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〜関東大会〜

プロローグ2

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 人口370万人の大都市、横浜の中心に位置し、目と鼻の先に海が広がりすぐ隣には中華街がある。

 千葉県大学女子野球連盟、関甲新女学生野球連盟、帝都大学女子野球連盟、神奈川大学女子野球連盟、そして東京新大学女子野球連盟。関東五連盟の代表が一同に集う横浜市長杯争奪関東地区女子大学野球選手権大会は今年で第20回を迎えていた。モニターから見えるマリンブルーの観客席とYのイニシャルを模した逆三角形の6基の照明塔がグラウンドを照らし始めている。

 ブルペンの電話がなる。久留美は最後の一球を投げ込んで、静かに受話器をとった。

 味方のベンチから祈りに似た沈黙を感じて、少し前まで盛んだったスタジアムの声援も今は明らかにトーンダウンしていた。

 おそらくスタジアムにいる誰もが、このピンチを抑えられるわけがないと思っているだろう。だからこそ今からマウンドに立つ久留美は胸を高鳴らせた。
「ピッチャー代わりまして……」

 自分の名前がコールされて人工芝のマウンドに足を踏み入れると一気に視界が開ける。早くなる鼓動を抑えながらフェアグラウンドとファールグラウンドを定めるラインを越えるとマウンドに集まったみんなが久留美を見つめていた。
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