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自業自得でも一向に構いません
しおりを挟む「お待たせしました」
しばらく経って、ルベルが戻って来た。
「おあっ!?足音出せよ!びっくりしたぁ」
足音をさせずに現れたルベルに、ティグレは大きく背中をのけぞらせて驚いた。
「お帰りなさい、ルベル。大丈夫だったみたいね」
帰ってきたルベルは、傷一つ負っていない。何事も無くて良かったわ。
「はい、村の中の魔物は全て狩りました。こちらには来ませんでしたか?」
「ええ、一匹も来なかったわよ。あなたが頑張ってくれたおかげね。ありがとう」
「色んなところから魔物のうめき声とか聞こえて、怖かったけどな」
ティグレは、ずっとビクビクしていたものね。
「当然のことをしたまでです。ついでに泊まれそうな家を見つけたので、行きましょう」
ルベルに促されて、私とティグレも村の中へ足を踏み入れた。
「到着しました。ここです」
辿り着いた家は、見る限り村の中で一番大きな家だった。
「村で一番デカい家だな。村長の家なんじゃないか?」
ティグレが嫌そうに顔をしかめる。私も同じことを考えたから、気持ちはわかるわ。
「まあ、そうだろうが。中を軽くチェックしたら、部屋数も多くて泊まるには売ってつけだった。たぶん、今までこの村に泊まった人間は、ここに泊まっていたんだろう。状態も良いし、多少思うところがあっても我慢しろ」
「他の家は、ところどころ壊れているし小さかったものね。私は賛成よ」
魔物に壊されたのか、村に入ってから酷い状態の家をいくつか見た。ルベルの言う通り、ここに泊まるのが良いと思うわ。
「でもぉ……」
「ガキじゃあるまいし、わがままを言うな。リヴも我慢して賛成してくれたんだ、入るぞ」
納得していない様子のティグレを睨みつけて、ルベルはドアを開けて家の中に入った。
「ティグレ、一日だけ我慢しましょう。ね?」
「ゔぅぅ、わかったよ」
私が家へ入ると、苦い顔をしながら結局ティグレもついて来た。
ーー私とティグレは今、二人で家の中を探検している。
「こっちは台所かぁ。そっちの部屋はどうだ?」
「そうね……客間、かしら?ソファが二つ向かい合わせに置いてあるのよ」
『リヴを差し置いて一番最初に入るなんて許されません!』と騒ぐルベルをなんとか説得して。さっき、お風呂へ行かせることに無事成功した。魔物の返り血まみれだったのだもの。どう考えても、すぐにお風呂に入るべきだったわ。
ルベルが一応、家の周りに結界を張ってからお風呂へ向かうと。ティグレがニヤニヤしながら『せっかくだから探検しようぜ』と言ってきた。
冒険小説が好きな私は、探検という言葉の魅力に抗えず。ティグレと家の中を探検することにした。
「おっ!机とかあるし、村長の仕事部屋っぽいぞ。なんか面白い物でもないかぁ?」
ティグレは部屋の中へ入り、机の上や引き出しの中を漁り始めた。
「ちょっと、そんなことまでしていいの?」
ごそごそと色んな場所を漁って、泥棒みたいよ。
「どうせ誰もいないんだし、いいっていいって!ん?これ、日記か?」
机の一番下の引き出しからティグレが取り出した物は、確かに日記に見える。
「村長の日記かしら?」
「……読むか?」
人の日記を勝手に読むなんて。どう考えても、いけないことだとわかっているけれど。
「読んでみましょう」
好奇心には勝てず。私とティグレは、日記を読むことにした。
☓月☓日
あの女、私が愛人にしてやると言ってやったのに生意気にも断った。なんて無礼な奴だ。地獄に落ちろ。
☓月☓日
たいした取り柄も無い男と、あの女が結婚した。私は、この村で一番権力を持っている男だぞ。あんな男を選んで私を拒絶するなど、あの女は頭がおかしいとしか思えない。見る目が無いな。
☓月☓日
子供が産まれた。あの女によく似ている。しかし、娘ではなく息子だったのが口惜しい。娘だったら、今度こそ無理矢理にでも私の愛人にしてやったのに。
☓月☓日
あの女が死んだ。産後の肥立ちが良くなかったらしい。私を拒絶した罰が当たったんだろう。いい気味だ。
☓月☓日
久しぶりに、あの女の子供を見た。やはり、あの女の顔にとても似ている。本当に、どうして娘ではないんだ?もったいない。
☓月☓日
お前の息子が娘だったら私の愛人にしてやったのに、とあの女の夫に言ってやった。私の愛人になれるなど光栄なことだろう。なのに、私に殴りかかって来た。あの女と同じく、無礼だ。腹が立ったので思いきり突き飛ばしたら、頭をテーブルで打っていた。ざまあみろ。
☓月☓日
アイツが死んだ。この村にいるのは薬師だけだ。死因はそこまで詳しく特定は出来ない。私があの男を突き飛ばした日から、数日経っている。あれが原因では無いだろう。私は関係無いはずだ。きっと大丈夫。大丈夫だ。
☓月☓日
あの女とアイツの息子、ミカを引き取った。わざと足をかけて転ばせると、あの女に似た顔で傷ついた顔をする。それを見ると心がスッキリした。こいつは、憂さ晴らしにちょうどいいかも知れない。
☓月☓日
嫌がらせをすると、時々ミカは私を睨む。母親に似て頭が悪いな。お前が今こんな目にあっているのは、お前の母親のせいだぞ。恨むなら、私の愛人にならなかった母親を恨め。もし、あの女が私の愛人になっていれば。お前は私の息子として生まれ、幸せに暮らせていたんだ。残念だったな。
☓月☓日
異様に大きな虫を見つけた。ミカが育てたようだが、明らかに魔物だ。ミカの目の前で殺してやろうとした時、いいことを思いついた。こいつをこの村の守り神にする。村の奴らには、私がこの村の為に育てたと言って、虫を見せよう。奴らはまた、さらに私を尊敬するだろう。
☓月☓日
村の奴らに狩らせた魔物を与えると、虫はますます大きくなった。今日から森の魔物を狩らせる。本格的に守り神として働いてもらおう。
☓月☓日
森の魔物がいなくなったから、ミカを生贄にする。どうせ孤児だ。こいつがいなくなっても、誰も困らない。村の役に立てることを感謝しろ。
☓月☓日
虫に村の奴が六人食われた。最悪だ。しかも、気がついたらいなくなっていた。食われた奴らの家族がうるさい。全部ミカのせいだと言って誤魔化した。そんなことより、早く虫を連れ戻さなければ。
☓月☓日
連れ戻すように命令したのに。ミカは村を出て行ったようだ。許さない。私に逆らうのも、この村を勝手に出て行くことも。絶対に許さない。すぐに連れ戻してやる。村の奴らに森の中を探させよう。虫と一緒に捕まえて、折檻してやる。
……日記はここで終わっていた。
10
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