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ドラゴン

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 オリオンがベッドの上に眠っている。それを心配そうにグラウクス国王、カシオペア、そして、少し離れてカルディア達が見守っている。イオが治癒術式でオリオンの体を癒している。

 イオのこの術式は何度も使っているうちに、その能力が向上したようで、キズが治る時間もかなり短縮出来るようになったようだ。城の術式を使う医師達がその飛び抜けた能力を見て舌を巻いたそうだ。

「ヒ、ヒロは……」オリオンが口を開いた。第一声はヒロを心配する言葉であった。

「ヒロ様は、何処に行ったか解りません」グラウクス国王が告げる。

「そ、そうだ!ヒロはドラゴンに連れて行かれた!助けに行かないと!……うっ!!」まだ背中が痛むようである。

「オリオン様……、本当にドラゴン、ドラゴンを見られたのですか……?」後ろに控えていたカルディアが口を開く。

「そうだ、あの時、急に真っ暗になった瞬間宙から大きなドラゴンの頭が飛び出し僕の背中を爪で引き裂くと、ヒロの体を咥えて姿をけしたんだ……」オリオンは悔しそうに自分の膝の辺りを思いっきり叩いた。

「そ、そんなドラゴンだなんて……」

「カルディア様は何かをご存知なのですか?」グラウクス国王が訪ねる。ハデスとの一件以来、ヒロとカルディアへの対応が大きく変わった。特にヒロの事を皆、女神のように崇めていた。

「アサシンの里では、皆に使い魔が与えられます。私には狼、そしてある者には蜘蛛、ある者には獅子、でも、私の知る限り龍を使い魔にした者は他にはいない筈なのです……」カルディアは体を震わせている。

「誰なんだ、その者は?」オリオンはカルディアを問いただすように聞く。

「龍を使えるのは、私の師匠……、そしてヒロの育ての親……、ネーレイウスだけです」カルディアはその名を呟いた。

「いや、しかし、ネーレイウスと云う男はたしか……!?」

「ええ、亡くなっています。私達は彼の死体も見ました」カルディアは両手を強く握りしめた。

「死んだ事は偽りで実は生きていたと云うことか……」オリオンはヒロの救出方法を検討したが、手がかりを掴む事は出来なかった。

 ネーレイウスもいう男の所在も解らないままであった。
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