振り返るといつもの君がいたような気がした。僕が助けた少女は有名なシンガーソングライターだった。『君の歌と僕の夢……。』

上条 樹

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君と花火

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「食った!食った!」小野寺社社長は満足気であった。準備には参加しなかったが、食べるのは人一倍食べたようだ。

「食後は、みんなで花火でもしませんか?」大森が大量の花火を用意していたようだ。

「ああ、いいですね!私、花火なんて生まれて初めてです!!」美桜が目をキラキラと輝かせている。最近では公園などでの花火も禁じられていて、なかなか個人レベルで花火をする事がなくなった。俺が小さい頃は、田舎などに行ったときに何度かかろうじて体験したことはあった。

「私は宿に帰って寝るから、火の元には気を付けるんだぞ!」小野寺社長は背を向けて手を上げると大きく欠伸をしてから言葉通り民宿のほうに歩いていった。どうやら片付けも手伝う気はないようであった。

「それじゃあ、片付けをしてからやろうか」そう告げると俺達は早速バーベキューの片づけを始めた。早く花火がやりたいのか、美桜は率先して行動をする。実際の年齢は学校に通っていれば桃子は高校2年生だったはずなので、2歳ほど年下である。ただ、彼女達の行動を見ていると、どうも逆転している錯覚さえする。
 それでもタレントとして美桜の事を尊敬している桃子は、彼女に対しては敬う心を持っているようである。俺に対しては全くない感情のようであるが・・・・・・。

「綺麗!!」一通りの片づけを終えてから花火を開始した。砂場に埋めたドラゴン型花火に点火する宙に向けて火花を噴射する。暗くなった海辺の花火は美しい。結構な量の花火を消化していく。美桜は初めてのこういう花火にテンションが上がっているようである。目がキラキラと輝いている。小さい頃から芸能界で生きてきた彼女にはこういう経験も少なかったのかなと勝手に思っていた。表向きが華やかな世界であるが、結構自由が制限される世界なのだなと最近は感じるようになっていた。ただ、彼女達が所属する小野寺プロは比較的、タレントを拘束することは少なくて自由なのだそうだ。ダークファンタジーから移籍してきた桃子は、あまりにもその方針が違ったので戸惑ったそうだ。考えてみれば、社長同行とはいえ、こんな旅行にタレント達を参加させる事は普通の事務所では考えられない事なのであろう。

「ねえねえ、線香花火しようよ!」昌子が嬉しそうに数本の線香花火を手にしている。そういえば飛んだり火花を散らしたりする花火は子供の頃もよくしたが、線香花火のような物悲しいものはあまりやった事は無かった。

 昌子、桃子、そして美桜はしゃがむと線香花火に火を灯した。ちなみに大森達は離れたところでロケット花火を楽しんでいるようであった。

「綺麗ね・・・・・・」三人の乙女がぱちぱちと弾ける花火を憂いた瞳で見つめている。上から見下ろすと彼女達の胸元に視線が行き恥ずかしくなった。俺も彼女達の視線の高さにしゃがみ花火に火を点けた。

 しばらくすると線香花火は小さな火球に変わり、ポツリと下に落ちた。

「線香花火ってなんだか物悲しいのですね・・・・・・」美桜がつぶやく。

「でも、この情緒がいいのよ」昌子がなぜか人生を悟りきったおばさんのような口調で呟いた。

「それじゃあ・・・・・・、そろそろ片付けをしてから俺達も帰るか」俺は花火の残骸を予め用意して降りたバケツの中に集めた。

「それじゃあ、私達は、向こうの花火を集めてきます」美桜と桃子は先ほど鑑賞したドラゴン型花火の残骸を回収に行ったようだ。

「・・・・・・ねえ亮介・・・・・・・」昌子は俺の傍で片付けを手伝いながら何かを言おうとする。

「ん?」唐突に名前を呼ばれて少し驚いた。

「ううん、別にいいわ・・・・・・」彼女が誤魔化すように小さく首を振った。ちょうど、ゴミを回収した美桜達と大森達が戻ってきた。

 昌子の言おうとした事が少し気にはなったが、この旅行でその言葉を聞き出すことは結局無かった。

 民宿に帰ると、見事に虎に変身した小野寺社長が、彼女達の部屋で浴衣を露わにして部屋で一人眠っていたそうであった。
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