ニートじゃなくてただの無職がVRMMOで釣りをするお話はどうですか?

華翔誠

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第二部 淡水の王者と虫の王者

ゲーム過去編「殴ってクレ、それが私の進む道」

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王道とは、正攻法、定番、定石の意味に用いられる言葉。
VFGXにおける僧侶の王道とは何だろう?
回復、補助魔法に徹した完全な後衛型を意味している。
では、腐女子における王道とは?
やはり、BLが王道になるのだと思われる。

VFGX内でギルドが実装され、ゲームが全体的に落ち着いた頃、
ミルミルは、VFGXを始めた。
職業は、VR機でないゲームで経験のあった僧侶を選んだ。
彼女が最初に思ったのは。

「何これ、僧侶って半端なく難しいんだけど・・・。」

ここがVFGX内での僧侶の分岐点となる所で、多くの者は、
ジョブチェンジをするのだが。
彼女は、僧侶であり続けることに決めた。
僧侶が装備する武器は、スティックが一般的だった。
殆どの僧侶が、小型シールドとスティックを装備していた。
しかし、彼女が選んだ武器はメイスだった。
リアルだったら、片手では持てそうにない武器も、ゲーム内であれば
なんなく装備でき、振り回すことができた。

「ミルミルさん、前に出ないで、後方で回復に専念してくれ。」
野良PTのリーダーに注意された。
渋々、ミルミルは回復に徹した。
約束の30分が終わり、普段であれば、おつかれーで即解散となるが、
今回のPTの連中は、残って、話をしだした。
6人PTで、初心者っぽいのは、ミルミルともう一人だけで、後の4人は、
中級者以上だった。
「ミルミルさんは、何処かギルドに所属してるの?」
開始間際のVFGXでは、僧侶はボロクソ言われてたものだが、今では、
ギルドの争奪戦のようなものがアチコチで起きていた。
「いえ。特には。」
「じゃあ、一度教会に行ってみるといい。」
PTリーダーが言った。
「教会ですか?」
「眠れぬ教会って言ってね、僧侶だけのギルドがあるんだよ。」
「はあ、てっきりギルドに誘われるのかと思いました。」
「俺?俺のとこはさ、メンバー募集してないから・・・。」
「もしかして、連合の方ですか?」
他のメンバーが聞いてきた。
「そうだよ。」
「初心者支援のために、野良ってるってのは本当だったんだ。」
別の一人が言った。
「持ち回りでやってるよ。オンラインゲームってさ初心者が定期的に
 増えてくれないと終わっちゃうからね。」
「さすが連合・・・。」
連合とは他ゲームで、実績のあった6つのギルドが統合されてできた
ギルドで、VFGX内では、メンバーは一切募集してなかった。
「うちにも僧侶いるけどさ、皆、苦労してるよ。たまに教会に勉強しに
 行ったりしてるけどね。」
「あの、その教会の僧侶さん達って、武器とか何を使ってるんでしょうか?」
「俺が見たことあるのは、スティックだけだね。ちなみに連合の僧侶も
 皆スティックだよ。」
「だよなあ。俺もスティックしか見たことないや。」
「そうですか・・・。」
「ミルミルさんは、メイスが使いたいの?」
「ええ、せっかく僧侶でも装備できる武器なんで。」
「メイス使いかあ。うちにも何人か居るけど、やっぱNo1は、頑強かなあ。」
「でしょうね。メイスと言ったら彼女が思い浮かびます。」
PT内の女性が言った。
「頑強ですか?」
ミルミルが聞いた。
「聖騎士団は知らない仲じゃないんで、紹介しようか?No1に会ってみる?」
「はい、是非お願いします。」
ミルミルは、PTリーダーにお願いした。

「実は連合の紹介で、僧侶が体験入団する事になった。」
ギルバルトが聖騎士団のギルドルームで団員たちに発表した。
「僧侶が、うちにか?」
ベルラインが言った。
「そうだ。」
「どうでもいいです。そんな事より僧侶って事は女性なの?」
カルディナがせっつくように聞いてきた。
「そ、それこそ、どうでもいいだろう。」
「この屑がっ!一番重要でしょっ!」
「くっ・・・。残念ながら女性だ・・・。」
「いやっほーーーーい!」
「言っとくがカルディナ、お前は関わるなよっ!」
「はあ?何言ってんの?」
「連合からの紹介だし、どうやらお目当てはベルのようだからな。」
「なっ!!! 新人の癖にベル様を狙うとは・・・。どうやら体に教えて
 やらないといけないようね。」
「この腐った奴はほっといて、ベル、僧侶なんだが、武器はメイスを使用
 してるとの事だ。」
「ほう、それで私を指名という事か。」
「ああ、頼めるか?」
「問題ない。」
「よろしく頼む。」
「大船に乗った気で任しといてっ!」
カルディナが言った。
「だから、お前は関わるな・・・。」
ギルバルトが頭を抱えた。

