ニートじゃなくてただの無職がVRMMOで釣りをするお話はどうですか?

華翔誠

文字の大きさ
50 / 98
第二部 淡水の王者と虫の王者

テーブルマナー

しおりを挟む
タイマーは、いつものようにいつもの場所で釣りをしていた。
規則正しく、朝から釣りに勤しんでいた。
「すみません、伯爵、ちょっとお聞きしたいことが。」
声を掛けられたタイマーは、当たりを見回す。
ポツポツと釣りをする連中は居るが、すぐ近くに人は居ない。
「俺の事?」
念の為、確認してみる。
「はい。」
【俺、いつから伯爵に?てか仙人から伯爵って降格なんだろか?】
「実は、今度、彼女とフランス料理を食べに行くことになりまして。」
【何の相談だ・・・。】
「自分も彼女もそういった店に行ったことなくて・・・。」
「ほう。」
「できれば、注意点とかテーブルマナーを教えて頂けたらなと。」
「お、俺が?」
「はい、伯爵ならそういうの詳しいかと思いまして。」
「・・・。」
あまりの突拍子もない申し出に、離れた所で釣りをしてた連中も
寄ってきた。
「釣り仙人に、なんてこと聞いてるんだ、あんた・・・。」
一人の釣り人が言った。
「そういうのって、ネットとかでも探せばあるんじゃね?」
他の釣り人が言った。
「そうなんですが、練習というかそういうのが必要かなって。」
「確かに知識だけじゃあ難しいかもな。」
大概の男性は、女性の前でいい恰好しようとして失敗する。
そもそも、普段やらないような事をするのが間違ってるんだが、
男とは悲しい生き物である。
「あのさ、彼女も初めてなんだよね?」
タイマーが聞いた。
「はい。」
「それなら二人で練習した方が良くない?」
「そうですかね?」
「誰か、椅子とかテーブル持ってないか?」
タイマーが周りの釣り人に聞いたところ、持ってる人間が居た。
ゲームだからこそ、ありえる事で、リアルでテーブルと椅子を持ち
歩いている人間は、まず居ない。
「俺が、案内係するから、とりあえず座ってみて。」
「はい。」
タイマーは男を案内した。
「座るときも立つ時も、左側からね。」
「はい。」
タイマーが椅子を引いて、男がぎこちない動きで椅子に座る。
男が座る前に立っていた場所が悪く、テーブルと体の間のスペースが
広く空いてしまった。
「最初に、十分体をテーブルに着けるようにして立つといいよ。」
「はい。」
周りの釣り人達も食い入るように見ていた。

「面白い事してるのね。」
ローラがやってきた。
普段では、ローラがONするような時間帯じゃないのだが。
「ちょうどいい、ローラ、お手本見せてくれるかな?」
「いいけど、タイマーにちゃんと案内係できるのかしら?」
「精一杯頑張らせてもらうよ。」

「こちらへどうぞ。」
ピンと背筋をはったタイマーがローラを案内する。
席を引いた所で、ローラが座る。
「ありがとう。」
何の違和感もなく、水が自然と流れるような動作で。

「う、美しい・・・。」
「ただ座っただけなのに・・・。」
周りにいた人、全員が呆然とする。

「まあ、こんな感じでね。彼女と練習するのが一番だと思うよ?」
タイマーが言った。
「そうね。女性の方が、マナーに関しては気を付けることが多いから。」
ローラが言った。
「バッグの置き場所とか?」
タイマーが聞いた。
「そうね。てかタイマーは、詳しすぎじゃない?」
「そ、そうかな?」
「よっぽどの女ったらしなのね。きっと。」
「そんな事はないよ・・・。」

「もう少し、情報収集して彼女と一緒に練習してみます。」
「それがいいわ。」
「色々、堅苦しい事はあるけど、食事を楽しむのが一番だからね。」
タイマーが言った。
「はい。」
男は満足したように去って行った。

「さすが伯爵は違うな。」
「伯爵だからな。」
周りの釣り人が言う。
「一つ聞きたいんだが、伯爵と仙人って格は、どうなるんだ?」
タイマーが聞いた。

「「「うーん・・・。」」」
全員が頭を悩ませた。

「いいんじゃない?好きな方で呼んで貰えば?」
ローラが適当に言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

処理中です...