【完結作品】『インテグレイト・オブ・ソード 時空の暗殺者』

憩 い

　オリオンと別れた後、ヒロ達は安い宿を探して宿泊する事した。宿泊費を浮かす為にアウラ達は仔犬の姿で泊まる事にしたが、結局標的であったオリオンと顔見知りになってしまったので、目立たないようにと気を使っていた事が馬鹿らしくなったというのが本音であった。部屋は二部屋借りて、一つの部屋にヒロ、もう一つの部屋にカルディアとアウラ、カカ、そしてイオが泊まる事になった。
　ヒロにしてみれば、アウラ達の誰かを自分の部屋に寝かせればと提案したのだか、アウラ達の話が纏まらないのと、カルディアが激しく反対したのでこの部屋割りとなってしまったのだ。
　ヒロは一人ベッドの上に寝転び天井を見つめる。

(オリオン王子……、あの男を殺すのが俺の使命……)それは十分に理解している。しかし、今日出会った彼に対してヒロは好感を抱いてしまった。殺すべき相手に情を持つなど暗殺者にとって致命的であった。それに彼を見逃すと言うことは自分の任務を放棄するという事になる。いわはアサシンとして失格。里の者に追われる身となるであろう。
　元々自分は村八分のように嫌われている身であるからその選択肢も悪くないと考えてみたが、問題はカルディアであった。
　彼女を巻き込む事は出来ない。自分がオリオンを殺さないということは、彼女も同様に扱われるということであった。それは、彼女にとって酷というものであった。
　やはり、自分にはオリオンを殺すしか道が無いのだと言い聞かせた。

「ヒロ様、お腹が空いたダニ」部屋にイオが飛び込んできた。

「そうだな、部屋に運んでもらうか。そうすればお前達も遠慮せずに食べれるよな」ヒロは食事の手配をしてもらう為に部屋を出た。


「あーお腹一杯になったっちゃ」アウラが嬉しそうにお腹を叩いた。

「そうね、でも昼間の食事には敵わないわね」カルディアも同じようにお腹をポンポンと叩いた。

「あのお肉……、美味しかったのです～」カカも思い出したように呟いた。

「あれは相当上等なものだったからな。まあ、二度とあんな料理は食えないだろうな」ヒロは笑いながら皿をまとめる。

「ねえ、このあとお風呂に行かない？大きな露天風呂があるらしいわよ」カルディアは汚れた体を綺麗に洗いたかった。

「いいダニ！！イオはヒロ様と一緒に入りたいダニ！！」イオはそういうとヒロの腕に絡み付いた。

「だ、駄目よ！そんなこと！男女七歳にして席を同じうせずよ！」カルディアは立ち上がりイオを叱った。

「だって、イオはまだ一歳ダニ！！」

「それは、犬の年齢でしょ！どう見ても身体は十二才位に見えるわよ！」カルディアは顔を真っ赤にしている。

「いや、俺は別に構わない……」ヒロは別にイオと風呂に入る事に抵抗を感じていない様子であった。

「駄目！！」カルディアはヒロの顔を睨み付けた。「ほら、行くわよ！！」カルディアはイオの襟首を掴むと引っ張っていった。「あーん、ヒロ様～」アウラとカカも一緒に風呂に行ったようであった。

「はあ……」ヒロは大きくため息をついた。