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テスト期間準備③

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目から来る頭痛だからか、瞼が重く。歩く度に振動が脳に直接伝わり脳みそが揺さぶられる感覚。どくんどくん、と心臓が鼓動を刻む度に痛む頭を押さえながら、職員室を通り過ぎ一本道をただひたすらゆっくりと歩き、

そしてたどり着いた保健室。

『先生頭痛薬か何かありませんか……って、留守か』

横開きのドアを開き、自分の声が頭に響かない程度に声を出せば、居るはずの保健医の姿が見当たらず思わず顔を顰めた。

棚には沢山の薬品と包帯やら絆創膏が無造作に置かれている。市販の薬やら、はたまた病院で処方された様な袋に入った薬。

ぱっと説明書が見当たらず、


誰が頭痛に効くのかも分からない。保健委員もしくは保健室の常連(出入りしている生徒なら)把握しているかもしれないが…。

(あ、そうだ…職員室。職員室に行けば教師が何人か居た、はず)



ズキズキと痛む頭は思考回路を意図も簡単に鈍らせる。眉間に深い皺を刻みながら、ふらふらとした足で来た道を戻ろうとした。

ここに来る時通り過ぎた職員室。

横切った時に珈琲のいい香りが鼻について、不快に感じたのはついさっきの事。きっと暇な職員が優雅に菓子と珈琲を嗜んでいるのだろう。いいご身分な事で。

ただ教科書を開きそれ通りに読んで、ただ黒板につらつらと書くだけ。酷い教師だとプリントを配ってそのまま放置する奴も少なくはない。そして時間に空きが出来たら同僚と中身のない会話に花を咲かせて、ストレスが溜まれば成績の伸びが良くない生徒で憂さ晴らしをする糞みたいな大人。反面教師もいいところ。

でもそんな碌でもない奴らが社会を回し、当たり前のような顔をして金を懐に入れる。

醜くて穢らわしい生き物

俺が大人に下す評価はまさにこれ。




正直に言ってしまえばそんな大人を頼りたくはないのだが、腹を括り。薬の場所をさっさと教えて貰い、少しだけ仮眠をしよう。

30分くらい寝ればきっと頭痛も取れる筈

そう思い保健室を出ようとした時、しんと静まり返っていた部屋のカーテンが揺れた。



窓側に置かれたベッドの周りだけ、白くて薄いカーテンで仕切られていて。きっと隙間風か何かで仕切られたカーテンが揺れたのだろう。ふわり、と誘う様にゆれたカーテン

振り返らなければきっと。そう、きっと間違いは起こらなかったのかもしれない。



カーテンが揺れ、中で人が寝ていることも。
横たわっている男の顔がとてつもなく整っていることも。

そして俺が嫌っている教師陣大人が無防備な姿を晒している事も、





知らなければ何も起こらなかった、筈だった。
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