10 / 52
第一章 大悪魔との契約
10話 契約書の注意事項
しおりを挟む
「魂を食べる……嫌よ」
「ダメだ。もう契約は成立している。あとはこの紙に形式上のサインを書いてくれ」
「嫌」
「じゃあ、こうだ……」
大悪魔デビルンが右手を上げると、例によって私の右手も動く。
「ほいっ! ボールペンを受け取れ」
大悪魔は左手である物を投げると、次は右手で受け止める態勢に入り、その動きにつられた私の右手がボールペンを掴み取った。
「強制サイン……ホントはこんな真似したくはないんだぜぃ」
「――これは何だ! 手が勝手に動く。バステト何とかして――!」
「はい!」
バステトが私の勝手に動く腕にとりついて、口でボールペンを引き抜こうとしていた。
「――ダメです! ビクともしません!」
「この役立たずが! ヤダヤダ! 契約なんてしたくない!」
「……はぁ~~~~これでも、人間側に合わせて配慮した契約の結び方なんだよ。何なら今すぐ強引に魂を掻っ攫っていくぞ」
「今すぐだと! ふざけるな! 私の自由意思がないじゃないか!?」
勝手に動く右手を、残った左手で、バステト共に必死に止めていた。
「古い手順だと、血の契約だな。俺様はそっちでもいいんだぞ……でも、中世でもあるまいし、そんな契約は嫌だろう。だからサインにしとけ」
「――詐欺だ! 詐欺だ! そもそも期限あるのか! 何か月の契約とか!」
「あるぞ。大体一か月だ」
「――早すぎる。じゃあもう私はバステトと話していることが一か月も続いているから、契約期間はお仕舞いじゃないか」
「いや、契約書にサインさえしてくれればいいんだよ。そうなると契約期間がリセットされる。このままだと強制的に魂を持っていくことになるけど、そっちの方がお好みか?」
「い・や・だ」
「なら早く書いちまえよ。どのみち逃げられんぞ。言っておくけど俺様は超強い。戦って契約破棄なんて使わせないからな」
(――包丁で刺してもピンピンしているもん。除霊の結界もぶち破って来たし……契約破棄は望み薄か……?)
「――まぁ、こっちはいつでも戦闘オーケーだぜ。期間中に呪詛やら魔法でも覚えて、俺様への反乱という手もある」
テーブルに置いてあったマカロンを左手に、右手はしっかりとエアボールペンを握る手にして、私の名を契約書にサインさせようとしていた。
(名前を教えるんじゃなかった)
「(主様――これ以上は抵抗できかねます。こうなってしまえば、まず、サインしてその期間中というモノに対策を模索するしかないのでは――)」
「おうおう、そうしろそうしろ! 勝負ならいつでも大歓迎だ」
バステトのヒソヒソ話を小悪魔的マスコットは聞いていた。そしてクッキーやチョコレートを次々と平らげていく。
(あぁ~~~~もう、私の魂があと一か月しか保たないのなんて、何かの冗談か――けれど聞いておきたいことが出来た)
「おい! まず規約を読ませてくれないか! サインしようにも今言ったことが本当か嘘か確かめたい」
「う~~~~ん、それもそうだな。よし一旦呪いは解いてやろう」
デビルンが右手を上げると、私の右手は自由に動くようになった。バステトも一旦離れて行き、疲れたのか――キャットフードを口にしていた。
「え~~っと、ナニナニ……(指名、年齢、生年月日に住所と来たか)」
私は契約書を読み進めて行く。
――悪魔との取引き――
「………………………………」
十分に読み込んだ私は、一旦用紙をテーブルに降ろして、疲れた首を回す。そして――
「フフフ、フーハッハッハッハッ! 何よ簡単じゃないかしら! 戦う必要もない! 本当にサインしていいのかしら……?」
「――うっ、ゲッホ、ゲホ――何だ? どういうことだ? サインは嫌じゃなかったのか?」
「ここに書かれている一文を読んでもらえるかしら」
私はデビルンに契約書の一文に目を通すよう促せた。
「ん? 注意事項? 事故で契約してしまった場合は、その契約を破棄することが出来、元の生活に戻ることが出来る――か。これは無理だぞ。お前の場合は、期限切れだ。確か契約したのは7月20日、そして俺様と出会った日は9月1日、この項目は一か月のお試し期間みたいなものだ。悪魔はそんなに優しくないぞ」
ギラリとお菓子で汚れた歯を見せつけてくる。
「(また詐欺みたいな契約ね、けど私が見てほしいのはそっちではなくて)――違う。私の言っているのはこの下の一文よ」
またも用紙に顔を近づける大悪魔はその一文を読む。
「契約者様の願望が実現できなかった、あるいは契約者様の期待に応えられなかったなど、そういう時にはこの契約自体を破棄するものとするか、遅れて契約を持続させる…………これが何だ? オカルト少女になる夢は叶えてやっただろう」
「ところが、私の満足しない契約は破棄と書かれているな。この場合は魂の所得も引き延ばしになると書いてある」
「――何が言いたい」
「つまり、私がこの契約の内容に納得が出来ていない。夢を叶えていない」
「何でだ? お前の願いオカルト少女になる夢は叶ったぞ。続きがあるのか……?」
「――世界征服よ。オカルト少女になって世界を征服するのよ」
リビングで優雅に踊る私を、デビルンとバステトは呆気にとられた顔で見ていた。もとい見とれていた。
「これで私は、契約書にサインをしても魂の所得が遅れるようになったのね」
