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楽しい時間

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「ねえ、こんなのどうかしら?」美鈴はノートパソコンを覗き込むと俺が掴むマウスの上に手を重ねてきた。

「ちょ、ちょっと…」俺は顔を真っ赤にして彼女の顔をみる。画面をまっすぐに見つめる美鈴との顔の距離は数センチしかなかった。

「リンには格闘系の武器が良いと思うの、カイザーナックルみたいな」ニヤリと微笑む。それは少し狂喜に満ちた顔に見えた。

次のバトルカーニバルでは、武器の使用が認められているそうである。格闘によってオルナスが負傷しても、主催者側は一切責任を負わないと明記されていた。

「重いパーツを追加すると動きが遅くなるよ」俺はマウスの手はそのまま、左手でキーボードを叩く。乗せられた手のひらが柔らかい。

画面には、美鈴の希望するパーツを追加すると、リンの俊敏性が10パーセント低下する事がシミュレーションされている。

「そうなんだ…」残念そうに俺の体にもたれかかってくる。


「ちょっと、美鈴ちゃん…、それは…」心臓の鼓動が激しくなり今にも飛び出しそうな勢いで脈打つ。


「ねえ、アキト…」彼女はゆっくりした口調で俺の名を呼ぶ。

「何…?」

「アキトは、したことあるの?」その言葉を聞いた瞬間直立してしまった。もたれかかってくる物が無くなって、美鈴は倒れた。「きゃ!」その瞬間、彼女のスカートの裾がめくれて太股が露わになった。

「そ、そんなの、や、や、や、やった事、ないよ」なぜか視線がベッドのほうに釘付けになる。

「そうなんだ、だったら私とやってみない?」少し微笑みを見せて起き上がりながら、髪を整える。

「ぜ、ぜひ!」燃えたぎる思い!

「やったー!武器戦闘を一度、やってみたかったのよ!」彼女は両手を合わせて嬉しそうにテンションを上げた。

「武器…戦闘…ですか…」冷や水をかけられた雄犬のように、急激に何かが冷めていく。

「ギルが、武器を使っているのを見たことなかったから、そういうのは嫌いナノかなと思って…、ギルなら刀とか似合いそうよね」美鈴は画面に映る武器リストで刀を捜す。

「これ良くない!ギルに似合いそう!!」それは、ギルのボディカラーとよく似た、黒と赤を基調にしたレーザブレードというものであった。

(なんだかお取り込み中のようだが、私は刀も扱えるぞ)ギルの声が聞こえる。

「ああ、そうですか…」俺の刀はなかなか使う事がないようだ。

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