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「まさか、あなたが関わっているんではないでしょうね?」
お母様がお父様を責める。
「馬鹿を言うな。王命は、王が下すもの。他の意見なんて挿むわけもない。」
「なら、あの女が・・・。おかしいわね。あの女が、アウエリアを遠ざけるわけもないし。」
「義姉さん、いい加減に王妃様をあの女呼ばわりするのは辞めてちょうだい。」
王命には逆らえるわけがなく、私のアーマード領行きは、正式に決定した。
翌朝、お父様とコットンの3人で談話室にて話をする。
「王命の事でしょうか?」
「いや、別件だ。ただまあ王命は悪くない。」
お父様が、そういう事を言う。
「悪くない?」
「アウエリアが王命で名指しされたんだ、これでアウエリアに関わる貴族は居なくなる。」
「なら、アーマード領へ行かなくても?」
「アウエリア、王命だよ?そういう訳にはいかない。」
「ですよね~。で、別件とは?」
「ブレンダの事なんだが。」
「ああ、なるほど。構いませんよ?条件付きですけど。」
「条件とは?」
「ブレンダを宰相府にという事なんでしょう?」
「あ、ああ。」
「ならば代わりの厩番を見つけてください。」
「代わりの・・・。」
「旦那様。それこそ雲を掴むような話です。」
コットンがそう言った。
「それほどかな?」
「クロヒメは、女性しか近寄れません。女性の厩番となると、今まで聞いたことがありません。」
「そ、そうか・・・。」
「ブレンダを引き抜くよりも人を育てたらどうですか?ジョンなら、教える事が出来るでしょう。」
私が提案した。
「宰相府には、今から教育させる時間がない。」
「うちの兵士や使用人から希望者を募ったらどうです?」
「希望者を?」
「本人のやる気がなければ、直ぐに覚える事は無理かと。」
「希望者か・・・。算術が得意な者が果たしているだろうか?」
「ジョンのように洗礼を受けている人も多いかと。」
「洗礼?」
お父様に、ジョンが王都で受けた洗礼の話をした。
「そんな事がまかり通っているのか・・・。」
「旦那様、客側が同意して支払った時点で合法です。」
「しかし・・・。アウエリアならどうする?」
「私が、そういう目に合ったらという事ですか?」
「ああ。」
「私なら800ゴールドまで値切ります。」
「値切る?」
「当然です。90ゴールドをせしめようとした相手に10ゴールドの値引きで許すわけがありません。」
「・・・。」
「さすが、お嬢様。」
「私が聞いただけでも、王都では普通にある話らしいので、兵士や使用人でも、算術が得意な人間は多いと思います。」
「わかった。とりあえずピザート家の関係者から当たってみよう。」
「ピザート家の人間なら、身元調査もいりませんし。」
「そうだな。」
宰相府の人手不足は深刻らしい。
だからと言ってブレンダを引き抜かれたら、たまったもんじゃない。
なんとか引き抜きを阻止する事が出来た。
話し合いが終わり歩いていると、シェリルが近寄ってきた。
まるで当家の使用人の様に。
【しようにん】と【しょうにん】。
【よ】が大きいか小さいかだけなんだなあ。
と無駄な事を考えてしまった・・・。
「お嬢様、例のモノが出来ました。」
例のモノって何だ?
私、まだ何か頼んでたっけ?
とりあえず、ようやく出来たのねっていう体で受け取る。
カードが束になった物が3セットあった。
ああ、アレかっ!
