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7つのくてくてと放浪の賢者
捨てられた戦士と賭博の女神_1
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いつものように寝ころびながら新聞を読み、ぐうたらとするロクデナシの【ヴィス】は、この日常がいつまでも続くものだと思っていた。
面白い記事を見つけてゲラゲラと笑い、テーブルの上に置かれたせんべいなるお菓子をばりばりと食べる。最近仕事してないなと一瞬だけ思い浮かべながらも、再び面白い記事探しに没頭する日々。人間として腐っているかもしれないが、ヴィスにとっては至福の日々だった。
変わらない自堕落な生活。いつまでも続くと思っている日常は、ドスドスという慌ただしい音と共に崩壊が近づいていた。
ドンッと大きな音を立てながら部屋にやってきたのは、愚かな人族が住まう大陸にある最大最強の国、ギリディア王国で不幸にも女神としてまつられている【ラセルア】だ。
「お願いヴィス、いい加減にしてっ!」
女神はぷりぷりと怒っていた。頬を大きく膨らませて、威厳のなさそうな優しい瞳をキッと吊り上げてヴィスを睨む。
「おー、どうしたラセルア。俺になんか用か?」
「なんか用か? なんか用かですって! あなた、なんで私が来たのか自分の心に聞いててみなさいな! 答えなんてわかりきっているでしょう!」
ラセルアに言われた通り、ヴィスは胸に手を当てて考える。でも、何も思い浮かばなかった。とりあえずテーブルの上にあるせんべいなるものに手を伸ばす。
バリバリと音を立てながらせんべいを噛んで咀嚼して、真っすぐラセルアを見つめる。
そしてこの一言……。
「分かんねぇ」
ラセルアは激怒した。当然である。ぐうたらするヴィスを必死になって養っていたのはラセルアだった。女神だなんだの言われながらも、ダメ男に貢いじゃう、ちょっと残念なラセルアも、とうとう我慢の限界が来たようだ。
両手で顔を隠し、「ううぅ」と声を漏らす。ぐすっと鼻をすする音が聞こえ、嗚咽を漏らしていた。
(うわ、こいつガチ泣きしてやがる。めんどくせぇ)
ものすごくめんどくさくて嫌そうな顔を浮かべているヴィスは、手でしっしと追い払う仕草をしながら女神ラセルアに言った言葉がとにかくひどかった。
「ああもう、俺は今忙しいの。とりあえずその手の話は後にしてくれない…………お! そろそろ馬のレースが始まるじゃねぇか。早く行かないと。今日は勝つ気がするんだよな!」
「………………ねぇ」
うきうきしながら身支度を整えていたヴィスは、背筋がゾクゾクと冷えるような気がした。ラセルアから漏れたとてつもなく低く、冷たい声。首をギギギと鳴らしながら、ヴィスはゆっくりとラセルアの方を向く。
「そのお金、どこから出てきたものなの」
「も、もちろんお前の財布からだが?」
「ねぇ、今日ってことは馬のレースをよく見に行ってるんだよね」
「よく分かったな、俺は毎日馬のレースを見に行ってるぞ。最近どれがどの順位で勝てるのか分かってきたような気がするんだ。このままいけば、きっと大金持ちになるぞ」
「でも、負ける時は負けるでしょう。いくらぐらい負けたの」
「あー、えっと…………」
ヴィスは今まで馬のレースで得た利益と損失を考えて現在の状況を分析した。
「ざっとマイナス500万ギリぐらいかな?」
「そんな大金、私の財布に入っていなかったよね! どっから取ったの。……まさか、国庫から国のお金を取ったんじゃないでしょうね」
「いや、お前、俺に内緒でお金をコツコツとためてただろう」
そう言いながら、ヴィスは特大の笑顔を浮かべる。
