暁を願う

わかりなほ

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最終章・送り梅雨

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 私たちが文さんと源さんの元に着いたのは、東の空が白み始めた頃。勢いよく扉が開けられ、2人が飛び出してきた。私たちが口を開く前に、ぎゅっと3人まとめて抱きしめられた。
「…よくっ…帰ってきたね」
「…良かったっ!」
そんな2人の震えた声に、タガが外れた。
「…うっ、うう…うわあああああああ!」
私は、声を張り上げて泣きじゃくった。
「お…おい、泣くなよ…っ…うあああっ!」
私を宥めようとした玲もつられて泣き出してしまう。
やっと。やっと。3人で帰ることが出来た。
「おかえり。雪、玲、恭哉」
泣きすぎて情けない声しか出ない。それでも、はっきりと言った。
「「ただいま」」
すっかり夜は明けて、眩しい位の光が私たちを照らしていた。





 憑鬼との戦いから一週間が経った。私たちの怪我も少しずつ回復していた。ただ1人。恭さんの意識は未だ戻らないままだった。源さんが言うには、身体的にも精神的にもかなりの負担がかかっていたから、一週間は目を覚まさないだろうとのことだった。だから、そろそろ目を覚ましても良い頃なのだ。
私は、いつものように玲と一緒に恭さんの傍に座った。彼の瞳は相変わらず固く閉ざされていた。
「そろそろ、起きて下さい」
「いつまで寝てるんだよ…」
恭さんの、少し冷たい手に自分の手を重ねた。その時。
ぐっ、と確かにその手に力が入った。
「…握り返してる…」
「なっ…」

ぐぐっとさらに力が入る。その瞼がぴくりと震えた。

うっと微かな声が漏れる。

そして、深い青の瞳が覗いた。

「…おはよ」
その瞳は私たちを捉えて僅かに細められた。
思い切り彼の身体に覆い被さる。
彼の手が、あやすように私たちの背中をポンポンと軽く叩く。
「おはようございます。恭さん」
「はよ。恭哉」
「ああ。おはよう」
それは暁を告げる言葉。
夜が、明けた。
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