という事で、ブツを持ってアリスを探す。
探すと言っても、アリス教室開催中なので、居場所は判っていた。
何故かシェリルも付いてきた。
このカードが何か知りたいんだろう。
「アリス、ビル、こっちに来てちょうだい。」
二人を広いテーブルの方に呼ぶ。
アリス教室に参加中のモーゼスとジョンまで付いてきた。
で、お母様と叔母様まで寄ってきた。
人多いな・・・。
「お姉さま、お姉さま、このカードは何?」
カードの束ねたものを抜き取り、カード一式をアリスに渡す。
カードの表には、2×2と書かれており、裏には答えの4が描かれている。
そう、九九のカードだ。
全64枚。
1の段は、作ってない。
「姉さん、もしかして掛け算のカード?」
「ええ、そうよ。はい、ビルのもあるわ。」
そうして、ビルに2セット目を渡す。
「最初は順番に並べて、覚えて言ってね。」
私が二人に説明した。
「本当に、子供向けの物だったとは・・・。」
シェリルがガッカリとした。
「子供用っていうけど、掛け算できるの?」
「当然じゃないですか、私は商人ですよ。」
「なら、勝負しましょうか?」
「はっ?お嬢様、私は、手加減と言う言葉を知りませんよ?」
自覚していたのか・・・。
「じゃあ、ビル。適当に5枚選んで、読みながら、カードを出してくれる。」
「うん、わかったよ。3×8。」
「24。」
瞬時に答える私。
「これで、このカードは、私の物ね。」
「なるほど、それでカードを多くとった方が勝ちと。」
「ええ。どうする?この1枚戻そうか?」
「いえ、子供であるお嬢様へのハンデですから。」
余裕綽々のシェリル。
・
・
・
私の圧勝だ。
当然だ。
日本人であれば、九九なんて朝飯前。
前世の世界であっても、一桁の掛け算は日本が速い。
二桁になるとインドになってしまうけど。
「インチキです。不正です。きっとカードに何か仕込んでいるに違いない。」
往生際が悪いシェリル。
「そもそも、カード作ったのは、あんたでしょ?別にカードが無くてもいいんだけど?」
「では、カード無しで。あと読み手を変えてください。ビル様はお嬢様の弟、何か合図を送っているに違いありません。」
してねえよっ、というか、そっちの方が凄くね?
「じゃあ、モーゼスに?」
「駄目です。モーゼスさんは、ピザート家の人間です。」
「じゃあ、すみません。叔母様、お願いできますか?」
「適当に選んで、読めばいいだけよね?」
「はい。」
「ユリアナ様は、アーマード家の人間。私もアーマード商会の人間です。宜しくお願いしますよ?」
何をお願いするんだ・・・。
で。
・
・
・
私が圧勝した。
「ぐぬぬぬ・・・。」
商人のプライドがズタズタらしいが。知らんがな。
「アウエリアは、計算はしていないわね。」
お母様が言った。
「はい、1桁の掛け算は暗記しています。」
「なっ、インチキじゃないですかっ!」
シェリルが叫ぶ。
てか、九九暗記していたらインチキって何だそれ。
「すごい、すごい。お姉さま、すごいです。」
はい、おねすご頂きました。
「アリスも、覚えるといいわ。最初は足し算の応用で覚えていけばいいから。」
「足し算?」
「先頭の数字が2を並べてみて。」
アリスが2の段を並べる。
「2×2っていうのはね、2つの塊が2つあるって事なの。」
私はポッケに入ってる丸石を4つ出した。
色々な色の丸石が10個くらい入ってる。
何か遊べないかと、レントン商会で貰った物だ。
「じゃあ、お姉さま。2×3って、2を3つ足せばいいの?」
天才やっ!
アリスは天才に違いないっ!