「俺はそれを使っただけだ。別にお前の金だから使ったって問題ないだろう?」
ヴィスはそれが当たり前のように言った。それに加えて『俺は知ってるんだぜ』とでも言いたげなどや顔だった。見る人が見れば『こいつおちょくってやがる』的なことを思い、下手すればバトルが始まっていただろう。
だけどラセルアは違った。
その言葉を聞いて、再びラセルアが泣き出す。今回はガチ泣き以上の、精神が崩壊したのではと言いたくなるぐらいの大泣きだった。泣き崩れてその場に立つことすら不可能な状況にまで陥っていた。その理由とは……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあああん、なんでぇぇぇぇ、うわうわうわ、ああああううううおおおおぇぇぇぇぇぇえええええああああああ、なんで、なんで使っちゃうのよおおおおおおおおおお、それは今後のあわああああああ、今後の為に準備していたお金なのにぃぃぃぃいいいいいいおげぇえええええええ」」
それはそれは大変な大泣きで、もう女神としての威厳すらなかった。
「ああああぁぁぁあああ、私がぁぁぁ、あなたを養いながらぅっぅぅーーーーーー、必死に、必死にぃぃぃぃお貯めたのよおおおおおおおお。あなたと、これからのことを考えて貯めてたのにぃぃぃぃぉいうわぁああゎわわああいあああああぃいいおおおお」
ちょっと精神が崩壊している様子も見えた。それほどまでにヴィスの言葉がラセルアにとって重い言葉だったのだ。
それもそのはず、ラセルアが必死にためていたお金は、これからの二人の生活、結婚やらなんやらといったイベントが起こった時に使おうと貯めていたお金だったのだ。
ラセルアとヴィスは過去にいろいろとあり、なんやかんやでいい感じの雰囲気になって、気が付いたらダメダメだヒモ野郎とダメ男に貢ぐ女の構図になっていた。
はたから見ればすぐに破局しそうな二人だったが、ラセルアの頑張りが、何とか二人を繋いでいた。
だが今回の『今後の資金をかけ事に使っちゃったぞ事件』はラセルアの心に大きな傷をつけた。
ラセルアはゆっくりと扉を指差す。そして涙でぐちょぐちょになった顔で、ヴィスを睨みつけた。
「…………出てって」
「は? お前何言ってんの?」
「もう出てってよ。ううううあ、うわあぁぁぁぁあん、もうヤダ、辛いのよっ、あなたにお金だけ渡しても、あなたは私を見てくれようとしない。ううう、挙句の果てにこれからの資金を勝手に賭け事に使っちゃうしぃぃぃぃ、どうして、どうしてこんなことになっちゃうのよおおおおおお」
ごもっともな意見だった。ダメ男に貢ぎ続けても何の見返りもなかったラセルア。とうとう我慢の限界が来たようだ。
苦しくて、涙が湧き水のように流れ続ける。床に敷いてあった絨毯をしわくちゃに握りしめ、嗚咽を漏らす。見る人が見れば、ちょっとヤバいぐらいに泣いていた。
ぐすっと泣きながらも、ちらりとヴィスを見る。
「すん、ぐす、で、でも……これから真面目に働いて、今後の為に頑張ってくれるなら、出て行くこともないんだよ?」
こんなつらい目にあってもヴィスのことを一途に思い続けるダメ男好きの女神ラセルアは、ちらりとヴィスの様子を窺いつつそういった。
そんなラセルアの必死のお願いを、ヴィスは小指で耳をほじり、ついた耳くそをふっと息を吹きかけるなどして聞き流していた。
そして、ラセルアが落ち着いたころを見計らってーー
「じゃあ俺、出てくわ。今までありがとうな、さようなら」
「え、ちょちょちょ、なんで、ちょっと待ってよっ!」
「ごめんな、お前、そんなに俺のことが嫌いだなんて知らなかった」
「だ、誰も嫌いなんて言ってないでしょう、どうしてそんなこと言うのよ」
