召還師と教師の不祥の弟子たち

落花生

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魔法と魔術の違いって、テストに出ますか?

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 アラキ君の話を信じるならば、この町には高校生三人を殺した騎士という男が野放しにされている可能性がある。生徒三人の死体は灰が崩れるように消え去ったという。
 俺は、サモナーにそのような現象は考えられるのかと尋ねた。
「十分に考えられます」
 サモナーの答えは、はっきりとしていた。
「おそらく、騎士は魔力食いをしたんだと思います。この世界の人間は必ず魔力を内包していますし、灰にするほど魔力を吸収できるのならば……かなり優秀な魔術師と見て間違いないと思います」
 サモナーの答えははっきりしているが、俺の理解が追いつかない。
 俺の眉間の皺を見つけたサモナーは、慌てて説明を付け加える。
「その……あの、僕らの世界の人たちは魔力がほとんどない人の方が多いんです。だから、自分の魔力だけで行う魔法は使えなくて――」
「まず、魔力が分からない」
 説明しろ、と俺は命令口調になっていた。
 どうやら、サモナーは自分の考えを相手に伝えるというのが苦手らしい。それ以外はまともにしゃべっていたので、対人恐怖症というわけでもなさそうだ。
 どちらかといえば、自分の考えを否定されて罰を受けることに常に怯えているように見える。そのせいなのか「話さないことが罰だ」とばかりにちょっと口調を変えるだけでサモナーは淀みなくしゃべりだす。
「魔力は、この世界の人間の生命の源です。人間は魔力に依存して生きていて、すべての魔力がなくなれば乾いて死んでしまいます。血がなくなるのと同じだと思えば、良いと思います」
 魔力というファンタジー要素たっぷりの言葉で喋られるより、血液と言われた方が不思議にしっくりときた。おそらく生徒三人の死体が灰のように崩れていったというアラキ君の言葉からも吸血鬼を連想させたせいだろう。
「お前たちだけの血液じゃなくて……魔力だけじゃ魔法は使えないんだな?」
「私たちは魔力の量が、元々かなり少ないですから……魔力が少ないままだと魔術の行使ができません。輸血で他人を生かすイメージをしてください。それが魔術で、私たちはカズキ様たちのようなこの世界に人々から輸血してもらって、初めて魔術が使えるんです。私は、たぶんカズキ様と繋がり、そこから魔力を得ていたんだと思います」
 段々と話が分かってきた。
 つまり、サモナーのいう魔術とは「自分たちの魔力ではなく、異世界の住人の魔力を糧に行うもの」なのである。だが、疑問もある。
「その話だと、最初からお前たちの世界とこっちの世界が繋がっているみたいだな」
 俺の言葉に、サモナーは頷いた。
 むしろ、俺がそれに気が付いていないことに驚いているふうであった。
「そうです。魔術師とは自分と異世界を繋げる者なんです。それで――自分の魔力だけで魔術を使える人の魔術を魔法といったり、その人自身を魔法使いと呼んだりはします。話がずれてしまいましたね……それで、ええと……私たちが来たのはたぶん」
 サモナーが、うかがうように俺を見る。
「話してみろ」
「……私たちの肉体がなくなったから、精神がこっちに強く引っ張られた可能性があります。私には死んだ記憶もありますし、理論的に考えてもそうだとしか考えられなくて」
 サモナーの言葉に、俺は左手を見る。
 さっき俺はサモナーの肩に触れたが、たしかに実態があった。
「精神がこっちに引っ張られた際に、何らかの形で肉体が与えられた可能性はあります。ただ、これも魔術で作られた仮初の肉体なので……生きていると言っていいのかどうか」
 困ったように、サモナーは笑った。
 俺は、今までのサモナーの言葉を理解するために米神をもみほぐす。
「つまり、おまえの世界は元々こっちと繋がってて――俺の魔力を盗んでたんだな。そんでもって、死んだら精神だけがこっちにひっぱられるようになった」
「たぶん……なんですけど」
 確証はありませんが、とサモナーは続ける。
「でも、生徒を襲ったのは騎士だ。おまえみたいな、いかにもな魔法使いじゃない」
 サモナーの話を信じるならば、異世界からやってくるのは魔術師であるというのが最低条件のはずだ。騎士が魔術の基礎を習得しているとは、俺には思えなかった。
「魔術師は、こちらの世界と繋がった人々の名称です。だから、魔術師でありながら騎士というのは別段珍しいことではないと思います」
 サモナーの話からするに、彼の世界では魔術師は国の防衛や研究者の基本的な資格みたいなものだったようだ。田舎における車の運転免許証みたいなものなのかもしれない。
 そうなると俺のイメージは完全に覆る。
どうやら、魔術というのは「特別な人が使える」というものでもないらしい。おそらくは、それなりに勉強すれば「誰でも使える」もののようだ。
「まさか……お前も」
 俺は、サモナーから一歩離れた。
 騎士は、魔力を求めて生徒を殺した。サモナーは俺に魔術を見せているし、その前も魔術を行使しているはずだ。その魔術を使うために、誰かを殺していてもおかしくはない。
「私は、大丈夫です。強く、繋がっています」
 サモナーは、俺をじっと見つめる。
「あなたと強く繋がっているから、大丈夫なんです」
 サモナーの青い目には、俺しか映っていなかった。
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