噂によると、女性がお嫌いとのことですが――それって、私も含まれていますか?

暦海

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「…………そう、ですか」

 そうお伝えるすると、些か呆気に取られた表情で呟く外崎とざき先輩。かの噂を、私が知っていたこと――に対してでなく、それを私があまりに平然と口にしたことに対する驚きなのでしょう。


『――――女嫌い』


 ――それが、校内ほぼ全域に浸透している彼に関する噂。……まあ、そもそもこんな情報こと――たかだか一個人の他愛もない情報ことが周知となっている時点で、当校における彼の存在が如何ほどであるか窺い知れるというものです。


「……それで、それをご承知の上で僕に告白なさったわけですか」

 すると、ややあって少し呆れたような表情でそう口にする外崎先輩。まあ、そうなりますよね。

「……ですが、真摯な想いにはなるべく誠実にお答えしたいとは思っています。申し訳あ――」
「――ああ、少々お待ちいただけますか?」
「……へっ?」

 呆れつつも、真摯な表情で答える先輩の言葉をとどめる私。……やはり、優しい方ですね。思い切ってお伝えして良かったです。ともあれ、彼の疑問に答えるべく徐に口を開いて――


「――もし宜しければ、私を利用しませんか?」
「…………どういう、ことでしょう……?」

 そんな私の問いに、先ほど以上に唖然とした様子で尋ね返す先輩。私は少しだけ頷き、再び口を開いて――


「女嫌い――そのような噂があまねく浸透しているにも関わらず、告白する生徒が後を絶たない……そのような状況に、貴方は嫌気が差しているのではありませんか?」
「……それは」
「なので、私をいわば女避けに利用すれば宜しいかと。自分で言うのも何ですが、容姿には多少なりとも自信がありますし、既に周囲からも一定を評価を得ています。三年生の間でも、多少なりとも私のことを耳にする機会があるのではないでしょうか」
「…………」

 そう伝えると、少し顔を逸らし口を結ぶ先輩。それから、少し間があった後――

「……いえ、そういうわけにはいきません。僕の身勝手な都合で、貴女を巻き込むわけにはいきませんから」

 そう、ゆっくりとした口調で告げる。……まあ、やはりそうなるでしょう。貴方は、そういう人ですから。なので――


「――それでは、ちょっとした契約をしませんか?」
「…………契約?」

 些か唐突とも思える私の発言に、呆然とした表情で呟く外崎先輩。……まあ、先ほどからほぼ唐突な発言ことしか言っていない気もしますが、それはともあれ――

「ええ、契約です。一定期間、お試し期間として交際をします。そして期限に達した際、双方が延長を望まなければ交際は終了――それ以降、互いに必要以外には決して干渉しない、というものです。如何でしょうか?」
「…………」

 そう伝えると、口を真一文字に結び私をじっと見つめる先輩。それから、ややあって――


「……分かりました、八雲さん。それでは、期間は如何いたしま――」





「――ひとまず、一歩前進といったところでしょうか」


 それから、数時間経た宵の頃。
 自宅の部屋から、玲瓏れいろうたる月をぼんやり眺めながら呟く私。何のお話かと言うと、もちろん本日の放課後のこと――外崎先輩と、めでたく恋人となれたことについてです。……まあ、現段階の私達を恋人と呼んで良いのかについては、些か懐疑的ではありますが。

 ところで、肝心の契約期間についてですが――ひとまず、三ヶ月ということになりました。繰り返しになりますが、この期間に達した際、いずれかが延長を望まなければ終了――そして、それ以降は互いに必要以上の関わりを持たないという取り決めになっています。

「……さて」

 そう、ポツリと呟く。言わずもがな、大切なのはここから。そもそも、彼がこの話――の契約を受け入れてくださったのは、恐らく私のため。私の心中なかに一切の未練を残すことなく、彼に対する想いを断ち切るためにこの話を受け入れてくださったのでしょう。例え遠回りでも、この方が私にとって良い――きっと、そのように考えてくださったのでしょう。

 そして、それは即ち――彼の中では、既に確固たる答えが出ているということ。私のことを好きになることはないという、確固たる答えが。それを覆すことは、恐らく――いえ、間違いなく並大抵のことではなく。……まあ、そもそも女性嫌いですし。本来なら、このお話を受けてくださっただけでも奇跡というものです。まあ、そういうわけで――


「……さて、頑張りますか」


 

 

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