私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

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第16話

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 孤児部屋でリゼは小太刀を見て、顔の筋肉が緩ませていた。
 何度も握り具合を確かめたり、抜いたり仕舞ったりと抜刀を何度もしてみる。
 初めての自分の武器。それだけで、リゼは嬉しくて仕方が無かった。
 同時にクウガも同じ気持ちで、購入当時は嬉しかったのだと考える。
 しかも、今でも綺麗に手入れをして所持していた。

(そんなに大事な物を一時的とはいえ、私に譲ってくれるなんて……)

 『ユニーククエスト発生』が表示された。
 小太刀を持ち気分の良いリゼは、すぐに受注しようとするが、罰則が頭を過ぎる。
 失敗したクエストは『ノーマルクエスト』になる。
 今迄、比較的に『ユニーククエスト』は、無茶なクエストはあったが達成が難しいものは無かった。
 このまま一生、クエストを受注しなくても問題は無い。
 しかし、能力値を上げる事も出来なくなる。
 リゼは考えるまでも無かった。
 冒険者がリスクを恐れていては、話にならない。
 リゼは意を決して、『はい』の表示を押して『ユニーククエスト』を受注する。
 『小太刀の抜刀:百回』。
お約束の時間内の作業で、リゼは「ほっ」とする。
 時間を気にしながら、ひたすら抜刀をする。
 段々と、スムーズな抜刀が出来るようになる。
 上手くいくと、綺麗な音が鳴るので、変な音が鳴ったり音がしなかったりすると、駄目な抜刀だとリゼは感じる。
 綺麗に抜刀が出来れば、討伐クエストの際に役に立つと思いながら、ひたすら抜刀を続ける。
 初めて楽しいクエストだと感じながら、百回を終える。
 抜刀していて気が付いたが、綺麗な音が鳴らなくても、スムーズに抜刀が出来る時があった。
 小太刀が自分の体の一部になったかのように、違和感が無かった。
 良い抜刀とは、音が鳴る鳴らないで判断する事ではないと考え直した。
 『ユニーククエスト達成』、『報酬(万能能力値:三増加)』が表示された。

 リゼは、心地良い汗を掻いたと思い、服を脱いで体を拭く。
 冒険者になったという気分に初めてなる。
 リゼにとって、冒険者といえば討伐のイメージが強い。
 小太刀を持つことで、自分が魔物を討伐する想像が出来た。

 正直、防具屋でクウガの言葉にリゼ自身かなり心が揺らいだ。
 しかし、一人で生きて行くと決心をした以上、他人に甘える事は出来るだけしたくは無いと思っている。
 小太刀を、クウガから譲って貰った事を後悔が無いといえば嘘になる。
 誘惑に負けた事を、リゼ自身が気付いているからだ。
 そして、先程感じた最初の武器への思いも含めて、クウガがどういうつもりで自分に小太刀を譲ってくれたのか分からないでいた。
 弟子にしたい? それとも本当に体目当て?
 どれだけ考えても、この二通りにしか答えが行きつかない。
 逆にそれ以外に考えられる可能性が無い。
 同じ孤児だからというのも考えたが、それ以上でもそれ以下でも無い。
 クウガが孤児全員を救済している訳では無い事は、現実的に考えて分かっている。

(う~ん、どう考えても分らない)

 何か胸に引っ掛かったような感じがして、変な気分だった。
 その時、孤児部屋の扉を叩く音がした。

「はい」
「リゼちゃん、アリスよ。御飯食べに行きましょう」

 扉の向こうに居るのはアリスで、夕飯の誘いだった。
 リゼは既に夕食用として、パンを購入していた。
 すぐに腐る訳では無いので、パンについては問題無いが……。
 リゼは、扉を開ける。

「アリスさん。お誘いは有難いのですが、私には贅沢出来る程の余裕も無いので……」
「大丈夫よ。お姉さんに任せておきなさい」

 リゼが全てを言う前に、アリスは強引にリゼの手を取って連れて行く。
 こうなると勝てない事は昼間経験しているので、素直に従う事にする。

「あっ、少し待って下さい」

 リゼは、クウガから譲って貰った小太刀を腰に装着する。


 階段を下りて行くと、銀翼のメンバーが揃って待っていた。
 てっきり、アリスと二人だと思っていたリゼは引き返したい気分だった。

「私の妹分のリゼちゃんよ」

 リゼを勝手に妹分と紹介している。
 否定しようとするリゼに、「冗談よ」とアリスは笑顔で返す。
 リゼは気を取り直して、銀翼のメンバーに挨拶をする。

「リゼと申します。まだ、冒険者になったばかりです。今は、ギルド会館の二階でお世話になっています」

 嘘偽りなく、リゼは正直に話す。

「私はアルベルト。このクランのリーダーを務めている」

 アルベルトが、リゼに挨拶をする。
 リゼはアルベルトを見て、御辞宜をする。

(確かに、どことなくノアの雰囲気が……)

 クウガからリゼが、髪の色以外にもノアの雰囲気を持っていると聞いていた。
 とても曖昧な表現で「具体的にどこがどうという訳では無い」と、言ったクウガの言葉も理解した。
 そして、クウガが大事にしていた小太刀を一時的とはいえ、リゼに譲った事も。

「私もクウガと同じで孤児部屋出身だ。君の先輩になる」

 リゼは驚く。
 貴族と言われても疑わない容姿なのに、孤児部屋出身と聞いても嘘としか思えなかった。
 アルベルトからクウガと親友だと聞いても、あまりに対照的な二人を見て信じられないでいた。
 その後、他のメンバーからも挨拶をされる。

「アリスから聞いていると思うが、今から食事に行くのだけど、一緒にどうかな?」
「お気持ちは大変有り難いのですが、有名なクランの方々と一緒では緊張してしまいます。やはり、申し訳ありませんが……」

 リゼは、昼間に街で言われた事も気にしていた。
 ランクAの冒険者達と並ぶには、身分が違い過ぎる。
 分相応の生活をしなくてはいけない。

「そうか。では、君がランクBに上がった時には、一緒に食事をしてくれるかな」
「……私自身、駆け出しの冒険者ですので、明日も生きているかさえ分かりません。約束は出来ませんが又、お会い出来る機会があれば誘って下さい。その時は、喜んで御一緒させて頂きます」

 リゼの言葉に、銀翼のメンバー達は驚く。
 ランクBの冒険者でさえ、死を意識していない者が居る。
 冒険者とは、常に死と隣り合わせ。
 その事を冒険者になったばかりのリゼが、死を覚悟している事を口にした。
 それに普通の冒険者であれば、ランクAしかも、銀翼のメンバーと食事が出来るとなれば、誰もが喜んで誘いに乗ってくる。
 誘っても居ない奴が付いて来たりと、面倒な事は今迄に何度もあったが、誘いを断られる事等、銀翼のメンバーとしても初めての経験だった。

「成程ね。クウガやアリスが、気に入るのが分かる気がするわ」

 一番端に居たミランは嬉しそうな表情で、リゼに近付く。

「戦い方なら、いつでも私が教えてやるぞ」

狂戦士らしい言葉と笑顔でリゼに話し掛ける。
リゼは、どうして良いか分からずに、とりあえず頭を下げて礼を言う。

「女だからって、舐められるなよ」
「は、はい!」

 ミランの言葉に思わず返事をする。

 ミランと会話をしている最中にクウガが受付に移動して、レベッカとなにやら話をしていた。
 リゼは時折感じる視線が、気になっていた。

(私を見て何を話しているんだろう?)

「クウガが気になりますか?」

 回復魔術師のラスティアがミランとは対照的に、優しく話し掛ける。

「いえ、先程からこちらを見ながら話をしていたので、もしかして私の事でも話しているのかと……」
「確かにそうね。何かあればアリスだけじゃなくて、私も守ってあげますから安心して下さいね」

 リゼは丁寧に礼を言う。
 しかし、クウガの話しの内容が気になりながらも、銀翼のメンバーと会話を続けた。

「待たせたな」

 クウガは何気ない顔で戻って来た。
 他の銀翼メンバーからは文句を言われていたが、聞こえて無いのか無視をするようにアルベルトと話を始めた。

「リゼちゃんは私達と話をしようね」

 アリスがラスティアとミラン達女性だけで、話を始める。
 リゼは聞くだけだったが、どうしても先程のクウガとレベッカの事が気になって仕方が無かった。

「そろそろ、食事に行こうか」

 クウガとの話が終わったアルベルトが皆に声を掛ける。

「たらふくエールを呑むぞ!」
「飯だ、飯!」

 ササ爺とローガンは嬉しそうに叫ぶ。
 食事に向かう銀翼のメンバーを、リゼはギルド会館前まで見送る。
 外に出るとリゼは再度、誘いを断った事を謝罪した。

「じゃあな!」
「リゼちゃん、おやすみ!」
「はい。おやすみなさい」

 銀翼のメンバー達の姿が見えなくなるまで、リゼは見続けていた。
 そのリゼの姿を、アイリやレベッカは見て感心していた。

「あの歳で、あそこまで気遣いが出来るなんて……」
「しかし、変よね。此処に来た時の服装は、それなりに良い衣装だったので貴族の御息女かと思ったんだけどね」
「そうね。どちらにしろ私達に知る術は無いし、そんな権利も無いわ」

 孤児の過去を知る事は禁止されていないが、知る理由も無い。
 ただ、二人共がリゼは子供らしくない事だけは確かだと思っていた。

 リゼは銀翼の姿が完全に見えなくなると振り返り「慌ただしい一日だった」と思いながら、冒険者になって初めて充実した日でもあったと満足していた。
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