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第二部 淡水の王者と虫の王者

淡水の王者

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最近のタイマーは、鯉釣りにはまっていた。
何せ淡水の王者だけあって、引きは半端ない。
層なんて、関係なしに釣れるので、いつでも釣れる。、
が、だからこそ奥が深い。
川で普通に釣りをしたら、鮒か鯉が直ぐ釣れる。
際限なく釣ってたら、餌が無くなり、金がいくらあっても足りない。
現在、タイマーが目指してるのは、鯉の最長ランクの更新である。
全ての魚には、最長記録のサイズと釣った人の名前が表示されている。
鮒、鯉、鯛、シマアジなど、かなりの種類がタイマーの名前に
なっている。
カツオ、シイラ、ブリと言ったブリ祭りで釣れるような魚は、
タイマー以外の人間の名前が多い。
川の4層や、5層で釣れる魚については、海では3層で釣れるため、
記録保持者は、海で釣ってる人間となっている。

タイマーはせわしく手元にあるボタンを押している。
これは瞬時に鮒の当たりを感知し、釣れない様にしている。
鯉の当たりがあって、ヒットしても、ボタンを長押しして外している。
ブラッククリスタルロッドの感度をもってすれば、掛けてすぐ大体の
サイズがわかるのだ。
餌、節約の為、わざとばらしている。
掛けてからある程度、時間が経って、ばらした場合は餌もロストするのだが
タイマーのように、即、バラせば、餌も無くならない。

一方、タイマーからかなり距離を取った場所で、鮒を釣ってる人間が居た。
タイマーが、最長記録を作る前の記録保持者だ。
「仙人は、どうやら鯉に夢中らしい。今のうちに、俺が返り咲いてやる。」
こっちは、どんどん餌を購入し、物量作戦でやってるので、効率は悪い。

タイマーはその後、メーター級の鯉を釣り上げたが、記録更新にはならな
かった。
「何故に鯉を?」
後ろからクレインが、タイマーに声を掛けた。
「あれ?クレインちゃん。授業は?」
今の所、ゲームの世界で、クレインちゃんと呼ぶのは、タイマーとベルライン
の二人だった。
「今日は、休講です。それより、それが例の?」
そう言って、クレインは、ジーーーっとダイマーのロッドを凝視した。
「あ、これ?持ってみる?」
そうして、クレインに手渡した。トレードではなく手渡しただけである。
「お、おおおおーーーっ。こ、これが噂の超無駄竿ですねっ。」
クレインの手が震えた。
「無駄竿って・・・。」
「これがあのライトカーボンメタルの錬鋼を使用した・・・。」
「もしかして、グランマさんの武器見ちゃったの?」
「見ました。何ですかあれは・・・。」
「まあ、レベル1の人に渡す武器じゃあないと俺も思ったけどね。」
「お蔭でおばあ様から、レベル上げの催促を受けてます。」
「手元にあれば、使いたくなるよね。」
「いいなあ・・・。」
羨ましそうに、じっとブラッククリスタルロッドを見つめる。
「もしかして、ライトカーボンメタル欲しいの?」
「ライトカーボンメタルは欲しいですが、カンピオーネの手が掛かったのは、
 要りませんっ!」
「それは、また難しい事を・・・。」
「全部、カンピオーネが護衛してるんですか?」
「大会終わってからは、結構護衛出てるみたいだよ?」
「一人で?」
「一人みたいだね。」
「あの陰鬱な森を・・・。」
「このロッドのせいで、市場にもライトカーボンメタル出さないと、
 煩く言う人もいるらしいから、組合ってのから少量を販売してるみたいだけど。」
「本当に一部の人しか買えないみたいです。そもそも買っても制作する人が
 居ないと意味ないですから。」
「俺も、グランマさんも、その点は運がよかったかなと。」
「むう・・・。」
「坑夫、知り合い居ないの?」
「ライトカーボンメタルを掘れる坑夫は、居ません。」
「カラットの奴が護衛した物じゃいやなの?」
「カンピオーネは敵ですっ!」
「じゃあ、諦めるしかないかなあ。」
「うううう・・・。」
クレインは、物欲しそうにブラッククリスタルロッドを見つめたまま、
タイマーへと返した。
「今日の夜って、礼儀作法やってるかな?」
「今日は、やってると思います。OLさん達に人気みたいですから。」
「躾なんて出来る親が居ない時代だからねえ。」
「仙人は、姿勢もいいですよね?」
「俺も、ばあちゃん仕込みだから。」
「そうなんですね。」
「今日、夜に顔を出すって、グランマさんに伝えといてくれる?」
「了解です。」
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