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「そんなに広い?」

「はい、私の部屋の何個分?いっぱい分です。」

か、かわええ・・・。

いっぱいを両手使って表現する子供特有の可愛さが、たまりません。

「お姉さま、あれは何でしょう?」

そう言って、アリスはパターゴルフを指さした。

「パターゴルフよ。やってみましょう。」

基本のストレートコースでお手本を見せる。

「こういう風に、真っ直ぐに打てば、いいだけだから。」

アリスにパターを手渡す。

「あーん、入らない。」

悔しがるアリスも可愛い。
女中たちがアリスのボールを回収し、再びセットする。
そんな光景を一歩離れた位置で愛でる私。

「ねえ、アリスは、滅茶苦茶可愛いと思わない?」

私は、側に控えるリリアーヌに同意を求めた。

「はい、アリスお嬢様は可愛いです。更に言えば、お姉さまぶるお嬢様も可愛いです。」

ちがーーーーうっ。
私の事はどうでもいい。
今はアリスの可愛さだけを語り合いたいのだ。

「私の事は置いといてくれる?」

「お嬢様、3歳の幼女が居たとします。」

なんで、3歳の幼女がここで出てくる?

「アリスお嬢様が、その幼女にお姉さまぶったら、どうでしょう?」

ぶはっ!
そんな光景みたら、たまらんでしょっ!

「それは、それで愛くるしいわ。」

「そういう事です。」

「何が?」

「そういう可愛さがお嬢様にあると言っております。」

「あんただけでしょっ!」

「いえ、奥様もそういう瞳で、お嬢様を見つめられておりました。」

な、なんてこったい。

「もしかして、女中の皆が、ニコニコしてたのは?」

「そういう事です。」

くっ・・・、アリスだけでなく、私に対しても、いつも以上に優しく微笑んでいたのは、そういう事かっ!

駄目だ、ここには私の意見に同意してくれそうな人間が居ない。
エヴァーノも駄目だろ。
エヴァーノからしたら、私とアリスの年齢なんて誤差みたいなもの。

はっ。

ビルなら?
駄目だ、変な性癖に目覚められたら困る。

一人で、愛でるしかないか。

「やった、入りました。お姉さま、入りましたよ。」

「アリス、そういう時はカップインっていうのよ。」

「なるほど、カップインですね。カップインしました。」

全身を使って喜びを表現するアリス。
かわえええ。

「お嬢様もあのように全身を使って表現すれば・・・。」

する訳がない。
あんな子供っぽいことを。

「自然とカロリーが消費されるでしょうに。」

「ぐはっ・・・。」

だ、大丈夫だ、私。
その為の剣術と乗馬なのだから、うん。

「アリス、お茶にしましょうか?」

「あ、あのう、私、紅茶が、あまり好きくなくて。」

ああ、そうだ。
前世でも子供の紅茶嫌いは意外と多い。
化粧品のような香りがしたり、独特の渋みや苦みがあったりとするからなのだが。
まあ、化粧品のような香りというのは、化粧品が、そのような香りをさせているからであって、紅茶のせいではない。

「飲みやすい茶葉とはちみつを用意して。」

「畏まりました。」

リリアーヌに準備だけしてもらい。

「苦手だったら、残していいからね。」

「えっ?お姉さまが、いれてくれるのですか?」

「ええ、そうよ。」

いつものように、紅茶をいれて、そっと蜂蜜を入れる。

「無理しなくていいからね。」

カップセットが3つ分用意されたので、仕方なく3ついれたが。
コイツも飲む気だな・・・。

3人でテーブルにつき、紅茶を飲む。

「うわあ、美味しい。匂いも変な匂いがしない。」

「変な匂いですか?」

「ほら、甘い香りがするのに、飲んでみると、甘さはないでしょう?」

私がリリアーヌに説明した。

「そういうものでは?」

「まあ、慣れればね。」

うん、蜂蜜入りも甘くていいな。

「もう、私が教えることはありませんね。」

「だったら、もう飲まなくていいんじゃないの?」

「それはそれ、これはこれです。」

単に飲みたいだけだろっ!

