振り返るといつもの君がいたような気がした。僕が助けた少女は有名なシンガーソングライターだった。『君の歌と僕の夢……。』

上条 樹

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君と黙示録

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「これはどういう事なんですか!?」美桜の手がワナワナと震えている。その口角の辺りも少しだけピクピクと引きつっているように見える。

「えっ!」玄関の扉を開けて、大学の講義にでかけようとしていた俺と昌子はその彼女の様子を見て驚く。

「えーと……、じゃあ、私は先に行くからね!後はヨロシク!」昌子は軽く敬礼のような仕草をすると、玄関を飛び出して行った。いやーん、置いていかないで~!薄情もの~!!

「どうしてこの家に昌子さんがいるんですか!」美桜の目が恐ろしいほどギラギラしている。もはやそれは野獣のように鋭かった。

「いや、あの……」

「どうして朝から、昌子さんが出てくるんですか?」キャー!蛇に睨まれたカエルの気持ちがよく解るよ!

「いや……、実は親父達が仕事の都合で転勤になっちゃてさ。それで、空いている部屋が勿体ないからルームシェアする事になったんだけれど……、その一部屋に昌子が住む事になって……」なぜ、俺はこんなに弁解のように説明せねばならないよか納得がいかないが、彼女の迫力に完全に飲まれている状態であった。

「ルームシェア……!?あっ、これですか!」壁に貼られている、入居者募集のチラシを睨み付けるように見ている。

「だから、何も変な事はないから……」

「変な事ってなんなんですか!?」ギョエー!怖えー!なんですかその迫力は、彼女の意外な一面を見て驚く。彼女は何かを考けるように腕を組んだ。

「み、美桜ちゃん……?」

「決めました……」何かを決意したように、彼女は目を見開いた。

「な、何を決めたの?」既に嫌な予感しかしない。

「決めました。私もここに住みます!」拳を胸の辺りで固く握りしめて宣言する。

「えっ!なんで!あの豪華なマンションあるじゃん!」

「あそこは事務所が借りてくれているんですけど、いつまでもお世話になってる訳にはいかないってずっと思ってたんです。これはきっとそうしろと云う神様のお告げなんです!」いや、そのチラシ書いたの母さんなんだけど……。そうか、ズルいぞ昌子さん、自分だけこんなに安い所に住んでって事か……。

「でも、あのマンションみたいにオートロックもコンシェルジュも居ないぞ。それに木造で少しカビ臭いし、結構古い……」ろくでもない家だ……。

「そんなの気にしません。私の九州の実家も似たようなものですから」あっ、もう住む気満々やこの娘《こ》……。「この電話番号に電話すればいいのですよね」彼女は早速スマホを取り出して電話をかける。なんちゅう、行動力やねん!俺は舌を巻く。「あっ、お久しぶりです……、私、梵《そよぎ》です。……あ、はい……、はい……ありがとうございます。で、今日電話したのはですね……えっ……あっ……あっ、そうです。……ありがとうございます!……それじゃあ、またお電話します!失礼致します!」通話を切ったようだ。

「あれ、引っ越しの件は言わなかったの?」

「いいえ……、お母様が『美桜ちゃんの部屋はちゃんと用意してるから、早く引っ越してきてね』って……」美桜は目を細めて地面を恥じらうように見ている。

「な、なんやって……!?」策略に嵌められた。あの親はこうなることを見越していたのか!なんと云う戦略家なのだ。俺は改めて驚異を感じた。

「亮介さんの……となりの部屋を使って良いって言われました……」なんですと、壁を隔てて元アイドル……ですと!

「いや、美桜ちゃんのご両親にも聞かないと……」そりゃ、独り暮らしの娘がルームシェアって気になるだろ。

「あっ、それも話を既にしているそうです」さっきの通話中身が濃いな!っていうか美桜ちゃんの両親とも知り合いなんですか?うちの親は……?「あの事故の時に、両親もご挨拶に行きましたので……」知らない間に、色々な人間関係が形成されているようであった。

「じゃあ、本当に……」また、住人が増えるのか……。

「亮介さん、不束者《ふつつか》ですがヨロシクお願いします」彼女は素敵な笑顔でニッコリ微笑んだ。ああ、地獄の黙示録。


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