まさか「出てく」と言ってくるなんて思ってもいなかったラセルアが、逆に慌てふためいた。確かに資金を使われて心がえぐられるような悲しみを感じたとしても、それを理由に好きな人を捨てる程、女神の懐は狭くない。どちらかと言えば、好きになってしまったからには捨てたくない、ずっとずっと一緒にいたいというストーカー気質まである。ちょっとヤバい奴だった。
ヴィスが出て行くとみじんも考えていなかったラセルアが焦り始める。
(なんで、私がヴィスを好きなように、ヴィスも私のこと好きなんでしょう。どうして出ていくって結論になるの、なんで、なんで)
「おれさ、思うんだよね」
ヴィスは遠い目をして語り始める。ラセルアはその言葉一文字たりとも聞き逃さないばかりにヴィスを見つめる。きっと出てくと言ったのは何かの間違いなんだと、きっと一緒にやり直そうと言ってくれるに違いないと、そういった残念な希望を抱きながら、ヴィスを見つめていた。
だが、ヴィスが言った一言は、ラセルアの予想していた言葉とは全然違った。
「働いたら負けってね。ラセルアが俺に働けって言うなら、出て行く他ないよな。じゃあな、今までありがとう。近くに寄ったらたまに顔出すよ。そん時は金くれ」
「え、ええ、ちょちょちょっ、ちょっと待って、ままままま待って、待ってよっ、なんで、あ、あああ、あああああああ」
ヴィスはそのまま部屋を出て行き、バタンと音を立てて扉が閉まる。
ヴィスが出て行った後、部屋から叫び声が聞こえた。
「なんで、なんでぇぇぇぇえあああ、どうしてこうなっちゃうのよぉぉぉ、ヴィスぅぅぅ、もうそんなこと言わないから戻って来てぇぇぇ、うわぁぁぁぁぁぁぁん、ヴィスぅ~ヴィスぅ~、ああああああ、なんでよおおおおおおお」
こうして、ロクデナシのダメ男と、ダメ男に貢いだ女神の関係に破局が訪れた。
しかもダメ男が今まで貢いでくれた女神を捨てるという最悪な形で。
この後、心に深い傷をおったラセルアが精神崩壊気味に泣き崩れて長いこと寝込んでしまうのだが……まあそれはそれということで。
面白い記事を見つけてゲラゲラと笑い、テーブルの上に置かれたせんべいなるお菓子をばりばりと食べる。最近仕事してないなと一瞬だけ思い浮かべながらも、再び面白い記事探しに没頭する日々。人間として腐っているかもしれないが、ヴィスにとっては至福の日々だった。
変わらない自堕落な生活。いつまでも続くと思っている日常は、ドスドスという慌ただしい音と共に崩壊が近づいていた。
ドンッと大きな音を立てながら部屋にやってきたのは、愚かな人族が住まう大陸にある最大最強の国、ギリディア王国で不幸にも女神としてまつられている【ラセルア】だ。
「お願いヴィス、いい加減にしてっ!」
女神はぷりぷりと怒っていた。頬を大きく膨らませて、威厳のなさそうな優しい瞳をキッと吊り上げてヴィスを睨む。
「おー、どうしたラセルア。俺になんか用か?」
「なんか用か? なんか用かですって! あなた、なんで私が来たのか自分の心に聞いててみなさいな! 答えなんてわかりきっているでしょう!」
ラセルアに言われた通り、ヴィスは胸に手を当てて考える。でも、何も思い浮かばなかった。とりあえずテーブルの上にあるせんべいなるものに手を伸ばす。
バリバリと音を立てながらせんべいを噛んで咀嚼して、真っすぐラセルアを見つめる。
そしてこの一言……。
「分かんねぇ」
ラセルアは激怒した。当然である。ぐうたらするヴィスを必死になって養っていたのはラセルアだった。女神だなんだの言われながらも、ダメ男に貢いじゃう、ちょっと残念なラセルアも、とうとう我慢の限界が来たようだ。
両手で顔を隠し、「ううぅ」と声を漏らす。ぐすっと鼻をすする音が聞こえ、嗚咽を漏らしていた。
