ニートじゃなくてただの無職がVRMMOで釣りをするお話はどうですか?

華翔誠

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第二部 淡水の王者と虫の王者

キングヘラクレス

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「どうだった?」
ベルラインとカルディナがギルドルームへ帰ると、ギルバルトが
カルディナに話しかけた。
「まあ、それなりに・・・。」
歯切れの悪い返事をするカルディナ。
「教会からは、誰が来たんだ?」
「ルビアさんです。」
「・・・。」
行かなくてよかったあと心底思うギルバルトだった。
「あ、それとこれ、インセクトドクターからのお礼だそうです。」
「お礼?ベルが断らなかったのか?」
「ベル様所望の品です。断る訳がないかと。」
カルディナは、トレードでお礼の品をギルバルトに渡した。
「ベルが要望するなんて、珍しい事もあるな。」
そう言って、ギルバルトは、アイテムボックスから、お礼の品を出した。
アイテムは、他人に見せるためにテーブルの上や、地面に置くことが出来る。
サトシのお礼の品は、標本と決まってるので、ギルバルトはとりあえず、
床に置いた。

でーーーーん。

巨大な標本がギルドルームに現れた。
「な、なんだこれは・・・。」
出したギルバルトが一番驚いたが。
「何ですかこれ?」
「ちょっと団長、いきなりこんな大きい物を・・・。」
「ビックリするじゃないですか?」
ギルドルームに居た、ギルメンから苦情が出た。

とりあえず、全員が、巨大な標本を覗き込んだ。
「「「なっ!!!」」」
「キ、キングヘラクレスだと・・・。」
「王様の中の王様・・・。」
「レアボスでしょこれ?」
「てか、ボスって標本に出来るの?」

「ちょっと団長、こんな大きい物どうする気ですか?」
一人の女性団員が文句を言った。
【そうだ、さすがにデカすぎだろ。】
ベルラインは、そのままギルドボックス行きになることを望んだ。
「そうはいってもなあ、ベルが要望した品物だぞ。」
「べ、ベル様が?そ、それじゃあ仕方ないですね。」
【・・・。】
「ふ、副団長が?」
「てことは、飾ってOKって事だよな?」
「キングヘラクレスだぜ!」
「めっちゃ自慢できるなっ!」
男性団員が一斉に大喜びした。
「何の騒ぎです?」
ちょうど、ハリーがONしてきた。
女子高生の娘を持つ年配の人間だ。
あだ名は、おっさんである。
【ガキと変わらん馬鹿共と違って、おっさんならっ!】
ベルラインは、新たな希望を胸に宿す。
「団長、なんです?この大きいの?」
「ハリーか、標本だよ。どっかに飾ろうかと。」
「こんな大きいのをですか?」
そう言って、ハリーは、標本を覗き込んだ。
「う、うおっ! キ、キングヘラクレスじゃないですかっ!
かっけーーーーっ!!!」
ハリーは、子供の様に大はしゃぎした。
【・・・・。】

「まあ、俺たち素人が考えても埒があかないからな。」
そう言って、ギルバルトは、家具職人のミーヤを呼んだ。

「ギルバルトさんから呼ばれるのって珍しいですね?」
「すまんなこんな時間に。」
ミーヤは、部屋の中にある巨大な標本が目に入った。
「もしかして、アレの事ですか?」
「ああ、あまりに大きすぎてな。どうしようかと。」
とりあえず、ミーヤは、標本を覗き込んだ。
「キ・・・キングヘラクレス・・・。」
「床に埋め込むのも今一だし、壁に張り付いてるのも不恰好だろ?」
「ベルさんは、反対では無いんですか?」
「ベルが要望した物だぞ?」
【・・・。】
ずっと何も言えないベルライン。
【中世マニアのベルさんが、虫なんて欲しがるわけないし。
恐らく嘘から出た真実的な感じなんでしょうね。】
ミーヤは、ベルラインの心情をくみ取った。
「では、正面を向かせたらどうです?」
「向きって変えれるのか?」
そもそも聖騎士団には標本は一つも飾っていない。
それ故に標本については、まったく詳しくなかった。
「虫の向きだけ360度自由に変更できます。埋め込むとしたら、
入口から直ぐ見える正面がいいでしょうね。」
そう言って、入口の真反対の壁を指さした。
「なるほど。お任せしてもいいか?」
「わかりました。」
そう言って、ミーヤは、まず標本の埋め込みを行った。
壁にすっぽり埋め込む為、ギルドルームが狭くなることはない。
埋め込んだ後に、キングヘラクレスの向きを正面に据えた。
聖騎士団のギルドルームは、中世のヨーロッパをイメージしてる為、
石造り風の調度品が多い。
ミーヤは、手持ちの材料で、闘技場の入場門を思わせるデコレーションを行った。
その結果、まるで今からキングヘラクレスが、闘技場に登場するかのような感じになった。
「「「おおおーっ!」」」
ギルドルームから歓声が上がる。
「どうですか、ベルさん。これなら雰囲気も壊れませんよ?」
「ううう・・・ありがとうミーヤちゃん。私の気持ちを判ってくれるのは、
ミーヤちゃんだけだよ。」
聖騎士団にあるギルドボックスや調度品は、殆どミーヤが作った物だった。
それ故に、ベルラインの趣味嗜好は熟知していた。
「最高の出来だっ!費用はいくらだミーヤ。」
ギルバルトが聞いた。
「手持ちの材料で終わったんで、今回はサービスでいいですよ。」
「し、しかしなあ・・・。」
「聖騎士団のギルドの総資産より、私やサトシさんは多く持ってますから。」
「それはそれだろ?」
「レベル上げや、解放クエストを手伝ってくれるだけで十分です。」
「わかった。遠慮なしにいつでも声を掛けてくれ。」
「はい。でも、これって噂になるかもですね。」
「だろうな。」
「私は黙ってますけど・・・。」
「ベル、今日のメンバーは?」
「ターヤさんとルビアさんが居た。」
「あっという間に、広まるだろうな・・・それに・・・。」
ギルバルトは、自分のギルドルームを見渡した。
明らかに個人トークしてるような面々が多数存在した。
「暫くは、賑やかになりそうですね。」
「まあ、仕方ないな。」
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