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プロローグ
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少女雑誌の付録についてくるような、ピンク色の小冊子。どこの雑誌の付録だかは知らないが、その子は『そういうもの』を後生大事に抱えているような子だった。
おまじないとか占いとか呪いとか……そういう小学校低学年の子が、いかにも好きそうなちょっと怪しい話。
たぶん、あの年頃の女の子は多かれ少なかれ皆そういう話が好きだったのだと思う。
片思いを叶えるための道具として、クラス一のイケメンである山梨君の消しゴムは五回以上は紛失していた。男子も女子の占いを知っていたから消しゴムがなくなるとドキドキしたし、掃除のときに教室の隅っこから自分の消しゴムがなくなると露骨にがっかりする奴までいた。俺もそういう男子の一人で、なくなった消しゴムの行方はあえて捜さないようにしていた。
女子の苛烈な占いブームの中心にいたのは、樋上アズサという女の子だった。彼女の家は裕福で、田舎では発売日が遅れるはずの雑誌を発売日に学校に持ってきていた。そこには女の子が目を輝かせるような恋の成就のおまじないや自分の死に顔が分かるとうたった怖い怪談話が、山のように載っていた。
アズサは女子の中心になっていたが、けっして天狗になるような子ではなかった。いつも晴れやかに笑っていて占いやおまじないは、彼女からみんなへの趣味のおすそ分けみたいなものだった。俺の消しゴムを持っていたのはこの子だ、という確証がなぜだか当時の俺にはあった。
「カズくん、占ってあげる」
アズサは、その日も雑誌の付録のタロットカードを持って学校にやってきた。そしてクラスメイトに「こうやって使うのよ」と俺の運命を実験材料にしてタロットカードの実演をした。俺の目の前に現れたのは死神のカードだった。
「悪い運命が近づいているね」
その日の夜――消防士だった俺の父親は、仕事中に亡くなった。
おまじないとか占いとか呪いとか……そういう小学校低学年の子が、いかにも好きそうなちょっと怪しい話。
たぶん、あの年頃の女の子は多かれ少なかれ皆そういう話が好きだったのだと思う。
片思いを叶えるための道具として、クラス一のイケメンである山梨君の消しゴムは五回以上は紛失していた。男子も女子の占いを知っていたから消しゴムがなくなるとドキドキしたし、掃除のときに教室の隅っこから自分の消しゴムがなくなると露骨にがっかりする奴までいた。俺もそういう男子の一人で、なくなった消しゴムの行方はあえて捜さないようにしていた。
女子の苛烈な占いブームの中心にいたのは、樋上アズサという女の子だった。彼女の家は裕福で、田舎では発売日が遅れるはずの雑誌を発売日に学校に持ってきていた。そこには女の子が目を輝かせるような恋の成就のおまじないや自分の死に顔が分かるとうたった怖い怪談話が、山のように載っていた。
アズサは女子の中心になっていたが、けっして天狗になるような子ではなかった。いつも晴れやかに笑っていて占いやおまじないは、彼女からみんなへの趣味のおすそ分けみたいなものだった。俺の消しゴムを持っていたのはこの子だ、という確証がなぜだか当時の俺にはあった。
「カズくん、占ってあげる」
アズサは、その日も雑誌の付録のタロットカードを持って学校にやってきた。そしてクラスメイトに「こうやって使うのよ」と俺の運命を実験材料にしてタロットカードの実演をした。俺の目の前に現れたのは死神のカードだった。
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その日の夜――消防士だった俺の父親は、仕事中に亡くなった。
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