次の日、約束の時間より早くベルラインは、ギルドルームで待機していた。
「何故、貴様が居るっ!カルディナっ。」
「だって、ベル様を狙ってるんですよ?私、心配で。」
「いつそういう話になったんだ・・・。」

「あのう、すいません。」
既にゲストキーを渡されていた、ミルミルは、初めてのギルドルームに
ドキドキしながら、入室した。
「ミルミルさんだな。話は聞いている。私が副団長のベルラインだ。」
「よ、よろしくお願いします。」
頭を下げるミルミル。
その後、当たりを見回して、カルディナと目が会う。

暫く見つめ合う二人。

それぞれが何かを感じ取ったように。
そして・・・。

「パスっ。私とは、合いそうにないですね。」
カルディナが言った。
まさかの言葉にベルラインが絶句する。
【なっ・・・女性キャラには全て甘いカルディナが・・・。】

「失礼ですが、あなたは、ガチの方ですか?それとも二次元?」
「ガチだけど?」
「き、きもっ!」
「なっ!腐女子にキモイって言われたくないわっ!」
「私たちは、あくまで2次元の話です。頭の中で想像して終わりです。」
「想像だけして何が楽しいの?アホじゃね?」
「あなたの方がおかしいでしょ?日本じゃ認められてませんよ。」
「BLだって認められてねえだろっ!」
「想像するのは、私たちの勝手です。てかガチ百合なんて、ありえません。」

【なんで、こいつら見つめ合っただけで趣味趣向がわかるんだ・・・。】
心の中で呆れるベルライン。

「すまない。遅くなってしまって。」
ギルバルトが入室してきた。
「君がミルミルか?俺が団長のギルバルトだ。」
「そ、そ、そ、総受けきたあああああああああああっ!」
物凄いテンションで叫ぶミルミル。
「なっ・・・。」
トラウマが蘇り、その場にひれ伏すギルバルト。
「だ、大丈夫かギルバルト?」
ベルラインが声を掛けるが、返事はない。

「団長、こいつ腐ってますよ?体験ですし断りましょうよ?」
ギルバルトの耳元で悪魔のように囁くカルディナ。

突如、思考停止していたギルバルトの脳が働き出す。
【こ、こいつが俺を団長と呼びやがった。しかも女性キャラを追い出すだと。
 何がどうなってやがる・・・。】

「カルディナ、ミルミルさんは、連合からの紹介だ。無下には出来ん。」
ベルラインが言った。
「なっ、ベル様はどっちの味方なんですかっ。」
「正直に言うが、BLは私には実害はないからな。」
「「・・・。」」
真っ正直な意見に、ギルバルトとカルディナは絶句した。

「体験入団と言っても、私は、メイスの使い方を見せてもらいに来ただけです。」
「そうそう、あなた僧侶なんだから、素直に教会に行ったら?」
「あなたこそ、女だらけの教会に行ったらどうなんです?」
「私だって行きたいわよっ!!でも、今は心に決めた人が居るから。」
そう言って、熱い視線をベルラインに飛ばす。
ベルラインは、目を反らし合わない様にしている。

「とりあえず、ミルミルの言いたいことは理解した。ベル、PTを組んで技を
 見せてやってくれ。」
ギルバルトが言った。
「では、ミルミルさん、二人でも構わないか?」
「はい。」
「どうぞ、いってらっしゃい。二度と帰ってこないでね。」
カルディナが温かく見送った。

二人が出かけた後、ギルドルームにはカルディナとギルバルトの二人だけになった。
「珍しいな。お前が女性キャラを避けるなんて。」
「BL系の女はメンドクサイのよね。何かと私たちを目の敵にするし。」
「そういうものなのか・・・。」
「そういうものよ。でも、団長いいの?あの子居たら気が休まらないんじゃない?」
【それはお前もだ・・・】と内心で思った。
「あの様子だと、シンゲンさんが来たら、物凄い事になったりしてw」
他人事のように言う、カルディナ。
「連合からの手前、こちらから断ることは出来ん。お前に頼めるか?
 カルディナ。」
「OKボスっ!」
初めて意見があった二人だった。
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