(うわ、こいつガチ泣きしてやがる。めんどくせぇ)
ものすごくめんどくさくて嫌そうな顔を浮かべているヴィスは、手でしっしと追い払う仕草をしながら女神ラセルアに言った言葉がとにかくひどかった。
「ああもう、俺は今忙しいの。とりあえずその手の話は後にしてくれない…………お! そろそろ馬のレースが始まるじゃねぇか。早く行かないと。今日は勝つ気がするんだよな!」
「………………ねぇ」
うきうきしながら身支度を整えていたヴィスは、背筋がゾクゾクと冷えるような気がした。ラセルアから漏れたとてつもなく低く、冷たい声。首をギギギと鳴らしながら、ヴィスはゆっくりとラセルアの方を向く。
「そのお金、どこから出てきたものなの」
「も、もちろんお前の財布からだが?」
「ねぇ、今日ってことは馬のレースをよく見に行ってるんだよね」
「よく分かったな、俺は毎日馬のレースを見に行ってるぞ。最近どれがどの順位で勝てるのか分かってきたような気がするんだ。このままいけば、きっと大金持ちになるぞ」
「でも、負ける時は負けるでしょう。いくらぐらい負けたの」
「あー、えっと…………」
ヴィスは今まで馬のレースで得た利益と損失を考えて現在の状況を分析した。
「ざっとマイナス500万ギリぐらいかな?」
「そんな大金、私の財布に入っていなかったよね! どっから取ったの。……まさか、国庫から国のお金を取ったんじゃないでしょうね」
「いや、お前、俺に内緒でお金をコツコツとためてただろう」
そう言いながら、ヴィスは特大の笑顔を浮かべる。
「俺はそれを使っただけだ。別にお前の金だから使ったって問題ないだろう?」
ヴィスはそれが当たり前のように言った。それに加えて『俺は知ってるんだぜ』とでも言いたげなどや顔だった。見る人が見れば『こいつおちょくってやがる』的なことを思い、下手すればバトルが始まっていただろう。
だけどラセルアは違った。
その言葉を聞いて、再びラセルアが泣き出す。今回はガチ泣き以上の、精神が崩壊したのではと言いたくなるぐらいの大泣きだった。泣き崩れてその場に立つことすら不可能な状況にまで陥っていた。その理由とは……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあああん、なんでぇぇぇぇ、うわうわうわ、ああああううううおおおおぇぇぇぇぇぇえええええああああああ、なんで、なんで使っちゃうのよおおおおおおおおおお、それは今後のあわああああああ、今後の為に準備していたお金なのにぃぃぃぃいいいいいいおげぇえええええええ」」
それはそれは大変な大泣きで、もう女神としての威厳すらなかった。
「ああああぁぁぁあああ、私がぁぁぁ、あなたを養いながらぅっぅぅーーーーーー、必死に、必死にぃぃぃぃお貯めたのよおおおおおおおお。あなたと、これからのことを考えて貯めてたのにぃぃぃぃぉいうわぁああゎわわああいあああああぃいいおおおお」
ちょっと精神が崩壊している様子も見えた。それほどまでにヴィスの言葉がラセルアにとって重い言葉だったのだ。
それもそのはず、ラセルアが必死にためていたお金は、これからの二人の生活、結婚やらなんやらといったイベントが起こった時に使おうと貯めていたお金だったのだ。
ラセルアとヴィスは過去にいろいろとあり、なんやかんやでいい感じの雰囲気になって、気が付いたらダメダメだヒモ野郎とダメ男に貢ぐ女の構図になっていた。
はたから見ればすぐに破局しそうな二人だったが、ラセルアの頑張りが、何とか二人を繋いでいた。
だが今回の『今後の資金をかけ事に使っちゃったぞ事件』はラセルアの心に大きな傷をつけた。
ラセルアはゆっくりと扉を指差す。そして涙でぐちょぐちょになった顔で、ヴィスを睨みつけた。
