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穢れて壊れてなくなっても (上所 専心)
34. 可愛いやつ
しおりを挟む大学に合格して高校生活も残り少なくなってきた。
父親の一件以来、草花谷と俺の距離は物理的に更に近くなっている。
草花谷の俺に対する依存は益々強くなり、俺がソファに座っていると俺の脚に身を寄せて床に座るようになっていた。
特に何も話さなくても俺に身体をくっ付けてくる草花谷は、まるで犬のようだ。
俺の部屋に泊まっていくことも増えた。
当たり前のように俺の部屋に増えていく草花谷の私物。草花谷の服を俺のものと一緒に洗濯するのも当たり前になりつつある。
俺のベッドに平気で潜り込んで来て抱き着いて眠る。なんなら俺より先にベッドに入って寝ていることさえあった。
もう、同棲してると言ってもいいかもしれない。
草花谷のお陰で俺の強過ぎる執着や独占欲はすっかりなりを潜めている。
俺が閉じ込めたくなるのは相手が俺だけを見ないからだ。俺だけを頼りにしないからだ。
俺から逃げようとするから閉じ込めたくなる。
黙っていても俺が一番な草花谷は、まさに俺の理想そのもの。
酷い虐待を五歳から受け続けてきた草花谷は歪んだ常識を刷り込まれている。
あの両親のせいでまともな対人関係も築けず、幼い子供に接するように毒を吐き続けられたせいで草花谷の言動や行動はどこか幼い。ぼんやりしていることも多い。
草花谷は、子供が親に縋るように俺に縋る。
逆に言えば、これだけ歪んで壊れていれば俺には好都合だ。
俺がわざわざ閉じ込めなくても勝手に閉じこもってくれる。
もう草花谷でいい気がする。
恋人が何かも分かっていないのに、草花谷は俺の恋人になりたがっているんだから。
俺と一緒にいたい。ただそれだけで俺の恋人になりたがっている草花谷が可愛い。
恋愛の好きではなくても俺を欲しがっているんだから、もうそれでいいか。
俺も草花谷と一緒にいれば、常識人でいられる。
「草花谷、俺の恋人になる?」
「なりたい」
何度目かの同じ質問に草花谷は喰い付くように即答した。
きっと、今は何も分かっていない草花谷に最後のチャンスを与える。
俺から逃げる最後のチャンスだ。
草花谷はそんなもの要らないとばかりに俺と一緒にいることを即決した。
俺と草花谷……由良茶は恋人になった。
キスをすると由良茶は気持ちよさそうに俺を受け入れる。
優しくしてやろう。
由良茶が俺から逃げない限りは、俺も、
優しくいられる。
恋人になっても、俺は由良茶にキスしかしない。
俺の方の身辺をキレイにしてからでないとダメだと思ったからだ。
本当なら付き合うと決める前に済ませておくべきだったが、話しの流れで前後してしまったのは仕方がない。
まあ今は、由良茶の気持ちも恋愛とは違うものだと思うから勝手に良しとする。
散々、お世話になったねえさん達に最後の挨拶をして歩く。
大学が始まる前まで掛かってしまった。
ねえさん達は、味方のうちは心強いけど敵にするとヤバい人が多い。
円満に関係を解消する為には必要なことだった。
どうにか円満に片付いて、何かあったら力になってくれると約束してくれる。いつでも戻って来ていいとも言われた。
ねえさん達のお陰で俺の懐は潤っているし、由良茶を虐待していた例のオジサンからかなりの大金をせしめたので由良茶の懐もかなりのものだ。
勿論、それとは別に父親からは大学費用と生活費を払って貰う。由良茶に支払われるべきだった示談金もある。
由良茶に新しい口座を作り、そこに金を振り込んで貰った。由良茶は中身も見ずにその通帳や印鑑、カードの暗証番号まで俺に預けてくる。
一緒に俺の部屋で住むことにしたから由良茶の部屋を解約して荷物も全部処分してしまう。
服も俺が選んで新しく買い揃えた。
由良茶は服を買わないから、いつも同じヨレヨレの服を着回していた。ずっと前に母親が買い与えた服をそのまま着ている。背が伸びてサイズも合っていないのに由良茶は全然気にしない。
俺以外の全部のことがどうでもいいらしい。
そんな由良茶が、めちゃくちゃ可愛い。
由良茶に俺の心を満たされながら日々を過ごしていると、由良茶が身体に触りたくないのかと不安そうに尋ねてくる。
その時はまだ、ねえさん達との繋がりが片付いていなかったし由良茶自身が欲しがらないならするつもりはなかった。
でも、由良茶は触って欲しかったみたいだ。
由良茶がそう望むなら触る。
ちゃんとしたセックスはまだしない。
由良茶のモノを触ってイかせて、優しく優しくキスをする。
優しくキスをすると由良茶は、ぽーっとしてとろけた顔になって可愛い。
俺にお礼をしたいと言う由良茶に要らないと突き返す。
そのたびに落ち込んだ顔でしょんぼりとする由良茶が可愛い。
これだけは徹底して教え込まないと。
お礼でセックスをするものではないってことを。
ご褒美やお礼とかじゃなく、純粋に俺に触って貰いたい触りたいと思ってくれないと困る。
何度も要らないと言い続けていたら漸く由良茶も気付いたようで、ちゃんと自分のして欲しいことやしたいことを言えるようになった。
ちゃんと言えば、する。
そして最後に必ず、うんと優しく抱き締めて飛び切り甘く優しいキスをする。
義務や強要じゃなく、あの三人としてきた事とは違うのだと、愛されて大事にされているのだと由良茶に分かって貰う為にそうする。
由良茶は、とろとろにとろけてぽーっとなって俺に甘える。それが可愛い。
大学に入学するまで何度もそれを繰り返した。
大学に入って暫くしてから、お互いのモノを触りあってキスするだけじゃ物足りなくなった由良茶がセックスしないのかと尋ねてきたからすることにした。
ねえさん達と関係が切れていたし、俺もそろそろちゃんとしたかったのもある。
由良茶の乳首を口にして愛撫していたら、突然由良茶がフラッシュバックを起こした。
俺がわからなくなって、父親やオジサンの幻覚を見て俺の名を叫んで助けを求める。
まだ、セックスは早かったみたいだ。
泣き喚く由良茶を胸に抱いて宥め続けて寝かし就ける。
ただ云われるままに受け入れてきた由良茶が俺に助けを求められるようになっただけ好転しているのかも知れない。
俺は自分の性欲を捻じ伏せて眠りに就いた。
そのせいか、堪らなくムラムラしながら目を覚ますと由良茶が俺の上で俺のモノをハメて喘いでいる。
気持ち良すぎて散々してしまった……
俺がリードしてするのではなく、由良茶が自分からする分にはフラッシュバックが起きないと分かった。
多分、由良茶が虐待されていたことを漸く認めて、イヤなものとして認識できるようになったからなんじゃないかと思う。
専門家でもないから推測だけどな。
男を抱くことに躊躇いがあった俺としても、男だからどうのこうのと云う余計なことを考える暇もなくやってしまったのは、逆に良かったのかも知れない。
そんな状態でも、俺とだけはセックスしたいと思ってくれる由良茶が健気で堪らなく可愛かった。
由良茶は、俺を何処までも満足させてくれる。
最高に可愛いくて愛おしいやつだ。
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