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あなたが守って

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 オリオン達は城下町の民家の中にいた。この家は、幼い頃よりオリオンが城を抜け出しては一緒に遊んでいたリュキアという我が物顔の家であった。リュキアはすでに結婚していて妻がいる。リュキア達は傷ついたヒロをベッドに寝かせてくれた。ヒロも安堵の表情を浮かべてぐっすり眠っている。

「オリオン様……、あなたは初めからヒロの術式を利用する為に、私達に近づいたのてすか……」カルディアが改めて問い詰める。

「いや、確かに城から旅立つ時にそのような事は言われたが、オリハルコンなどというものが本当に存在するかどうかは眉唾であった。僕はただ、城の外の世界を見たいだけだった。ただ、ヒロの力を解放し、あのオリハルコンの剣を見た時は驚愕した、そして怖かった。このような物が存在するなんて……、父に知れたらきっと、いくさに使われるのではないかと……」オリオンは机の上に腕組をする。

「では、どうして私達を城に……連れてきたのですか!」カルディアは、今もヒロが傷つけられた事に怒りが治まらないようである。

「それは……、僕の甘えだ。僕はヒロと別れたくなかった……。出来るのであれば……、ヒロと結ばれたいと思った……、僕の妻として……」オリオンは懺悔の言葉でも語っているようであった。

「ヒロと結ばれたいって……、結婚するってことですか!?王族の貴方とアサシンだったヒロが……!そんな事出来る訳が無いでしょう!それに、あなたにはあのカシオペアっていう婚約者がいたではないですか!!」カルディアは机を叩きながら立ち上がる。

「カルディアさん……でしたっけ、落ち着いてください」それは家の主であるリュキアの言葉であった。「オリオン様……、いや、オリオンはそんな男ではない。子供の頃より一緒に育ってきた俺が一番知っている。この男は王族とそれ以外の人々を差別したりはしない。この農民である俺を対等に扱ってくれた。逆に特別扱いをして、喧嘩になってしまったほどだ。オリオンが愛したのであれば、その娘がアサシンであろうが農民であろうが関係はないだろう。この男があの娘を愛したのであれば、その王族の身分を捨ててでも、この男は貫くだろう。そういう男だと俺は思う」リュキアはオリオンを悪く言われることが許せなかったのであろう。割り込むように口を挟んだ。

「リュキア、ありがとう。でも、僕はカルディアに責められても仕方がない。ヒロをあんな目に合わせたのは……、そうだ……僕のせいなんだ!」オリオンは感情を圧し殺すように拳を握りしめる。カルディアはそのオリオンの姿を見て、ヒロの事を本当に愛していることを嫌でも知らされる事になった。

「私はずっとヒロが好きでした。そう、今も本当は好きなんです……。でも、ヒロを幸せに出来るのはオリオン様しかいないと思います。だから、ヒロをこれ以上傷つけないで……、あなたがヒロを守ってください」カルディアは大粒の涙を流しながら泣いている。

「ありがとう。カルディア」オリオンは深々と頭を下げた。

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