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家族とは
倦怠期(5)
しおりを挟む「ひぃぁぁぁっ…!!!」
それは小さいながらも強烈な振動を与えるウォータープルーフタイプのローターだった。
それが脱衣所からずっと雫の中に埋め込まれていた。
振動は変則的で強くなったり弱くなったりして雫の内部を悪戯していたが、強烈な刺激でもない分もどかしさばかりが募っていき、より確かなものが欲しくなる。
そんな雫の願望を分かっていながら悠はそれを焦らし放っていたのである。
だがそれがあるならまだ続きがあるはずと心のどこかで期待してしまった自分の浅はかさをまた痛感する雫だった。
結局、一緒に風呂に入ろうなどと言われてホイホイ喜んでしまった自分が馬鹿なのだと後から気付く、雫はいつもこうして後で賢者タイムが訪れるのだった。
「な?マンネリじゃないだろ?」
「うっ…まだ根に持ってる。でも、こういうのは望んでない…」
「じゃあ、雫が言うマンネリじゃないやつ…しようか?」
そう言われるが早いか唇を塞がれ歯列の隙間から熱いビロードがめり込んで来て雫のビロードへと絡みつく。
それは確かに雫が待ち望んでいた温もりであり、またそれを受け入れてしまうと、後は悠の強引な舌遣いに翻弄されてしまう雫だった。
高校二年からの同級生だった二人の付き合いは長い。
それが大学生活も終盤を迎え、進路の岐路に立たされるようになりお互いにすれ違う時間も増えた。
そしてよくある事ではあるが、二人は昔ほどセックスに対して貪欲じゃ無くなってしまった。
だからといってまったく何もしない訳ではないが、セックスなんて所詮逝ければそれで終わる。
お互いに男同士で逝くのに嘘もへったくれもない。
女性なら逝くというのを演技で終わらせる事も可能だろうが、男同士ならお互いに出すものを出して果てればいい、少なくともそれで逝った事には変わりない。
ただその過程があまりに腑に落ちなくなって雫はつい悠に『マンネリなんだよ』とキレてしまった事があったのだった。
これを世間一般には倦怠期というものなのかもしれない。
ただ雫はそれが一番怖かった。
悠が自分に興味を示さなくなった時、それは二人の関係の終わりを意味する。
悠が雫に取った態度は、雫にとってその始まりのような気がしたのだった。
だがそれも今は雫の間違いだったと分かって、それなりに反省していた。
でもまさか俺様な悠が人に気を遣うなんて思わなかったのだった。
ただ単に飽きられて面倒くさくなってそんな風な態度を取られているのかもしれないと思ったら堪らなくなった。
雫をセックスレスにはさせないと…確かにそれは付き合い始める時の悠の約束だった。
だからといって出せればそれでいいだろというようなセックスなんて望んではいなかった。
お互いゆっくりとする時間もなく、その中でなんとか時間を作ってそれを無理にしているのは見え見えで、半ば義務のようにそれをしようとする悠にとうとう雫がキレてしまったのだった。
時間がない中しようとしてくれているのは確かに嬉しかったのだが、雫がキレた原因はもっと別にあった。
まだ、お互いに出して終わったと言うなら納得は出来たかもしれない、だが逝ったのは雫だけで、悠はそうではない事が問題なのだった。
お前が逝ったんだからそれでいいだろと言われているようで、だからそれはそういう事じゃない!とキレてしまうのは、雫の柔そうに見えて意外と強いところだった。
悠に雫だけを満足させて自分は別にしなくてもいいという態度を取られた事が雫は気に入らなかった。
雫が逝くポイントを熟知した悠なら雫だけ逝かせる事は容易い。
しかも雫だけ堕とされて目がさめると終わっていたという事態が何度か続いた。
悠が入って来た痕跡もなく、そのあとどうしたかは先に堕ちてしまった自分からは聞きにくい。
だからといってそれでは申し訳ない気持ちもする。
だったら雫だって次は悠にいっぱい逝って欲しいと願うのが普通の事だった。
次にそのシチュエーションが来た時雫は悠にそう言うと、悠は別に自分は逝かなくても雫の逝く顔が見られればそれでいいと言われてまた逝かされ、抗っても良いところばかりを突かれてしまえば呆気なく堕ちてしまった。
だからとうとう雫もキレて言い争っているうちに『マンネリなんだよ!』と言ってしまったのだった。
相手さえ逝ければそれでいいというのが気に入らない雫のそれは自分の欲求不満も含まれていた。
だがそれを言われて傷つかない男がいない訳がないのだが、言った本人も男だったから言うにはそれなりに切羽詰まった想いがあっての事なのである。
そのあと喧嘩もしたが、とことん話し合い、悠の真意が分かった。
悠は雫があまりに必死に病院実習やらレポート、そして血液恐怖症克服を兼ねた救急でのアルバイト、更には国試対策の勉強とそれこそ寝る間を惜しむようにそれをこなしている姿を見たら、その身体に負担を掛けたくなかったと吐露した。
結局それは雫の身体を気遣っての事だったと分かりホッと安心したのだが、それを未だに悠に槍玉にあげられると、何の申し開きも出来ず、ぐっと喉元を締められるような気にもなるのだった。
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