ハズレを引いた

丹波 新

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アタリになってあげたかった

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 その少年はごく普通の家庭に生まれた。
 両親もごく普通の人たちっだた。父親がサラリーマン、母親が専業主婦。
 その少年は幼稚園で多くの友達を作り、
 小学校に入学すると親の方針で色々な習い事を習わされた。
 習い事は、ピアノ、ヴァイオリン、書道、水泳、サッカー、パソコン、英会話、小学生の頃から様々な習い事をさせられていた。
 そして小学生のある日、親に逆らい習い事をボイコットするようになる。
 ここから両親の中がこじれた。
 どうしてあんな風に育てたんだとか、あなたがかまってあげないからでしょうとか。
 夫婦の中は最悪だった。
 そんな少年は引きこもった。
 毎日が苦しくなり学校にすら行けなくなった。
 それは学校でも少年のことが噂になっていたからだ。
 少年は中学生になる頃、このままではいけないと引きこもりを脱した。
 その姿を見た両親は、自分たちが少年にどれほどの苦労をかけてきたことに気が付いた。
 少年は親の為にハズレを引いてしまったのではなく、アタリを引いた中学生になろうと決心した。
 そして高校生、反抗期もあったが、何とか大学へ入学。
 彼女も出来、内定も決まり、数年後に結婚し、両親にこれまでの感謝をした。
 その男性は後に離婚し、犯罪に手を染めるハズレの子だった。
 しかし、皆の為にアタリになりたがっていた。
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