しをしてみた。性交を禁じれば、ノルフェにおかしなことが出来なくなると思って」

 ただ、輪姦すつもりで複数人いたら無意味だったけどな…。そうじゃなくて良かったよ。

「成る程。抜け目無いね」

 シュザークが関心した様に頷いた。

「──こ、此れはっ…!! 何て事だっ…!!」

 突然、ジックバルが驚愕の声を上げた。

 そちらを向けば、ジックバルは飾り瓶を握り締めて戦慄わなないている。

「どうしたんだい?」

 シュザークが、彼に近付いて尋ねた。

「──探していた国宝が…失われてしまいました…」

「国宝? その瓶がそうだったのかい? ちょっと見せてくれる?」

 シュザークが手を差し出すと、ジックバルはのろのろと空瓶を渡した。

 あの瓶……どっかで見たような……?

「はあ、…ランドラーク王太子殿下が気落ちなさるだろうな…。お気の毒に……」

 ジックバルは、深い溜め息を吐いて肩を落とした。

「ランドラーク殿下が此れを…? ああ……そういう事か」

 シュザークは、瓶を鑑定して独り納得して頷いた。

「──この屋敷の地下に人が結構居るみたいだが…。どうする?」

 ユリセスが探索魔法を使って調べたようだ。

「─地下、ね。囚われていると視るべきだろうね?」

 シュザークはジックバルに視線を向けた。

「確認しましょう」

「じゃあ、俺は此処に残ります。二人を診ている者が必要でしょう?」

 俺は収納空間からベッドを出して、ノルフェントを寝かせた。此処にあるベッドにノルフェントを寝かせたくない。奴隷に貶されていた彼も、毛布に包んでノルフェントの隣りに寝かせた。

 当然、サドラスは放置。

「分かった。行ってくるよ」

 シュザークが頷いて三人は部屋を出て行った。

 俺はノルフェントの毛布を拡げて、紐パンを脱がせて普通のパンツに履き替えさせた。

 この世界のパンツは、元の世界のボクサーパンツだ。其れこそ、紐パンやふんどしみたいなパンツじゃなくて本当に良かったよ…。俺が履きたくない。

 きっと、紐パンを履いたままは嫌だろうと思ったから替えた。

 真っ赤になった胸の頂きに元に戻るように念じながら治癒魔法を掛けた。

 ちょっと血が滲んでいたし、歯形が残っているのが気に入らない。血が出る程……乱暴に触られたって事だ。本当に、気に入らないな……。

 俺の夜着を出して着せて、毛布で包み直した。

 ノルフェントの赤くなった頬をそっと撫でる。打たれたんだな…。あいつ、本当にムカつくな。その頬にも治癒魔法を掛ける。

 結い上げた髪も目茶苦茶だ…。

 髪を解いてブラシで梳く。いつも寝る時にする様に、後ろから前に持って来て緩く編んでやる。

 目元が赤い。いっぱい、泣いたのかな……。

 赤い目元をそっと指でなぞる…。

 もっと早く、チートに気付いていればな…。そうすれば、ノルフェントをこんな酷い目に遭わせなくて済んだのに…。其れが悔やまれる。

 でも、次は無い。

 どんな無茶な希望だとしても口に出して願えば、きっと実現される。其れが、俺のチートだ。神だなんて謂うだけあって、何でも有りだな…。

 取り敢えずは、何でも言霊ことだまにして逆に出来ない事を知ればいい。普通に考えれば、無理だと思う常識こそが枷になる何て…おかしな話だ。

 ノルフェントの頭を撫でてから、隣の侯爵子息を見る。

 彼にも服を着せてあげよう。

 毛布を剥いで下着を履かせ、夜着を着せた。

 ──どれ程酷使されたのか…胸の頂き、股間の息子、後ろの穴は、色素沈着で黒ずんでいた…。鑑定で状態を確認すると…直腸と陰部の中度な破損と出た。本当に…、どれ程の性交を強要されていたのか…。痛みもあっただろうに…。

