13 / 18
よくあるご相談?
しおりを挟む
「――いらっしゃいませ、優星さん、双葉さん! 今日もお越しくださりありがとうございます!」
「おはようございます、琴水さん。こちらこそ、いつもありがとうございます」
「おはよ、琴水ちゃん。いつもありがとね」
鮮やかに紅葉が山中を彩る、ある爽やかな秋の朝。
開店からほどなく、今日も明るく元気にお迎えをする私。すると、いつものように柔らかな笑顔で応えてくださる美男美女のお客さま。二ヶ月ほど前、めでたくお付き合いを始めた優星さんと双葉さんで。ふふっ、本日も仲睦まじくて何よりです。
――カランコロン。
「――いらっしゃいませ、お客さま! ご来店ありがとうございます!」
それから、およそ一時間後。
そう、明るく元気にご挨拶をする私。恐らくは10代後半くらいの、華やかな茶色の髪を纏う可愛らしい女性へと。……まあ、恐らくは歳上の方に対し可愛らしい、などというのは失礼なのかもしれませんが、率直に申し上げるとそのような印象で――
「――あの……実は、虜にしたい人がいるんです!」
そんな懸念の中、開口一番前のめりにそう口になさる女性。ですが、驚くことではありません。この手のご相談は珍しくない――というより、最も多いご相談の一つですから。なので、
「……想い人がいらっしゃる、ということですね?」
「はい! 彼との出逢いは、かれこれ三年一ヶ月五日前のことで――」
すると、満面の笑顔でその男性との馴れ初めをお話しになるお客さま。別に聞いてもいないのに、などと思ってはいけません。好きな人のことを誰かにお話ししたくなるのは全く以て自然の摂理なのです。私だって、いつだって斎月《いつき》さんのお話をしたくて仕方が……まあ、それはいったん措くとしまして。
「……それは、とても素敵なお話ですね。お客さまのお気持ち、とてもよく分かります。それでは、その素敵な男性にお気持ちを伝える後押しを――」
「……えっと、後押しといいますか……その、何というか……惚れ薬? みたいなものがあればなぁと」
「……惚れ薬、ですか……」
すると、私の言葉に被せる形でご希望を口になさるお客さま。……なるほど、そのパターンですか。惚れ薬という表現でなくとも、そういった魔法のような効果を期待してご相談なさるお客さまも今までにいましたのでこれまた驚くことではありません。なので――
「……大変申し訳ありません、お客さま。ご希望に沿う形で、とはならないかもしれませんが……それでも、お客さまの想いが叶うよう誠心誠意努めさせていただきます」
「おはようございます、琴水さん。こちらこそ、いつもありがとうございます」
「おはよ、琴水ちゃん。いつもありがとね」
鮮やかに紅葉が山中を彩る、ある爽やかな秋の朝。
開店からほどなく、今日も明るく元気にお迎えをする私。すると、いつものように柔らかな笑顔で応えてくださる美男美女のお客さま。二ヶ月ほど前、めでたくお付き合いを始めた優星さんと双葉さんで。ふふっ、本日も仲睦まじくて何よりです。
――カランコロン。
「――いらっしゃいませ、お客さま! ご来店ありがとうございます!」
それから、およそ一時間後。
そう、明るく元気にご挨拶をする私。恐らくは10代後半くらいの、華やかな茶色の髪を纏う可愛らしい女性へと。……まあ、恐らくは歳上の方に対し可愛らしい、などというのは失礼なのかもしれませんが、率直に申し上げるとそのような印象で――
「――あの……実は、虜にしたい人がいるんです!」
そんな懸念の中、開口一番前のめりにそう口になさる女性。ですが、驚くことではありません。この手のご相談は珍しくない――というより、最も多いご相談の一つですから。なので、
「……想い人がいらっしゃる、ということですね?」
「はい! 彼との出逢いは、かれこれ三年一ヶ月五日前のことで――」
すると、満面の笑顔でその男性との馴れ初めをお話しになるお客さま。別に聞いてもいないのに、などと思ってはいけません。好きな人のことを誰かにお話ししたくなるのは全く以て自然の摂理なのです。私だって、いつだって斎月《いつき》さんのお話をしたくて仕方が……まあ、それはいったん措くとしまして。
「……それは、とても素敵なお話ですね。お客さまのお気持ち、とてもよく分かります。それでは、その素敵な男性にお気持ちを伝える後押しを――」
「……えっと、後押しといいますか……その、何というか……惚れ薬? みたいなものがあればなぁと」
「……惚れ薬、ですか……」
すると、私の言葉に被せる形でご希望を口になさるお客さま。……なるほど、そのパターンですか。惚れ薬という表現でなくとも、そういった魔法のような効果を期待してご相談なさるお客さまも今までにいましたのでこれまた驚くことではありません。なので――
「……大変申し訳ありません、お客さま。ご希望に沿う形で、とはならないかもしれませんが……それでも、お客さまの想いが叶うよう誠心誠意努めさせていただきます」
0
あなたにおすすめの小説
下宿屋 東風荘 7
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆
四つの巻物と本の解読で段々と力を身につけだした雪翔。
狐の国で保護されながら、五つ目の巻物を持つ九堂の居所をつかみ、自身を鍵とする場所に辿り着けるのか!
四社の狐に天狐が大集結。
第七弾始動!
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆
表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。
【完結】あやかし団地 管理人見習い日誌
双月ねむる
キャラ文芸
就活全滅で「自分には社会性がない」と思い込む凛は、遠縁の親戚に紹介され、昭和レトロな巨大団地・さくらヶ丘第一団地の『管理人見習い』として住み込みで働くことに。しかしその団地には、中庭の「靴鳴らし」、エレベーター表示盤に棲む狐など、団地限定あやかし達が当たり前のように暮らしていた。
最初は逃げ腰の凛だったが、すねた空き部屋や、ベランダの風鈴が告げるSOSなど、人とあやかしのトラブルに巻き込まれながら、少しずつ『共同体』に関わる勇気を取り戻していく。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
黄泉津役所
浅井 ことは
キャラ文芸
高校入学を機にアルバイトを始めようと面接に行った井筒丈史。
だが行った先は普通の役所のようで普通ではない役所。
一度はアルバイトを断るものの、結局働くことに。
ただの役所でそうではなさそうなお役所バイト。
一体何をさせられるのか……
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー
i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆
最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡
バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。
数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる