どういうわけか源氏物語の世界に迷い込んだ私ですが……とにかく、幸せになるべく奮闘します!

暦海

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ここはどこ? 私は誰?

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「…………え?」


 朧な意識の中、寝惚け眼を擦りつつポツリと声を洩らす。そんな私の視界に映るは……えっと、木? 木組みの天井? 何て言うんだっけ、こういう……いや、そんなことより――

「……いや、ここどこ!?」

 朝一番、ハッと起き上がり叫びを上げる、いや、正確には朝かどうかも分からないけど……うん、どちらかと言えばお昼かな? なんか、雰囲気的に。

 ……いや、そんなことはどうでもいい。そんなことより……いや、ほんとどこ? ……えっと、なんか几帳とか簾とか、あと襖とか……ともかく、あの至って普通な私の部屋でないことだけは確かで――


「――あぁ、目を覚ましたんだね更衣こうい!」
「…………へ?」


 そんな困惑の最中さなか、ゆくりなく届いた声にハッとして顔を向ける。すると、そこには何とも上品な衣装に身を纏った見目麗しい男性が。……えっと、どちらさま? それに……この衣装、どこかで……いや、それより――

「――とりあえず、学校の準備しなきゃ」
「……学校? ……そうか、貴女は大学に通いたかったのか。気付かなくてすまなかった。それなら、私の方から入学の手続きをしておこう」
「……へっ? えっと、何を言って……」
「だが……ひとまず、今日のところは安静にしておいた方が良いだろう。私のせいだとは重々承知しているし、言えた義理でもないのだろうが……今も、ひどく顔色が優れないようだからね」
「いや、だからその……」

 ……いや、そういうことじゃなく……あと、大学じゃなくて高校だし……いや、そもそもそれ以前に――

「……あの、ところでさっき何と言って……」
「ん? ああ、ひどく顔色が優れないようだから、今日のところは安静に――」
「あっ、いえそこじゃなくもっと前……いえ、何と言うか……えっと、例えば私って周囲の人達からなんと呼ばれてます?」

 ……うん、自分でも何を言ってるんだろうと思う。記憶喪失、と言うにもだいぶ不自然だし。……だけど、今の私の疑念に適する回答こたえを得られるとしたら――

 すると、果たして不思議そうな――そして、心配そうな表情かおを浮かべる美貌の男性。それから、徐に口を開いて――


「……そうだね、全ての人に共通しているわけでもないだろうけど……大半の人からは、桐壺きりつぼと呼ばれていたように思うよ」





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