どういうわけか源氏物語の世界に迷い込んだ私ですが……とにかく、幸せになるべく奮闘します!

暦海

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……ほんと、いつも通りで。

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「…………あれ」


 ふと、ポツリと呟く。そんな私の視界には、見慣れたはずの――なのに、もう暫くご無沙汰な気がする白い天井。そんな光景に、嫌でも何が起きたのかを理解する。


「…………帰って、来たんだ」

 そう、ポツリと呟く。そんな私の手には、栞の外れた源氏物語がそっと握られていて。


 ともあれ、転がったまま徐に枕元へ手を伸ばす。そして、お馴染みの電子機器――スマホを手に取り画面を確認すると、日付は6月11日。……うん、何の不思議もない。――あれが全て夢だとすれば、何の不思議もない。



「――おはよう、帆弥ほのみ。朝ご飯できてるわよ」
「うん、ありがとママ」

 それから数分後、階段を下りリビングへ。すると、届いたのは明るい母の声。……なんでだろ、昨夜聞いたはずなのに、随分と久しぶりな気がして。

「……どうかした? 帆弥」

 すると、私の様子に異変を察したのか、少し心配そうに尋ねる母。……しまった、表情かおに出てたかな。……でも……うん、折角なので―― 


「……あの、ママ。その……つい最近、急に時間が飛んだり人物キャラが変わったりしなかった?」
「何言ってんのこの子⁉」




「――おはよ、帆弥。……あれ、どうかした?」
「あ、ううん何にも! おはよ、真姫まき


 通学路にて、少し不思議そうに尋ねる女子生徒にすぐさま首を横に振る私。彼女は山崎やまさき真姫――二年五組のクラスメイトで、数少ない私の友人で。

 ……そうだ、一応、真姫にも尋ねてみ……いや、止めとこ。母みたく、精神科を勧められでもしたらそろそろ心折れそうだし。




「……こうして、彼女は五人の貴公子から求婚を受けるも――」


 それから、数時間経て。
 三限目、迫り来る眠気に耐えつつそっと窓の外を眺める。……あれ、結構寝たはずなんだけどな。

 それにしても……うん、ほんと何にも変わんない。普通に起きて、ママがいて、真姫と一緒に登校して……あと、割愛したけどなんか複数の女子に軽い嫌がらせを受けて――そして、今こうして授業を受けて。ほんと、昨日までと同じ……ほんと、いつも通りで。

 ……やっぱり、ただの夢? ただの、長くておかしな夢? ……もう、二度と――


「…………あれ?」
「ん、どうかしたか沢山さわやま
「……あ、その……」

 ふと声を洩らした私に、不思議そうに首を傾げ尋ねる先生。……いや、どうかしたも何も――

「……あの、先生。確か、今日は昨日の――源氏物語の続き、ですよね? なのに、どうして――」
「……? いや、ちょっと待ってくれ沢山」

 そう尋ねるも、なおも不思議そうな表情を浮かべたままの先生。そして、


「……源氏物語って、なんだ?」





「…………へっ?」


 ふと、ポツリと呟く。そんな私の視界に映るは、一面に広がる白。でも、見慣れた家の天井ではなく――


「――おお、待っておったぞ帆弥よ!」
「……へ?」

 すると、ふと響いた久方ぶりの――それでいて、すっかり聞き馴染みのある声。ゆっくり視線を向けると、そこには――


「……実はのう、ほのみん。以前、お主に書き換えてもらった源氏物語の世界なのじゃが……わしとしては頗る楽しかったのじゃが、どうにも本作もとに戻らなくなってしまってのう。じゃから、いったん元に戻すべくお主に再び来てもら――」
「ハードルが高すぎるわ!!」







 
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