振り返るといつもの君がいたような気がした。僕が助けた少女は有名なシンガーソングライターだった。『君の歌と僕の夢……。』

上条 樹

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君と勘違い

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「ちょ、ちょっと亮介さん・・・・・・・」美桜はなぜか顔を真っ赤にして俺についてくる事を躊躇する。

「どうしたの・・・・・・・、大丈夫だから」俺は彼女の手を掴んで導くように引いた。

「でも・・・・・・・、そんな私・・・・・・・、心の準備が出来ていません」美桜は抵抗する。

 俺は彼女をカラオケに連れて行くことにした。出来れば楽しく歌を唄ってもらい彼女の気持ちを少しでも変えられればと思っていた。以前のオリエンテーション合宿の自己紹介で彼女が趣味はカラオケと言っていた事を思い出していた。きっと歌が嫌いになった訳ではないのだと思い、俺は賭けに出る事にしたのだ。

「いいから俺に任せれば大丈夫だから・・・・・・・」俺は彼女を安心させるために精一杯微笑んでみた。

「・・・・・・・優しく・・・・・・お願いします・・・・・・・」

「この!!ド変態が!!」

「うお!!」俺は背中に猛烈な衝撃を受けて前のめりに倒れた。

「あんた!なにしてんのよ!こんなホテル街の真ん中でMIONさんをどこに連れ込む気なのよ!!」そこには顔を真っ赤にして鬼のような形相をした桃子が立っていた。

「な、なんだよ!俺はただ・・・・・・・美桜ちゃんとあそこに・・・・・・・」俺は痛みを堪えながらカラオケボックスを指さした。

「あそこね!」桃子が俺と同じように指を指す。彼女の指さした方向を見ると、そこにはラブホテルが立っていた。

「えっ、えっ!ち、違う!そこじゃない!その隣!隣の建物だ!!」そのラブホテルの隣にひっそりと小さなカラオケボックスが立っていた。

「えっ!」なぜか美桜が真っ赤な顔をして俯いた。桃子の奴が変な勘違いをさせるから彼女が恥ずかしがっているじゃないか!まったくもう・・・・・・・。

「本当に・・・・・・?」桃子が疑い満開の顔で睨みつけてくる。確かにここは、この辺りで有名な繁華街でラブホテルや風俗店が乱立している。前に、桃子が男に連れ込まれそうになっていたのもこの辺りであった。

「お前こそ、なんでこんな所にいるんだよ!また、変なオッサンに騙されてるんじゃないだろうな?」

「アホか!仕事よ、仕事!この先にテレビ局があんのよ。今日はバラエティー番組の雛壇要員なのよ」なんだか浮かれない様子であった。以前の所属事務所ではこのような仕事は断っていたようだが、彼女なりに綾への気持ちと莫大な移籍費用を稼ぐために、どんな仕事も受けているようだ。「MIONさん、駄目ですよ!亮介はスケベだから騙されないように気を付けてくださいね。それじゃあ、私は収録があるから行くわ」大きく手を振って彼女は姿を消していった。

「なんやねん!あいつ」訳が分からず俺は履き捨てるように言った。

「・・・・・・・」美桜は相変わらず下を向いている。

「ご、ごめんね。金ちゃんが変な事言うから・・・・・・・、カラオケボックスに一緒にいこうかなって思ったんだよ」

「カラオケですか・・・・・・」なんだか少し不満そうな顔をしている。やはりあんな歌の話でもめた後に、カラオケに行くというのは若干抵抗があるのだろう。

「前に、趣味はカラオケって言ってたじゃない。それに俺も歌には自信があるんだ。いつ度プロの歌手に聞いて欲しくってさ」俺は出来るだけ滑稽に話題を振った。

「まあ、いいですけど・・・・・・・」なんだか少し不満そうな声であった。きっと桃子のいらない勘ぐりのせいで美桜は引いているのかもしれない。本当に空気の読めない奴だと俺は拳を握りしめたのだった。
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