 破損箇所に治癒魔法を掛ける。

 侯爵子息ではあるけれど…鑑定には”元侯爵子息“となっている。親に勘当されたんだろうな…。きっと、自分の息子が奴隷に貶されているなんて、気付きもしなかったんだろう…。

 サドラスは、隠蔽のスキルを持っていた。鑑定能力が低い者には分からなかっただろうしな。

 侯爵子息を毛布に包み直す。

 ベッドごと強力な結界を張ってサドラスの側に行く。

 改めて、サドラスの持つ魔力操作と謂うスキルを詳しく鑑定した。

 結果、サドラスは所謂、特異体質だった。

 普通の者は、魔力量が減っても一晩経てば回復する。ところがサドラスは回復出来ない。その代わり、使った魔力を回収出来る。自分の魔力を操り簡単な行動をさせる事も、脳に魔力を潜り込ませて人を操る事も出来るようだ。

 ノルフェントが媚薬を盛られた時、ノルフェントの乳首に悪戯していた魔力は、刺激を与える様に行動を決められていたのだ。だから、取り出した後も元気なひるみたいに動いていたのだと分かった。

 奴隷にされていた彼や彼女達も、ずっと其の魔力に悪戯されていたのだろう。──酷い話だ。

 だったら、魔力を返す訳にはいかないな。

 魔力が回復しないサドラスは困るだろうが、悪用しかしないこいつに返す義理はない。

 日々の生活に困らない程度あれば良い。

 自分の快楽の為に…少なくとも三人の人生を壊したんだ。自業自得だ。

 鑑定した内容を紙に写す。ジックバルに渡す為だ。

 本当は、スキルを封印してしまいたいが、其れをやるとノルフェント以外のスキルを封印出来る危険人物にされかねないからな。サドラスは、国宝を盗んだ犯人でもある訳だし、国に任せた方が無難だ。

 うーん。いつ迄も股間を曝け出されても不快だな。

 俺は、仕方が無く服を雑に整えてやった。

 そんな事をしていたら、突然周囲の気温がひんやりとして、重力に抑え付けられる様なプレッシャーを感じた。シュザークの魔王の覇気が放たれたのが分かった。


 何だ…!? 何かあったのかっ!?


 直ぐにシュザークの元に転移したい所だが、サドラスが居る所にノルフェントを置いて行きたくない。

 考えた末、俺の緊急用の空間の部屋…隠れ家に連れて行く事にした。ベッドごと隠れ家に魔法で運び入れた。

 此れなら、絶対に安心だ。

 サドラスの後ろの襟首を掴んでシュザークの元に転移した。




 シュザークの側に転移すると……一瞬で凍り付くかと思った…。

「常温!」

 思わず、咄嗟に叫んでいた。

 氷点下まで冷えた部屋が一瞬にして暖かくなった。

「兄上…? 一体どうしたんですか?」

 真っ黒い靄を体から立ち昇らせているシュザークをぽんぽん叩きながら尋ねる。

 シュザークは無言で腕を上げ、一つの方向を指差した。

 ぽんぽん叩きながら指し示す方を見る。

 其処には一人の少年? が、ガタガタ震えながら頭を抱えて蹲っていた。

「? あの少年がどうかしたんですか…?」

 手は休めずに、シュザークの顔を覗き込む。

「──少年……?」

 シュザークは驚いた顔をして、まじまじと俺を覗き込んで来た。

 ん? 何でそんな顔をするんだ…?

 もう一度少年に目をやり、鑑定してみると……。

 ──ああ、成る程……。そりゃあ、魔王の覇気も全開で叩き付ける訳だよ。

 少年は、少年では無かった。身体が小さいだけで、もうすぐ中年に成る年齢だ。

 カーリンベル・モーギュトス。三十八歳。

 俺とシュザーク、ミーメナを虐待していた…元父親だ。

 しかも……サドラスの奴隷に成ってるし……。

 正直、この男がハニエルとシュザークにした事は一生許さない。

 俺もシュザークも、身体中この男が付けた傷跡だらけだ。シュザークも酷いがハニエルの方がもっと酷かった。この傷は、魔法で消す事が出来なかったし、完全回復の薬を飲んでも無理だった。

