執事がヤンデレになっても私は一向に構いません

恵美須 一二三

文字の大きさ
34 / 47

自業自得でも一向に構いません

しおりを挟む



「お待たせしました」

 しばらく経って、ルベルが戻って来た。

「おあっ!?足音出せよ!びっくりしたぁ」

 足音をさせずに現れたルベルに、ティグレは大きく背中をのけぞらせて驚いた。

「お帰りなさい、ルベル。大丈夫だったみたいね」

 帰ってきたルベルは、傷一つ負っていない。何事も無くて良かったわ。

「はい、村の中の魔物は全て狩りました。こちらには来ませんでしたか?」

「ええ、一匹も来なかったわよ。あなたが頑張ってくれたおかげね。ありがとう」

「色んなところから魔物のうめき声とか聞こえて、怖かったけどな」

 ティグレは、ずっとビクビクしていたものね。

「当然のことをしたまでです。ついでに泊まれそうな家を見つけたので、行きましょう」

 ルベルに促されて、私とティグレも村の中へ足を踏み入れた。



「到着しました。ここです」

 辿り着いた家は、見る限り村の中で一番大きな家だった。

「村で一番デカい家だな。村長の家なんじゃないか?」

 ティグレが嫌そうに顔をしかめる。私も同じことを考えたから、気持ちはわかるわ。
 
「まあ、そうだろうが。中を軽くチェックしたら、部屋数も多くて泊まるには売ってつけだった。たぶん、今までこの村に泊まった人間は、ここに泊まっていたんだろう。状態も良いし、多少思うところがあっても我慢しろ」

「他の家は、ところどころ壊れているし小さかったものね。私は賛成よ」
  
 魔物に壊されたのか、村に入ってから酷い状態の家をいくつか見た。ルベルの言う通り、ここに泊まるのが良いと思うわ。

「でもぉ……」

「ガキじゃあるまいし、わがままを言うな。リヴも我慢して賛成してくれたんだ、入るぞ」

 納得していない様子のティグレを睨みつけて、ルベルはドアを開けて家の中に入った。

「ティグレ、一日だけ我慢しましょう。ね?」

「ゔぅぅ、わかったよ」

 私が家へ入ると、苦い顔をしながら結局ティグレもついて来た。



 ーー私とティグレは今、二人で家の中を探検している。

「こっちは台所かぁ。そっちの部屋はどうだ?」

「そうね……客間、かしら?ソファが二つ向かい合わせに置いてあるのよ」

『リヴを差し置いて一番最初に入るなんて許されません!』と騒ぐルベルをなんとか説得して。さっき、お風呂へ行かせることに無事成功した。魔物の返り血まみれだったのだもの。どう考えても、すぐにお風呂に入るべきだったわ。

 ルベルが一応、家の周りに結界を張ってからお風呂へ向かうと。ティグレがニヤニヤしながら『せっかくだから探検しようぜ』と言ってきた。

 冒険小説が好きな私は、探検という言葉の魅力に抗えず。ティグレと家の中を探検することにした。

「おっ!机とかあるし、村長の仕事部屋っぽいぞ。なんか面白い物でもないかぁ?」

 ティグレは部屋の中へ入り、机の上や引き出しの中をあさり始めた。

「ちょっと、そんなことまでしていいの?」

 ごそごそと色んな場所を漁って、泥棒みたいよ。

「どうせ誰もいないんだし、いいっていいって!ん?これ、日記か?」

 机の一番下の引き出しからティグレが取り出した物は、確かに日記に見える。
 
「村長の日記かしら?」

「……読むか?」

 人の日記を勝手に読むなんて。どう考えても、いけないことだとわかっているけれど。

「読んでみましょう」
 
 好奇心には勝てず。私とティグレは、日記を読むことにした。



  ☓月☓日
 あの女、私が愛人にしてやると言ってやったのに生意気にも断った。なんて無礼な奴だ。地獄に落ちろ。

  ☓月☓日
 たいした取り柄も無い男と、あの女が結婚した。私は、この村で一番権力を持っている男だぞ。あんな男を選んで私を拒絶するなど、あの女は頭がおかしいとしか思えない。見る目が無いな。

  ☓月☓日
 子供が産まれた。あの女によく似ている。しかし、娘ではなく息子だったのが口惜しい。娘だったら、今度こそ無理矢理にでも私の愛人にしてやったのに。

  ☓月☓日
 あの女が死んだ。産後の肥立ちが良くなかったらしい。私を拒絶した罰が当たったんだろう。いい気味だ。   

  ☓月☓日
 久しぶりに、あの女の子供を見た。やはり、あの女の顔にとても似ている。本当に、どうして娘ではないんだ?もったいない。
 
  ☓月☓日
 お前の息子が娘だったら私の愛人にしてやったのに、とあの女の夫に言ってやった。私の愛人になれるなど光栄なことだろう。なのに、私に殴りかかって来た。あの女と同じく、無礼だ。腹が立ったので思いきり突き飛ばしたら、頭をテーブルで打っていた。ざまあみろ。

  ☓月☓日
 アイツが死んだ。この村にいるのは薬師だけだ。死因はそこまで詳しく特定は出来ない。私があの男を突き飛ばした日から、数日経っている。あれが原因では無いだろう。私は関係無いはずだ。きっと大丈夫。大丈夫だ。

  ☓月☓日
 あの女とアイツの息子、ミカを引き取った。わざと足をかけて転ばせると、あの女に似た顔で傷ついた顔をする。それを見ると心がスッキリした。こいつは、さ晴らしにちょうどいいかも知れない。

  ☓月☓日
 嫌がらせをすると、時々ミカは私を睨む。母親に似て頭が悪いな。お前が今こんな目にあっているのは、お前の母親のせいだぞ。恨むなら、私の愛人にならなかった母親を恨め。もし、あの女が私の愛人になっていれば。お前は私の息子として生まれ、幸せに暮らせていたんだ。残念だったな。

  ☓月☓日
 異様に大きな虫を見つけた。ミカが育てたようだが、明らかに魔物だ。ミカの目の前で殺してやろうとした時、いいことを思いついた。こいつをこの村の守り神にする。村の奴らには、私がこの村の為に育てたと言って、虫を見せよう。奴らはまた、さらに私を尊敬するだろう。

  ☓月☓日
 村の奴らに狩らせた魔物を与えると、虫はますます大きくなった。今日から森の魔物を狩らせる。本格的に守り神として働いてもらおう。

  ☓月☓日
 森の魔物がいなくなったから、ミカを生贄にする。どうせ孤児だ。こいつがいなくなっても、誰も困らない。村の役に立てることを感謝しろ。

  ☓月☓日
 虫に村の奴が六人食われた。最悪だ。しかも、気がついたらいなくなっていた。食われた奴らの家族がうるさい。全部ミカのせいだと言って誤魔化ごまかした。そんなことより、早く虫を連れ戻さなければ。

  ☓月☓日
 連れ戻すように命令したのに。ミカは村を出て行ったようだ。許さない。私に逆らうのも、この村を勝手に出て行くことも。絶対に許さない。すぐに連れ戻してやる。村の奴らに森の中を探させよう。虫と一緒に捕まえて、折檻せっかんしてやる。



 ……日記はここで終わっていた。




 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...