鎖 〜例え、どんなに歪な形でも〜

暦海

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本望

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「――それにしても、皆さんが知ったらどんな反応するんでしょうね、冬樹ふゆき先輩?」
「……へっ?」
「だから、私達のことですよ。今や、一つ屋根の下で愛を育んでいる私達のことを、職場の皆さんが知ったらどんな反応するかなって。ふふっ、楽しみですね」
「……ああ、なるほど」


 翌日、ほどなく21時に差し掛かる頃。
 仄かな灯りが照らされる帰り道を、二人閑談を交わしつつ歩みを進めていく。……いや、なるほどとは言ったものの……うん、何とも答えづらい。

 その後も、悪戯っぽい――あるいは、屈託ない笑顔で話し続ける陶奈とうなさん。そして、そんな彼女の笑顔を崩さぬよう、僕も努めて明るく振る舞う。と言うのも――

「…………っ!!」

 喉元まで到達した声を、どうにか寸前で押し留める。……いや、少し零れたかもしれないけど。
 そして、原因は……まだ少し遠い、僕らの後方――以前のものすら、まるで比べ物にならない……もはや、殺気と呼んで差し支えないほどに凄絶たる憎悪の念が、僕らの後方から身震いするほどに伝わっていて。

「……っ!? ……冬樹先輩」

 ふと、息を呑む音が――そして、ほどなくして安堵のような微笑を浮かべ僕を見つめる陶奈さん。卒然、僕が彼女の手をそっと掴んだから。そして、どちらからともなくゆっくりと指を絡ませる。……彼女は……陶奈さんだけは、何としても僕が――


「――――っ!! 陶奈さん、逃げて!!」


 刹那、背筋が凍り――だけど、すぐさま大声を上げる僕。何故なら――卒然、底知れぬ殺気が小刻みに音を立てこちらへ接近して来たから。

「――死ねぇえええええええええええええぇ!!!!」

 脳の司令を送るのを待たず、彼女の盾になるべく身体が動く。すると、けたたましい叫び声と共に猛然と突進してくるのは黒いフード服の人物――そして、その両手にはギラリと光る刃物が握られていて。

 ……ああ、僕は死ぬんだ。でも……きっと、これで良いのだろう。ううん、どころか……むしろ、本望と言って良い。だって……だって、他でもない陶奈さんのために死ねるんだから。僕にとって、これ以上に幸せな死に方なんてあるはずないんだし。

 すると、あまりの勢いのせいか、被っていたフードがパッと外れその顔が露に……まあ、折角なので見ておくのも悪くない。こんな僕の生涯に終止符を打ってくれる、その顔を…………あれ? でも……さっきの声、何処かで――

「…………え?」

「――――冬樹先輩!!」


 ――――グサッ。



「………………え」





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