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王の死

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「王よ」ハーデスが王の部屋を訪ねる。

「こんな時間に何のようだ?」王は鬱陶しそうに聞く。

「実は、オリオン王子が不審な行動を……」言いながらハーデスは王に近づく。

「何!オリオンが!?うっ!!」王の胸に短剣が突き刺された。それは、オリオンの所有するものであった。「き、貴様は!!」王の体から血しぶきが吹き上がる。ハーデスは王の声が漏れないように口を手でふさいだ。
 王の体から次第に力が抜けていき、ついには動かなくなってしまった。

「衛兵!衛兵よ!!王が!王が!!」突然、ハーデスが大きな声をあげる。その声を聞き男が二人飛び込んできた。

「こ、これは!一体!!」絶命している王の姿に衛兵は動揺する。

「これはオリオン王子の仕業だ!王の胸の短刀は王子の所有物だ!!私が部屋に訪れた時に、窓から飛び出す人影を見た!きっとオリオン王子だ」ハーデスは大袈裟に声をあげる。

「オリオン王子の部屋を確認するのだ!」衛兵達が部屋を飛び出す。

「なんだ!この騒ぎは!?……ち、父上!」騒ぎを聞き付けたグラウコスが飛び込んできた。王の亡骸を見て驚きの声をあげる。

「オ、オリオン様の姿が見当たりません!!」衛兵が慌てて報告をする。

「地下だ!きっとあのオリハルコンの女を連れ出すつもりだ!オリオン王子を捕まえるのだ!抵抗すれば殺しても構わん!!」ハーデスが衛兵に命令する。

「解りました!!」衛兵達は、部屋を飛び出して伝令に向かった。

「兄上が!!」グラウコスは両肩を激しく震わせた。

 その様子を見てハーデスは、ほくそ笑んでいた。
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