 だから、俺とシュザークは、姿変えのペンダントで身体の傷を隠している。

 魔物に付けられた傷だったら隠さなかったけれど、明らかに鞭の傷だと分かるものを晒す気にはなれなかった。其れを見る度に、厭な事まで思い出してしまうから。

 周りを見ると、ユリセスが咄嗟に結界を張って防御していた。ジックバルは、蒼白な顔でこちらを視ている。

 忘れていたのに、何だってこんな処で再会してしまうんだか…。

 シュザークの好きにさせようかな? 奴隷に貶されて哀れっぽく見えても、こいつの本性を知る俺達には、“お情け頂戴”は通用しない。

 ──だけど……こいつがシュザークの闇堕ちのトリガーな気がしてしょうが無い……。

 こんな奴の為に、シュザークを魔王に何かにしてたまるかっ…!

「兄上、兄上。こいつは、奴隷に貶されています。─先ずは、是迄の経緯を訊きましょう」

 シュザークは、漸く俺と視線を合わせて、逡巡してから頷いた。

 でも、話しを訊くと言っても俺とシュザークは冷静ではいられない。此処は、ワンクッション置くべきだ。

「──ユリセス。こいつから、母上と離縁してからの今迄の経緯を訊き出してくれ。供述の魔法を掛けるのを忘れずに。──後、見た目に騙されるなよ。俺と兄上は、こいつに殺され掛けているからね」

「っ!? ─分かった」

 一瞬、驚愕の表情を浮かべたユリセスが頷くのを確認してから俺も頷く。

「俺と兄上は、ラケーティルの中級ダンジョンの依頼を片付けてくる。ノルフェと、もう一人の侯爵子息も連れて行くから、よろしくな」

「任せろ」

 ユリセスと頷き合ってから、シュザークを連れてラケーティルのギルドに転移した。




「──ハーシャ。お前は、あいつを許すのかい?」

 シュザークと共にラケーティルの中級ダンジョンを駆け抜けながら、ずっと押し黙っていたシュザークが話し掛けて来た。

「──許す? 絶対に無理ですね」

 俺は、即答した。

 こんな俺を酷い奴だと思うか? 心の狭い奴だと?

 例え、周りからそう思われたとしても、当事者で無かった者は幾らでも綺麗事を並べられる。

 許せないからと謂って、殺したいとか死刑にしろとか思っている訳じゃない。更生の機会を与えると謂うのなら其れもいい。

 だが、碌な償いもさせずに更生させると謂うのは駄目だ。其れは、罪を無かったことにしているのと同じだ。然るべき償いをした上で、更生に手を差し出すべきだ。

 まあ、此れは俺の勝手な持論だけどな。賛同出来ないと謂うなら、其れは其れで構わない。俺がこう考えているからと言って、他者にもこの考えを押し付けようとは思わない。此れについて、他者と論争する気もない。

 そして、被害者の気持ちは別物だ。どんな罰が決まったとしても、納得するかどうかは被害者次第だ。判決は受け入れても納得はしない。納得しないからと言って、被害者を責め立てるのは…お門違いだ。