「ええ、そうよ。」
私はアリスの頭を優しく撫でた。
「えへへへ。じゃあ、上から順番に2を足していけば。6、8、10・・・・。」
答えを言いながらカードをめくる。
最後の18まで、きっちり正解した。
「どうしよう、義姉さん。うちの娘が天才だわっ!」
叔母様が、親バカ発言をお母様に告げた。
いや、親バカではない。
アリスは天才だ。
私は心から同意した。
「なるほど、そうやって覚えていけばいいのか。」
そう言って、今度はビルが3の段を試す。
ここにも天才が居た。
さすが、我が義弟。
「お嬢様、私(わたくし)にも、そのカードを頂いても宜しいでしょうか?」
「あのっ、お嬢様、お、俺にも」
モーゼスとジョンから声があがる。
ふむ・・・。あと一つしかないんだが。
「シェリル、追加で2セットお願い。」
「了解しました。」
「シェリルさん、ピザート家から更に追加で2セットお願いできますか?」
「了解しました。」
まあ、カードだから、難しい物じゃあない。
「とりあえず、これはモーゼスに渡しておくわ。」
「ありがとうございます。」
私は残りの1セットをモーゼスに渡した。
モーゼスが家で頼んだという事は、使用人用だろうなあ。
お母様がお父様を責める。
「馬鹿を言うな。王命は、王が下すもの。他の意見なんて挿むわけもない。」
「なら、あの女が・・・。おかしいわね。あの女が、アウエリアを遠ざけるわけもないし。」
「義姉さん、いい加減に王妃様をあの女呼ばわりするのは辞めてちょうだい。」
王命には逆らえるわけがなく、私のアーマード領行きは、正式に決定した。
翌朝、お父様とコットンの3人で談話室にて話をする。
「王命の事でしょうか?」
「いや、別件だ。ただまあ王命は悪くない。」
お父様が、そういう事を言う。
「悪くない?」
「アウエリアが王命で名指しされたんだ、これでアウエリアに関わる貴族は居なくなる。」
「なら、アーマード領へ行かなくても?」
「アウエリア、王命だよ?そういう訳にはいかない。」
「ですよね~。で、別件とは?」
「ブレンダの事なんだが。」
「ああ、なるほど。構いませんよ?条件付きですけど。」
「条件とは?」
「ブレンダを宰相府にという事なんでしょう?」
「あ、ああ。」
「ならば代わりの厩番を見つけてください。」
「代わりの・・・。」
「旦那様。それこそ雲を掴むような話です。」
コットンがそう言った。
「それほどかな?」
「クロヒメは、女性しか近寄れません。女性の厩番となると、今まで聞いたことがありません。」
「そ、そうか・・・。」
「ブレンダを引き抜くよりも人を育てたらどうですか?ジョンなら、教える事が出来るでしょう。」
私が提案した。
「宰相府には、今から教育させる時間がない。」
「うちの兵士や使用人から希望者を募ったらどうです?」
「希望者を?」
「本人のやる気がなければ、直ぐに覚える事は無理かと。」
「希望者か・・・。算術が得意な者が果たしているだろうか?」
「ジョンのように洗礼を受けている人も多いかと。」
「洗礼?」
お父様に、ジョンが王都で受けた洗礼の話をした。
「そんな事がまかり通っているのか・・・。」
「旦那様、客側が同意して支払った時点で合法です。」
「しかし・・・。アウエリアならどうする?」
「私が、そういう目に合ったらという事ですか?」
「ああ。」
「私なら800ゴールドまで値切ります。」
「値切る?」
「当然です。90ゴールドをせしめようとした相手に10ゴールドの値引きで許すわけがありません。」
「・・・。」
「さすが、お嬢様。」
「私が聞いただけでも、王都では普通にある話らしいので、兵士や使用人でも、算術が得意な人間は多いと思います。」
「わかった。とりあえずピザート家の関係者から当たってみよう。」
「ピザート家の人間なら、身元調査もいりませんし。」
「そうだな。」
宰相府の人手不足は深刻らしい。
だからと言ってブレンダを引き抜かれたら、たまったもんじゃない。
なんとか引き抜きを阻止する事が出来た。
話し合いが終わり歩いていると、シェリルが近寄ってきた。
まるで当家の使用人の様に。
【しようにん】と【しょうにん】。
【よ】が大きいか小さいかだけなんだなあ。
と無駄な事を考えてしまった・・・。
「お嬢様、例のモノが出来ました。」
例のモノって何だ?
私、まだ何か頼んでたっけ?
とりあえず、ようやく出来たのねっていう体で受け取る。
カードが束になった物が3セットあった。
ああ、アレかっ!