「ねえねえ、リリアーヌだけ、ブローチ付けてるのは、どうして?」

アリスがリリアーヌに聞いた。

「これはお嬢様専属を意味します。お嬢様に頂きました。」

「お姉さまが買ってあげたの?」

「いえ、これはお嬢様が初めてお作りになった物です。」

そう言って、ブローチを誇張させるが如く、胸を張る。

「すごーいっ!お姉さまが作ったの?すごい、すごい。」

いかん、私の鼻が伸びる伸びる。
可愛い妹に褒められて、喜ばない姉が居るだろうか?いや、居るはずがないっ!

アリスの可愛さをたっぷりと堪能した私は、夕食時に叔母さまに提案した。

「王都滞在時は、アリスは私の部屋で預かりますので、宜しく。」

「何、決定事項みたいに言ってるのよ。」

ありゃ?提案したつもりだったのだが・・・。

「そりゃあ、こっちは人手が少ないし、助かるのは助かるけど。いいの?義姉さん、アウエリアが勝手なことを言っているけど?」

「問題ないわ。アウエリアは、この屋敷のナンバー2なのよ?」

「そりゃあ、そうだけど。」

名目上、ナンバー2とは言え、私は養女だからなあ。

「まあ、いいわ。義姉さんもそう言うなら、アウエリア、アリスの事お願いね。」

「はい。(身命に変えましてもっ!)」

こうして、私は、アリスと楽しい日々を送れることとなった。

「それじゃあ、お姉さま、今晩から宜しくお願いしますね。」

「ええ、宜しくね。」

「お姉さまのベッドは、見たことがないくらい大きいです。」

だよね・・・。
前世で大きいベッドと言えば、キングサイズ。
日本で使ってる人って、ましゃ位しか聞いたことがない。
一応、キングベッドがどれ位のサイズかは、私も把握しているが、今世の私のベッドは、それの約2倍だ。
大きいにも程がある。

最初にお母様の部屋で一緒に寝た時のベッドは、キングサイズくらいだった。
が、私が一緒に寝る様になってから、暫くして、お母様の部屋のベッドサイズが変わった。
現在、ピザート家では、私とお母様の部屋のベッドだけ、異様に大きいサイズとなっている。
お母様の部屋に納入される時に聞いた話だと、国内で、このサイズは2例目だという。
つまり、国内にこのサイズのベッドは、ピザート家にしかないらしい。

まあ、それ位、大きいから、アリスと一緒に寝ても、全然、平気だ。




朝、紅茶の香りと共に目覚める私。
いつものように、ガバッと起き上がり、隣に天使が眠っている事を思い出す。

いかん、いかん。

そっと、起きようとするが手遅れだった。

「もう、朝ですか?」

目をこすりながら、アリスが言う。

「まだ寝ていても大丈夫よ?」

「ううん、起きます。」

かわええ。
何だ、この可愛い物体はっ!

抱きしめたい欲望を抑えつつ、アリスをベッドから降ろした。

「おはようございます、お嬢様がた。」

「おはよう。」

リリアーヌに朝の挨拶を返す。

「リリアーヌ、昨晩はありがとう。」

アリスが何やら礼を言っている。

「なんかあったの?」

私は、リリアーヌに聞いた。

「アリスお嬢様とお花摘みに行っただけです。」

はっ?
夜にアリスを何処に連れて行ってるんじゃっ!
と一瞬思ったが・・・。

ああ、トイレか。
アリスは、まだ子供だし、慣れない環境だ。
トイレが近いのも仕方がない。
その辺まで、頭が回ってなかった。

「ねえ、リリアーヌ。ちゃんと寝てるの?」

「私は、寝ていますが?」

「それならいいけど。」

後で、お母様に相談しよう。

「おいしい。お姉さまがいれてくれたのと、味が違う。」

「茶葉が違いますので。」

「色んな茶葉があるんだ。」

「茶葉はアーマードの特産ですから、アリスお嬢様は、これから、学ばれていけば、いいと思います。」

「うわあ。いっぱい勉強しなきゃね。」

「頑張ってください。」

いやあ、いいわ。
朝から、いいもん見せてもらったわぁ。
素直なアリスも、可愛すぎっ。

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