 犯罪者の気持ちには寄り添えても、被害者の気持ちには寄り添えないなんて、滑稽でしかない。

 だからと言って、被害者が加害者に過剰に報復するのもどうかとは思うけどな……。

 そんな考えの俺だ。一生許すつもりは無いが、過剰に罰を与えたいとは思っていない。

 そんな奴の為に、手を汚したいとも思わない。

 シュザークにも、その手を汚して欲しくはない。

 あいつに、そんな価値など無いのだから。

「でも、兄上。……許せませんが──兄上があんな奴の為に手を汚すのは、もっと嫌です」

 隣を走るシュザークをちらりと見遣る。

「──そう……」

 シュザークは、なんとも言えない顔で押し黙った。

 ミーメナと離縁してからのあいつの経緯が酷いものであれば良い。

 因果応報の言葉の様に、報いを受けているのなら溜飲りゅういんも下がるだろう…。

 此方が態々わざわざ、手を下す必要なんて無い。

 既に、奴隷に貶されている時点で……もう、どうでもいい様な気がするしな。

 シュザークは押し黙ったまま、考え込んでいるようなのでそっとしておく。

 俺達は、サクサクと進んで行って依頼の幸運の指輪を手に入れた。

 上級、特級ダンジョンに通い詰めている俺達に取って、中級ダンジョンはチョロ過ぎた。

 依頼の幸運の指輪も、ちょっとだけラッキーって感じのもので、いつも買っているパンが十円安かった位の微妙な感じだ。

 まあ、小さな幸せを感じられるのも悪くないよな。

 依頼達成の報告は四人でしなければならないので、ユリセス達の元に戻るとしよう。




 念の為シュザークの腕を掴みながら、転移でユリセス達の元に戻る。

「ただいま」

「おう、早かったな」

 普通に家に帰ってきた様な挨拶を交わした。

「訊き出せた?」

「ああ」

 ユリセスは、頷いて何枚かの紙を渡して来た。

 其れを受け取りシュザークの腕を掴んだ儘、近くの部屋に入る。

 二人でソファに並んで座り、一緒に読む事にした。



 カーリンベル・モーギュトス (38)

 ミーメナ・キディリガン辺境伯と離縁後、イグディス・ダリダラント公爵により、戒律の厳しい修道院へ送り込まれる。

 修道院の厳しさに付いて行けず、脱走を何度も繰り返していた。一年程経った時、ついに脱走に成功する。

 酒場で男を引っ掛けては金を巻き上げ、両親である元モーギュトス侯爵の元へ転がり込む。

 カーリンベルのせいで、キディリガン辺境伯に多大な賠償金を請求された元モーギュトス侯爵は、苦しい生活を送っていた。とても、カーリンベルを養う余裕はなかった。カーリンベルも昔のような生活が送れず、不満を垂れ流す。

 質素な暮らしに嫌気が指して、兄であるモーギュトス侯爵の元に転がり込んだ。

 モーギュトス侯爵は、カーリンベルの努力もしない甘えた考えが嫌いだった。その上、此のまま手元に置いておけば、何れ、とんでもない問題を引き起こすと分かっていた。隣国のオクトバリ侯爵が男の愛人を欲しがっていると聴き、直ぐ様、連絡を取る。婚姻とは違うが愛人契約を結び、渋るカーリンベルを侯爵家だからいい暮らしが出来ると宥めすかして送り出した。

 オクトバリ侯爵は高齢で、子供のような見た目のカーリンベルを溺愛した。勿論、身体の繋がりもあったが頻度はそう多くなかったので、我儘も通る暮らしにカーリンベルは満足していた。

 だが、カーリンベルは調子に乗り過ぎた。湯水の様に散財し威張り散らす。オクトバリ侯爵はカーリンベルの言いなりで、其れを許す。そして、オクトバリ家の財政は厳しくなっていった。

 そんな時、オクトバリ侯爵の孫である当時十歳のサドラスと出会った。いつも笑顔を貼り付けたように笑うサドラスが、カーリンベルは嫌いだった。サドラスに嫌味を言い、意地悪をして、時には叩いた。其れでも笑顔を貼り付て笑うサドラスが、益々、嫌いだった。

 そして、二年が過ぎた頃、サドラスの反撃が始まった。サドラスの奴隷に貶されたのだ。

 馬鹿にしていた子供に殴られ、蹴られ、鞭打たれ、辱められる。家畜同然の扱いだった。

 カーリンベルが散財した金を稼げと言われて、変態親父共に身体を売る日々。

 其れが、カーリンベルの今日迄の経緯だそうだ。


「──自業自得ですね…」

「──本当にそうだね。何だか馬鹿らしくなってきたよ…」

 シュザークは飽きれて溜め息を吐いた。

 サドラスが“ざまあ”していたのは……なんとも微妙だが……もう、此れでいいんじゃないかな……。

 余りのくだらなさに、シュザークの怒りも何処かに行ったようだし……良しとしよう。













 
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