という事で、ブツを持ってアリスを探す。
探すと言っても、アリス教室開催中なので、居場所は判っていた。
何故かシェリルも付いてきた。
このカードが何か知りたいんだろう。
「アリス、ビル、こっちに来てちょうだい。」
二人を広いテーブルの方に呼ぶ。
アリス教室に参加中のモーゼスとジョンまで付いてきた。
で、お母様と叔母様まで寄ってきた。
人多いな・・・。
「お姉さま、お姉さま、このカードは何?」
カードの束ねたものを抜き取り、カード一式をアリスに渡す。
カードの表には、2×2と書かれており、裏には答えの4が描かれている。
そう、九九のカードだ。
全64枚。
1の段は、作ってない。
「姉さん、もしかして掛け算のカード?」
「ええ、そうよ。はい、ビルのもあるわ。」
そうして、ビルに2セット目を渡す。
「最初は順番に並べて、覚えて言ってね。」
私が二人に説明した。
「本当に、子供向けの物だったとは・・・。」
シェリルがガッカリとした。
「子供用っていうけど、掛け算できるの?」
「当然じゃないですか、私は商人ですよ。」
「なら、勝負しましょうか?」
「はっ?お嬢様、私は、手加減と言う言葉を知りませんよ?」
自覚していたのか・・・。
「じゃあ、ビル。適当に5枚選んで、読みながら、カードを出してくれる。」
「うん、わかったよ。3×8。」
「24。」
瞬時に答える私。
「これで、このカードは、私の物ね。」
「なるほど、それでカードを多くとった方が勝ちと。」
「ええ。どうする?この1枚戻そうか?」
「いえ、子供であるお嬢様へのハンデですから。」
余裕綽々のシェリル。
・
・
・
私の圧勝だ。
当然だ。
日本人であれば、九九なんて朝飯前。
前世の世界であっても、一桁の掛け算は日本が速い。
二桁になるとインドになってしまうけど。
「インチキです。不正です。きっとカードに何か仕込んでいるに違いない。」
往生際が悪いシェリル。
「そもそも、カード作ったのは、あんたでしょ?別にカードが無くてもいいんだけど?」
「では、カード無しで。あと読み手を変えてください。ビル様はお嬢様の弟、何か合図を送っているに違いありません。」
してねえよっ、というか、そっちの方が凄くね?
「じゃあ、モーゼスに?」
「駄目です。モーゼスさんは、ピザート家の人間です。」
「じゃあ、すみません。叔母様、お願いできますか?」
「適当に選んで、読めばいいだけよね?」
「はい。」
「ユリアナ様は、アーマード家の人間。私もアーマード商会の人間です。宜しくお願いしますよ?」
何をお願いするんだ・・・。
で。
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私が圧勝した。
「ぐぬぬぬ・・・。」
商人のプライドがズタズタらしいが。知らんがな。
「アウエリアは、計算はしていないわね。」
お母様が言った。
「はい、1桁の掛け算は暗記しています。」
「なっ、インチキじゃないですかっ!」
シェリルが叫ぶ。
てか、九九暗記していたらインチキって何だそれ。
「すごい、すごい。お姉さま、すごいです。」
はい、おねすご頂きました。
「アリスも、覚えるといいわ。最初は足し算の応用で覚えていけばいいから。」
「足し算?」
「先頭の数字が2を並べてみて。」
アリスが2の段を並べる。
「2×2っていうのはね、2つの塊が2つあるって事なの。」
私はポッケに入ってる丸石を4つ出した。
色々な色の丸石が10個くらい入ってる。
何か遊べないかと、レントン商会で貰った物だ。
「じゃあ、お姉さま。2×3って、2を3つ足せばいいの?」
天才やっ!
アリスは天才に違いないっ!
「ええ、そうよ。」
私はアリスの頭を優しく撫でた。
「えへへへ。じゃあ、上から順番に2を足していけば。6、8、10・・・・。」
答えを言いながらカードをめくる。
最後の18まで、きっちり正解した。
「どうしよう、義姉さん。うちの娘が天才だわっ!」
叔母様が、親バカ発言をお母様に告げた。
いや、親バカではない。
アリスは天才だ。
私は心から同意した。
「なるほど、そうやって覚えていけばいいのか。」
そう言って、今度はビルが3の段を試す。
ここにも天才が居た。
さすが、我が義弟。
「お嬢様、私(わたくし)にも、そのカードを頂いても宜しいでしょうか?」
「あのっ、お嬢様、お、俺にも」
モーゼスとジョンから声があがる。
ふむ・・・。あと一つしかないんだが。
「シェリル、追加で2セットお願い。」
「了解しました。」
「シェリルさん、ピザート家から更に追加で2セットお願いできますか?」
「了解しました。」
まあ、カードだから、難しい物じゃあない。
「とりあえず、これはモーゼスに渡しておくわ。」
「ありがとうございます。」
私は残りの1セットをモーゼスに渡した。
モーゼスが家で頼んだという事は、使用人用だろうなあ。
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