「…………出てって」
「は? お前何言ってんの?」
「もう出てってよ。ううううあ、うわあぁぁぁぁあん、もうヤダ、辛いのよっ、あなたにお金だけ渡しても、あなたは私を見てくれようとしない。ううう、挙句の果てにこれからの資金を勝手に賭け事に使っちゃうしぃぃぃぃ、どうして、どうしてこんなことになっちゃうのよおおおおおお」
ごもっともな意見だった。ダメ男に貢ぎ続けても何の見返りもなかったラセルア。とうとう我慢の限界が来たようだ。
苦しくて、涙が湧き水のように流れ続ける。床に敷いてあった絨毯をしわくちゃに握りしめ、嗚咽を漏らす。見る人が見れば、ちょっとヤバいぐらいに泣いていた。
ぐすっと泣きながらも、ちらりとヴィスを見る。
「すん、ぐす、で、でも……これから真面目に働いて、今後の為に頑張ってくれるなら、出て行くこともないんだよ?」
こんなつらい目にあってもヴィスのことを一途に思い続けるダメ男好きの女神ラセルアは、ちらりとヴィスの様子を窺いつつそういった。
そんなラセルアの必死のお願いを、ヴィスは小指で耳をほじり、ついた耳くそをふっと息を吹きかけるなどして聞き流していた。
そして、ラセルアが落ち着いたころを見計らってーー
「じゃあ俺、出てくわ。今までありがとうな、さようなら」
「え、ちょちょちょ、なんで、ちょっと待ってよっ!」
「ごめんな、お前、そんなに俺のことが嫌いだなんて知らなかった」
「だ、誰も嫌いなんて言ってないでしょう、どうしてそんなこと言うのよ」
まさか「出てく」と言ってくるなんて思ってもいなかったラセルアが、逆に慌てふためいた。確かに資金を使われて心がえぐられるような悲しみを感じたとしても、それを理由に好きな人を捨てる程、女神の懐は狭くない。どちらかと言えば、好きになってしまったからには捨てたくない、ずっとずっと一緒にいたいというストーカー気質まである。ちょっとヤバい奴だった。
ヴィスが出て行くとみじんも考えていなかったラセルアが焦り始める。
(なんで、私がヴィスを好きなように、ヴィスも私のこと好きなんでしょう。どうして出ていくって結論になるの、なんで、なんで)
「おれさ、思うんだよね」
ヴィスは遠い目をして語り始める。ラセルアはその言葉一文字たりとも聞き逃さないばかりにヴィスを見つめる。きっと出てくと言ったのは何かの間違いなんだと、きっと一緒にやり直そうと言ってくれるに違いないと、そういった残念な希望を抱きながら、ヴィスを見つめていた。
だが、ヴィスが言った一言は、ラセルアの予想していた言葉とは全然違った。
「働いたら負けってね。ラセルアが俺に働けって言うなら、出て行く他ないよな。じゃあな、今までありがとう。近くに寄ったらたまに顔出すよ。そん時は金くれ」
「え、ええ、ちょちょちょっ、ちょっと待って、ままままま待って、待ってよっ、なんで、あ、あああ、あああああああ」
ヴィスはそのまま部屋を出て行き、バタンと音を立てて扉が閉まる。
ヴィスが出て行った後、部屋から叫び声が聞こえた。
「なんで、なんでぇぇぇぇえあああ、どうしてこうなっちゃうのよぉぉぉ、ヴィスぅぅぅ、もうそんなこと言わないから戻って来てぇぇぇ、うわぁぁぁぁぁぁぁん、ヴィスぅ~ヴィスぅ~、ああああああ、なんでよおおおおおおお」
こうして、ロクデナシのダメ男と、ダメ男に貢いだ女神の関係に破局が訪れた。
しかもダメ男が今まで貢いでくれた女神を捨てるという最悪な形で。
この後、心に深い傷をおったラセルアが精神崩壊気味に泣き崩れて長いこと寝込んでしまうのだが……まあそれはそれということで。
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