振り返るといつもの君がいたような気がした。僕が助けた少女は有名なシンガーソングライターだった。『君の歌と僕の夢……。』

上条 樹

文字の大きさ
13 / 94

君と展望台

しおりを挟む
「気持ちいい!」美桜と二人で港街に来ていた。初めて乗ったバイクで感激したようで彼女のテンションがうなぎ登りのようであった。

「近くに中華街があるから肉まんでも食べるか?」

「えー、肉まんですか!食べたい」予想以上の喜びように驚く。

 肉まんを購入するとそれにかぶりつきながら、海辺へと向かう。空は晴天で気持ちいい天候だ。
 港には大きな客船が接岸していた。乗船する人々。まるで何かの映画のワンシーンのような錯覚を感じる。二人でその世界に飛び込んだような……。

 赤い展望用のタワーの目の前に立つ。この街のシンボル的な存在である。しかし、こんな間近で見る事は俺も初めてであった。

「うわー、凄い!初めてこんな近くで見ました!本当に大きいんですね」彼女はタワーを見上げている。

「中に入ってみる?」実は俺も入った事がないので興味があった。

「あっ、はい!」彼女は嬉しそうに頷いた。

 入館のチケットを購入する為にチケット売り場にいく。その間、美桜を一人待たせる事となる。

 遠目に見る美桜の姿は華麗であった。
 短いスカートからスラリと伸びた白く長い足。港風にそよぐ黒く綺麗な長い髪。そして端正な顔。まさにその姿は完璧と言っても過言ではないものであった。

「おい、見ろよあの女の子めっちゃ可愛い」
「モデル、いや芸能人じゃねえの」
「声かけてみるか!」
 あちらこちらから美桜を称賛する声が聞こえる。さぞかし、あの娘《こ》の隣に並ぶ俺は滑稽なのだろうと自虐的思考に突入する。

 二人分の入館料金1,400円を支払い中に入る。平日と云うこともあり、館内に人はいない。

 エレベーターで展望台の一番目のフロアに降りる。すでに地上から70メートルほどあるらしく眺望もそれなりに綺麗だ。

「うんうん、美桜ちゃん!そこに立ってごらん」施設の説明を書いてある案内板を読んで少し悪戯してやろうと思った。

「えっ、ここですか?」美桜は疑いもせずに、俺に言われたまま指定された場所に移動した。配置されたセンサーが彼女の気配を察知した。その瞬間、彼女の足下がガラス越しのスケルトン床になった。

「きっーー!!」絶叫のような声で腰を抜かしたように床にへたりこむ。相当驚いた様子であった。……と、彼女の太ももが露になった。

「た、助けて、助けてください!!」半泣きで救出を懇願する。足が震えて動けないようである。

「あははは、ゴメン!ゴメン!」思わず吹き出してしまった。手を差しのべて彼女を引っ張った。

「亮介さん、酷いです……。凄く怖かった……、それに……」顔を真っ赤にして、彼女はなぜか言葉を濁す。

「ん、何?」

「私のパンツ見たでしょう……?」スカートの裾を押さえながら、下から見上げるように詰め寄る。いや、バイク乗るのにそのスカート履いてきたあなたもあなたでしょう。

「あっ……、いや、それは見てない!……絶対に!」慌てて否定をする。疑わしそうな目で俺の顔を見ている。

「もう、知らない……!」少し膨れた顔をして怒ったと思ったが、すぐに笑顔に戻った。

 彼女のパンツを見たかどうかは、俺の永遠の秘密としておくことにする。

 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい

沢尻夏芽
恋愛
 自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。  それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。 『様子がおかしい』 ※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。  現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。  他サイトでも掲載中。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜

野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」   「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」 この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。 半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。 別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。 そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。 学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー ⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。 ⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。 ※表紙絵、挿絵はAI作成です。 ※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
恋愛
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

処理中です...