ニートじゃなくてただの無職がVRMMOで釣りをするお話はどうですか?

華翔誠

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第一部 失業したおっさんがVRMMOで釣りをしていたら伯爵と呼ばれるようになった理由(わけ)

ニューロッド

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カーボンとは炭素繊維の事である。
鉄と比べると比重が1/4、比強度で10倍、比弾性率が7倍ある。
釣りのロッドに使われているカーボンには、30tカーボンや40t
カーボンという表示がある。
これは、カーボンがある程度の変化させるのに必要な力を表している。
簡単に言うと重ければ重いほど高弾性ということになる。
が、トン数が上がれば上がるほど折れやすくなるという特徴もある。

VFGXの開発スタッフは釣りの素人達である。
もちろんロッドの作り方など知りはしない。
カーボンシートなんてものもゲーム内には存在しない。
ロッドメーカーが、このゲームで初めてロッドを制作してみて思った事は、
勝手がまったく違うという事だった。
本職がゲーム内でロッド制作に戸惑う位だから、素人には難しいかというと
むしろ、余計な知識がない分簡単なのかもしれない。
ロッド制作におけるレシピという物は、ゲーム内で設定されている。
そのレシピを探すゲームではあるのだが、それを探すのは、かなりの苦労が
必要になる。
ロッドメーカーも、今回のニューロッドを作成するために、全ての
ライトカーボンメタルを使い果たしてしまった。
何せ、作ってみない事には正解かどうかがわからないのだ。
失敗作は、歪なや、出来そこないという文字が最初に着くからすぐわかる。

「申し訳ない、頂いたライトカーボンメタルは全部使ってしまいました。」
平日の昼下がり、最初の川でロッドメーカーは、タイマーと会っていた。
「全然大丈夫です。物さえできれば、万々歳です。」
嬉々としてタイマーは答えた。
ロッドメーカーから、ニューロッドが出来たとメールを貰い、
今日待ち合わせていたからだ。
「これが新作ロッドです。」
ロッドメーカーは、2本のロッドをトレードで渡した。

ブラッククリスタルロッド

堅松樹で作られたロッドのフラッグシップモデル。
最高の感度と高弾性で、あなたの釣りライフを至極の物へと導きます。

受け取ったロッドの説明文をみて、タイマーは感動した。
「これで、いけそうですね。名前が変ですけど・・・。」
「ですね。ゲームのアイテムみたいな名前になってますよね。
 まあ、ゲームなんですけど。」
「2本ありますが?」
「2本作ることが出来ましたんで、お渡しします。
 このロッドは、タイマーさんくらいしか、欲しがる人は居ないと思いますんで。」
「じゃあ、ローラにあげてもいいですかね?」
「いいですよ。彼女なら使いこなせそうですね。」

「こんちわ。あんたが、タイマーさんか?」
タイマーを訪ねて、見た目がごっついおっさんキャラが話しかけてきた。
「もしかして、ゲンさんですか?」
「ああ、カラットから、聞いてるか?」
「ええ、ライトカーボンメタルありがとうございました。」
タイマーは丁寧に礼を述べた。
「あなたが、炭鉱夫のゲンさんですか、私はロッドメーカーといいます。
 お噂はかねがね聞いております。」
ロッドメーカーも挨拶をした。
「ああ、あなたがロッドメーカーさんですか。初めまして。」
ゲンも挨拶した。
「お互い組合に所属してますが、会うのは初めてですね。」
「ああ、俺は所属してるけど、あんまり顔出さないんで。」
「私も他に同業者が居ないんで、そんなには顔出さないんですよ。」
「ゲンさん、ロッド触ってみてください。」
タイマーはロッドを手渡した。
トレードと違い、手渡しは、所有権は変わらずアイテムを見せることが出来る。
釣り道具の場合、手渡された方は、使う事も可能である。
そのままにしていると30分で、持ち主のアイテムボックスに戻っていく。

ヒュン、ヒュン。
ゲンは、ロッドを軽く振ってみた。
「俺は釣りは、よくわからんのだが、こりゃあいいものだな。」
出来栄えに満足して、タイマーにロッドを戻した。
「堅松樹とライトカーボンメタルを使ってますからね。
 私が作った物ではありますが、異常ですよね。」
「ちげえねえ。」
ロッドメーカーとゲンは、呆れて笑ってしまった。
「いやいやいや、釣りの世界って最先端の技術が昔から使われてますよ。」
タイマーが言った。
「確かに、鮎竿なんて最高峰ですけどね。リアルの話ですが・・・。」
ロッドメーカーが補足した。
「これがあれば、5層いけそうな気がします。」
「タイマーさん、今回はソリッドティップにしてますので。」
「え?チューブラとかソリッドってあるんですか?」
「ええ、私もロッドを作りだしてビックリしたんですが。
 基本的なことは滅茶苦茶なんですが、所々中途半端な知識が盛り込まれてます。」
「このゲームって、おかしな所で凝ってる所があるからなあ。」
ゲンが言った。
「さっそく釣ってみます。」
そう言って、タイマーは釣りを始めた。
しかし、10分経っても何も釣れる気配が無かった。

「お、おい、大丈夫なのか?」
ゲンが心配そうに聞いた。
「今は当たりをスルーしてるんで。」
「そ、そうなのか。」
「川の中に層があるんですが、4層と5層はいつもあるわけじゃあ
ないんですよ。」
タイマーがゲンに説明した。
「本当に、よくわからん所で凝ってるよな・・・。」
ゲンが呆れて言った。
「本当に。」
ロッドメーカーも同じ意見だった。

川の流れが微妙に変わり、4層が現れる予兆をタイマーは感じ取った。
いつものように、ロッドを下に向け、ラインを送り込む。
かすかな感覚で4層をとらえることができた。
更に送り込む。
微妙な層の違いを感じ取った。
【5層だっ!】
タイマーは5層をとらえ、ロッドを30度くらいにして、層を固定した。
あとは、ボタンを押して、層の中に流し込んでいくだけ。
そうしてると。
ピクっ
という僅かな当たりがあった。
タイマーがそれを逃すわけもなく、神速的な速さで合わせを入れる。

見事にヒット!

そこから5分のやり取りをし、そうやく魚があがってきた。

まずまずのキンメダイが釣れた。

「おめでとうございます。」
ロッドメーカーは5層の魚が釣れたことに対して祝辞を述べた。
「すげえな。川で本当に海の魚が釣れるんだな。
 いいもん見せてもらったよ。」
ゲンは、素直に感動した。

「ありがとうございます。これもお二人の力添えのお蔭です。」
タイマーは、満面の笑みで二人に礼を言った。
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