「ダメだ。もう契約は成立している。あとはこの紙に形式上のサインを書いてくれ」
「嫌」
「じゃあ、こうだ……」
大悪魔デビルンが右手を上げると、例によって私の右手も動く。
「ほいっ! ボールペンを受け取れ」
大悪魔は左手である物を投げると、次は右手で受け止める態勢に入り、その動きにつられた私の右手がボールペンを掴み取った。
「強制サイン……ホントはこんな真似したくはないんだぜぃ」
「――これは何だ! 手が勝手に動く。バステト何とかして――!」
「はい!」
バステトが私の勝手に動く腕にとりついて、口でボールペンを引き抜こうとしていた。
「――ダメです! ビクともしません!」
「この役立たずが! ヤダヤダ! 契約なんてしたくない!」
「……はぁ~~~~これでも、人間側に合わせて配慮した契約の結び方なんだよ。何なら今すぐ強引に魂を掻っ攫っていくぞ」
「今すぐだと! ふざけるな! 私の自由意思がないじゃないか!?」
勝手に動く右手を、残った左手で、バステト共に必死に止めていた。
「古い手順だと、血の契約だな。俺様はそっちでもいいんだぞ……でも、中世でもあるまいし、そんな契約は嫌だろう。だからサインにしとけ」
「――詐欺だ! 詐欺だ! そもそも期限あるのか! 何か月の契約とか!」
「あるぞ。大体一か月だ」
「――早すぎる。じゃあもう私はバステトと話していることが一か月も続いているから、契約期間はお仕舞いじゃないか」
「いや、契約書にサインさえしてくれればいいんだよ。そうなると契約期間がリセットされる。このままだと強制的に魂を持っていくことになるけど、そっちの方がお好みか?」
「い・や・だ」
「なら早く書いちまえよ。どのみち逃げられんぞ。言っておくけど俺様は超強い。戦って契約破棄なんて使わせないからな」
(――包丁で刺してもピンピンしているもん。除霊の結界もぶち破って来たし……契約破棄は望み薄か……?)
「――まぁ、こっちはいつでも戦闘オーケーだぜ。期間中に呪詛やら魔法でも覚えて、俺様への反乱という手もある」
テーブルに置いてあったマカロンを左手に、右手はしっかりとエアボールペンを握る手にして、私の名を契約書にサインさせようとしていた。
(名前を教えるんじゃなかった)
「(主様――これ以上は抵抗できかねます。こうなってしまえば、まず、サインしてその期間中というモノに対策を模索するしかないのでは――)」
「おうおう、そうしろそうしろ! 勝負ならいつでも大歓迎だ」
バステトのヒソヒソ話を小悪魔的マスコットは聞いていた。そしてクッキーやチョコレートを次々と平らげていく。
(あぁ~~~~もう、私の魂があと一か月しか保たないのなんて、何かの冗談か――けれど聞いておきたいことが出来た)
「おい! まず規約を読ませてくれないか! サインしようにも今言ったことが本当か嘘か確かめたい」
「う~~~~ん、それもそうだな。よし一旦呪いは解いてやろう」
デビルンが右手を上げると、私の右手は自由に動くようになった。バステトも一旦離れて行き、疲れたのか――キャットフードを口にしていた。
「え~~っと、ナニナニ……(指名、年齢、生年月日に住所と来たか)」
私は契約書を読み進めて行く。
――悪魔との取引き――
「………………………………」
十分に読み込んだ私は、一旦用紙をテーブルに降ろして、疲れた首を回す。そして――
「フフフ、フーハッハッハッハッ! 何よ簡単じゃないかしら! 戦う必要もない! 本当にサインしていいのかしら……?」
「――うっ、ゲッホ、ゲホ――何だ? どういうことだ? サインは嫌じゃなかったのか?」
「ここに書かれている一文を読んでもらえるかしら」
私はデビルンに契約書の一文に目を通すよう促せた。
「ん? 注意事項? 事故で契約してしまった場合は、その契約を破棄することが出来、元の生活に戻ることが出来る――か。これは無理だぞ。お前の場合は、期限切れだ。確か契約したのは7月20日、そして俺様と出会った日は9月1日、この項目は一か月のお試し期間みたいなものだ。悪魔はそんなに優しくないぞ」
ギラリとお菓子で汚れた歯を見せつけてくる。
「(また詐欺みたいな契約ね、けど私が見てほしいのはそっちではなくて)――違う。私の言っているのはこの下の一文よ」
またも用紙に顔を近づける大悪魔はその一文を読む。
「契約者様の願望が実現できなかった、あるいは契約者様の期待に応えられなかったなど、そういう時にはこの契約自体を破棄するものとするか、遅れて契約を持続させる…………これが何だ? オカルト少女になる夢は叶えてやっただろう」
「ところが、私の満足しない契約は破棄と書かれているな。この場合は魂の所得も引き延ばしになると書いてある」
「――何が言いたい」
「つまり、私がこの契約の内容に納得が出来ていない。夢を叶えていない」
「何でだ? お前の願いオカルト少女になる夢は叶ったぞ。続きがあるのか……?」
「――世界征服よ。オカルト少女になって世界を征服するのよ」
リビングで優雅に踊る私を、デビルンとバステトは呆気にとられた顔で見ていた。もとい見とれていた。
「これで私は、契約書にサインをしても魂の所得が遅れるようになったのね」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる