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覚 醒
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カルディアが目を覚ました。腕は完全に回復しておらず元に戻るには少し時間がかかるそうであった。ただ、アルゴスに真っ二つに切られた筈の腕が元に戻っている事は驚愕する出来事であった。
まさかアウラ達にこんな力が有るとは思ってもみなかった。もしも、彼女達がいなければ今のカルディアとのこの時間は無かったであろう。
カルディアもイオにその命を助けられた事を聞くと大粒の涙を流しながら彼女を抱きしめた。
「ありがとうね。アウラちゃん、カカちゃん、イオちゃん」カルディアは心の底から感謝しているようであった。
オリオンと交わした会話をヒロは彼女に話した。それを聞いて彼女は安堵の表情を浮かべた。また、別のアサシンがオリオンとヒロ達を狙ってくるだろうが、彼と一緒であれば何とか出来るような気がした。
カルディアが元気になった事を確認すると、後の世話をアウラ達にお願いしてヒロは自分の部屋に戻り休む事にした。
部屋の扉を開けて、ベッドに飛込み仰向けになり天井を見つめる。オリオンの暗殺を決意したあの夜とは全く違う安らぎの日であった。
トン!トン!
ドアをノックする音がする。
「鍵は空いてるぞ」どうせアウラ達の誰かだと思い寝転んだまま返答をする。
「夜分遅くに少しだけいいかい?」それはオリオンであった。
「あっ、オリオン様!」ヒロは顔を真っ赤にして飛び起きる。「どうかされたのですか?」身なりを整えるようにヒロは髪型を整える。
「いや、ヒロ君と戦った時に気になる事があってさ。確か君は術式が使えないと言っていたよね」ヒロはオリオンと戦った時に、彼の脇腹に掌を当てた。あの時に術式で攻撃をすれば間違いなくヒロの勝利であったであろう。だが、ヒロは昔から術式は苦手で一度も成功したことがなかった。カルディアと比較して完全に劣等生であった。
「ちょっと、そこに腰をかけて後ろを向いてくれるかい?」
「あっ、はい……」ヒロは言われるままに、椅子に座りオリオンに背中を向けた。
「いいかい、背中を触るよ」そう告げるとオリオンはヒロの背中に掌を当てる。
「あっ……」なにか暖かい温もりを感じてヒロの心臓の鼓動が少しだけ早くなったような気がした。
「やはり……、そうだったんだ」オリオンは何か調べていた問題が解けた時のような声をだした。
「どうしたんですか?」ヒロはなぜか赤らんだ顔を隠すように前を向いたまま聞いた。
「いや、君は術式が使えないと言ったがあの男を切り裂いた時、あれは途方もない力が作用していた。とても術式が使えない者が扱える技では無かった」オリオンは右手を顎に添えて話を続ける。「君の術式は、誰かの手によって意図的に封印されているようだ。なにか心当たりはないのか?」オリオンが質問してくる。意図的に自分の力を封印する者。
ヒロは幼い頃より、爺ことネーレウスと大半の時間を過ごして来た。そして初めて外部の人間と接したのはカルディアだけであった。ヒロが術式が使えないのは、初めから物心ついた時からそんな物には無縁であった。術式というものの存在を知ったのはカルディアとの修行が始まってからだったと思う。ということは、カルディアと修行をする事がなければずっと術式の事を知らなかったかもしれない。だとするとヒロの術式を封印した者。それは一人しか思い当たらなかった。
「爺……」ヒロの頭が混乱する。
「もし良ければだが、僕は君の封印を解いてあげる事が出来るのだが……」オリオンは相変わらず優しい声であった。
「本当ですか!?ぜひ、お願いします!」ヒロは嬉しそうに振り向いた。これまで術式が使えない事がコンプレックスであった。それが使えない事でカルディアの帰った後も一人切り株に手をかざして何時間もじっとしていた、あの時を思い出していた。
「それでは、ベッドの上に仰向けに寝てくれるかい?」オリオンは先程までヒロが寝転んでいたベッドを指差した。
「えっ!?そんなオリオン様の前で……」ヒロはそんな無礼な事は出来ないといいたそうであった。
「気にしないで、大丈夫だから」オリオンの優しい声に誘《いざな》われてヒロはベッドに仰向けに寝転んだ。「それでは目を瞑《つむ》って……」ヒロはオリオンに言われるままに、瞳を閉じた。
「いいかい、手を翳《かざ》すよ」オリオンら言葉通りヒロの胸の辺りに手を翳した。そして彼も目を閉じてボソボソと呪文を唱えた。そして念を込めるように眉間にシワを寄せた。
ヒロは温かい液体の中に浮かんでいるような感覚になっていた。なぜか、懐かしいような夢のような記憶が流れ込んでくる。
目の前に映る少女。黒い髪、赤い唇、白い肌。白い上着に首元には結ばれた赤い布、黒い腰巻きが膝上までを隠している。足元には白い足袋をはいている。
「ヒロ○!早くしなさい!ヒロ○!」その声が愛しく感じる。
どれだけの時間を眠っていたのであろうか。目を覚ますと部屋の中に朝日の光が差し込んでいる。体を起こしてベッドの傍らを見るとオリオンが上半身をベッドに乗せたまま眠っている。その寝顔を見てヒロの顔から自然と笑顔が溢れた。
「オリオン様、オリオン様」ヒロは優しい声でオリオンに声をかけた。
「う、ううん、あっ、おはよう」オリオンは眠たそうに目を擦った。「どうやら眠ってしまったようだ」彼は大きく手を上げて欠伸をした。
「昨晩はありがとうございました」ヒロは丁寧にお礼を言う。
「ああ、一応記術式の封印は解けた筈だ。少しずつ試すと良い。君の中の力は僕が思っていたよりもずっと凄いものだった。一気に解放しないようにだけ気をつけるんだよ」オリオンは微笑む。
「はい、気をつけます」ヒロは汐らしく返答をした。もしも、カルディアがヒロのこの様子を見たら驚いたであろう。
まさかアウラ達にこんな力が有るとは思ってもみなかった。もしも、彼女達がいなければ今のカルディアとのこの時間は無かったであろう。
カルディアもイオにその命を助けられた事を聞くと大粒の涙を流しながら彼女を抱きしめた。
「ありがとうね。アウラちゃん、カカちゃん、イオちゃん」カルディアは心の底から感謝しているようであった。
オリオンと交わした会話をヒロは彼女に話した。それを聞いて彼女は安堵の表情を浮かべた。また、別のアサシンがオリオンとヒロ達を狙ってくるだろうが、彼と一緒であれば何とか出来るような気がした。
カルディアが元気になった事を確認すると、後の世話をアウラ達にお願いしてヒロは自分の部屋に戻り休む事にした。
部屋の扉を開けて、ベッドに飛込み仰向けになり天井を見つめる。オリオンの暗殺を決意したあの夜とは全く違う安らぎの日であった。
トン!トン!
ドアをノックする音がする。
「鍵は空いてるぞ」どうせアウラ達の誰かだと思い寝転んだまま返答をする。
「夜分遅くに少しだけいいかい?」それはオリオンであった。
「あっ、オリオン様!」ヒロは顔を真っ赤にして飛び起きる。「どうかされたのですか?」身なりを整えるようにヒロは髪型を整える。
「いや、ヒロ君と戦った時に気になる事があってさ。確か君は術式が使えないと言っていたよね」ヒロはオリオンと戦った時に、彼の脇腹に掌を当てた。あの時に術式で攻撃をすれば間違いなくヒロの勝利であったであろう。だが、ヒロは昔から術式は苦手で一度も成功したことがなかった。カルディアと比較して完全に劣等生であった。
「ちょっと、そこに腰をかけて後ろを向いてくれるかい?」
「あっ、はい……」ヒロは言われるままに、椅子に座りオリオンに背中を向けた。
「いいかい、背中を触るよ」そう告げるとオリオンはヒロの背中に掌を当てる。
「あっ……」なにか暖かい温もりを感じてヒロの心臓の鼓動が少しだけ早くなったような気がした。
「やはり……、そうだったんだ」オリオンは何か調べていた問題が解けた時のような声をだした。
「どうしたんですか?」ヒロはなぜか赤らんだ顔を隠すように前を向いたまま聞いた。
「いや、君は術式が使えないと言ったがあの男を切り裂いた時、あれは途方もない力が作用していた。とても術式が使えない者が扱える技では無かった」オリオンは右手を顎に添えて話を続ける。「君の術式は、誰かの手によって意図的に封印されているようだ。なにか心当たりはないのか?」オリオンが質問してくる。意図的に自分の力を封印する者。
ヒロは幼い頃より、爺ことネーレウスと大半の時間を過ごして来た。そして初めて外部の人間と接したのはカルディアだけであった。ヒロが術式が使えないのは、初めから物心ついた時からそんな物には無縁であった。術式というものの存在を知ったのはカルディアとの修行が始まってからだったと思う。ということは、カルディアと修行をする事がなければずっと術式の事を知らなかったかもしれない。だとするとヒロの術式を封印した者。それは一人しか思い当たらなかった。
「爺……」ヒロの頭が混乱する。
「もし良ければだが、僕は君の封印を解いてあげる事が出来るのだが……」オリオンは相変わらず優しい声であった。
「本当ですか!?ぜひ、お願いします!」ヒロは嬉しそうに振り向いた。これまで術式が使えない事がコンプレックスであった。それが使えない事でカルディアの帰った後も一人切り株に手をかざして何時間もじっとしていた、あの時を思い出していた。
「それでは、ベッドの上に仰向けに寝てくれるかい?」オリオンは先程までヒロが寝転んでいたベッドを指差した。
「えっ!?そんなオリオン様の前で……」ヒロはそんな無礼な事は出来ないといいたそうであった。
「気にしないで、大丈夫だから」オリオンの優しい声に誘《いざな》われてヒロはベッドに仰向けに寝転んだ。「それでは目を瞑《つむ》って……」ヒロはオリオンに言われるままに、瞳を閉じた。
「いいかい、手を翳《かざ》すよ」オリオンら言葉通りヒロの胸の辺りに手を翳した。そして彼も目を閉じてボソボソと呪文を唱えた。そして念を込めるように眉間にシワを寄せた。
ヒロは温かい液体の中に浮かんでいるような感覚になっていた。なぜか、懐かしいような夢のような記憶が流れ込んでくる。
目の前に映る少女。黒い髪、赤い唇、白い肌。白い上着に首元には結ばれた赤い布、黒い腰巻きが膝上までを隠している。足元には白い足袋をはいている。
「ヒロ○!早くしなさい!ヒロ○!」その声が愛しく感じる。
どれだけの時間を眠っていたのであろうか。目を覚ますと部屋の中に朝日の光が差し込んでいる。体を起こしてベッドの傍らを見るとオリオンが上半身をベッドに乗せたまま眠っている。その寝顔を見てヒロの顔から自然と笑顔が溢れた。
「オリオン様、オリオン様」ヒロは優しい声でオリオンに声をかけた。
「う、ううん、あっ、おはよう」オリオンは眠たそうに目を擦った。「どうやら眠ってしまったようだ」彼は大きく手を上げて欠伸をした。
「昨晩はありがとうございました」ヒロは丁寧にお礼を言う。
「ああ、一応記術式の封印は解けた筈だ。少しずつ試すと良い。君の中の力は僕が思っていたよりもずっと凄いものだった。一気に解放しないようにだけ気をつけるんだよ」オリオンは微笑む。
「はい、気をつけます」ヒロは汐らしく返答をした。もしも、カルディアがヒロのこの様子を見たら驚いたであろう。
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