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アキト

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「失態だな。アキト」如月の家を出ていつもの川橋の下でヤツの声がする。

「仕方ないだろう。試合の事がバレてたんだから…。それに、上手くすれば誤魔化せるだろ」俺は鞄のチャックを開けた。中から黒く小さな人影が飛び出して俺の肩に飛び移る。

それは、ギルであった。彼は他のオルナスとは違い自我をもった存在なのだ。

「だいたい、試合に出たいって言い出したのはギルだろ!俺もあんな恥ずかしいコスプレみたいなことさせられて…、結局、正体バレてるし…」あの試合の時に着ていたフード姿を思い出すとなにやら恥ずかしい気がした。

「それは…、私がこの体でどの位戦えるのか試して見たかったからだ」ギルの声は少しきまずそうな感じに聞こえた。

「でも、優勝はやり過ぎだったんじゃねえの」いつも腰掛ける少し大きな石の上に、座る。

「やるからには負けるわけにはいかないのだ、私の誇りにかけて!」ギルは心なしか胸を張っている。まあ、コイツが本当に試合に出た理由は解っているのだが…。

「とうしよう。やっぱり断るか?」

「そんなことをして、他の物に私の事を話されたら拙い。厳しい練習をさせて自信喪失させれば良いだろう」ギルは自信満々に言うがそんなに上手くいくとは思えなのだいが…。

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