目が覚めたら女神で、夫が何人もいるらしくて、優しいお医者さんに恋慕われていて

りりっと

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25 出立

25-①

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 アンヘルとカルティエの喧嘩が終わったあと。
 アンヘルに軽く診察を済ませてもらったリリュームは、話をするためにカルティエを自室へと呼んだ。ついでに、彼の望み通り今晩は一緒に眠ろうかと思っていた。


「俺は床で寝るので大丈夫です」
「ええっ、そんな、床でなんか寝させられないよ!」
「俺と一緒に眠るにはベッドが小さいですから」


 カルティエの身体の大きさでは、確かに並んで寝るのは難しいだろう。一緒に眠りたければ、かなりくっついて寝る必要がありそうだ。
 一階にあったソファでも持ってきてもらおうか。そんなふうに真剣に寝床について悩んでいると、そんな彼女をじっと見つめていたカルティエは唐突にこう言った。


「リリューム様はあの男を新しい夫にするつもりですか」
「で、えぇえっ……!?」


 予想外の爆弾発言に、リリュームは動揺を隠せずに出してしまう。だがカルティエがそんな質問をしてくるのも、無理もない話であった。


「ど、どうしてそう思ったの……?」
「……リリューム様はあいつがお好きでしょう」
「え、っと」
「勘ですが、セックスもしましたね」


 冷や汗を滲ませていれば、それに気づいたカルティエは目を丸くする。怒っていると勘違いされた、そう思ったのかなんとか穏やかな表情を作ると、ベッドに座るリリュームの隣に腰をかけた。


「怒ってはいません。嫉妬はしますが」
「そうだよね、嫌だよね」
「やっぱり変わりませんね。俺が他の夫の話をすると、貴女はよくそんな反応をしていました」


 記憶があった頃のリリュームも一妻多夫には思うところがあったようだ。変わらないと言われたことに安堵するべきか呆れるべきか、分からず彼女は項垂れた。


「貴女の他の夫とはほとんど関わりがないですし、俺と比べるまでもなく偉大な人たちばかりでしたから。あまり意識したことはありませんでした」
「でも、アンヘルは別?」
「……そうですね」


 どこか含みがある様子でカルティエは頷く。きっと彼の目から見てアンヘルは、他の偉大な夫たちとは違う、平凡に寄った人間に見えてしまうのだろう。


「どうしてあの男なんですか?」
「どうしてって言われても……ただ、真っ直ぐ患者さんと向き合うアンヘルの姿が、素敵だと思ったから」
「ふーん……」


 気の抜けた返事をしつつ、カルティエは甘えるように抱きついてくる。それを受け止めて頭を撫でていると、嫉妬心を可愛らしく表情で主張してくる彼に不覚にもグッときてしまう。


「ああでも、今の私は記憶がないから……新しい夫とか、そんなのは決められないよ」
「そうでしょうか。今の貴女が好きだというなら、多分前のリリューム様でも同じだったと思いますよ」
「そうかな……アンヘルとはね、記憶がある頃に一度会ったことがあるんだって」


 そう言えば、カルティエは片眉をあげて疑わしい、という反応をする。そしてそのままずるずると身体を倒すと、リリュームの膝に頭を預けた。


「やっぱり、あの男は信用しないほうがいいと思います」


 やはりアンヘルが気に入らないらしいカルティエに、彼女は聞きたいと思っていた質問を口にした。


「ね、さっきアンヘルが気に入らない理由が分かったって言ってたよね。理由、教えてくれない?」


 優しく髪を撫でていると、気持ち良さげにカルティエは目を細める。そんな中、彼は端的に言葉を吐き出した。


「同族嫌悪です」
「同族嫌悪……?」


 正直、カルティエとアンヘルはあまりにも似ていない。お医者さんと元盗賊なのだから尚更そう思ってしまう。
 するとカルティエは身体を起こす。どうしたのかと思えば、リリュームを抱きしめた彼はそのまま眠るようにベッドへと転がった。


「それで、どうしますか」
「どうしますかって?」
「今晩」


 甘い声でそう囁かれ、彼女はびくりと肩を震わせてしまう。じわじわと顔が熱くなるのを感じていれば、小さくカルティエの笑い声が聞こえてきて耳元にキスをされる。


「ま、また今度で……」
「ふ……そうですね、まだ機会はありますし。……リリューム様のお可愛い声が外に聞こえてしまうかもしれませんから」
「やっぱり場所を弁えよう……!」


 慌ててそう言うと、カルティエは柔らかく微笑み、リリュームの唇を塞いだ。

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