執事がヤンデレになっても私は一向に構いません

恵美須 一二三

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怖くても一向に構いません

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「何を言っているんですか!?そんな危険なことはさせません!」

 やっぱり。絶対に反対されると思ったわ。

「お願い、ルベル。絶対に結界の中からは出ないと約束するから、今回は私に任せて。ね?」

「ですが」

 ルベルは、ずいぶん渋い顔をしている。心配してくれる気持ちはわかるわ。でも。

「私も、あなたの役に立ちたいのよ。ただ守られているだけなんて、もう嫌なの」

 戦うことが危険だと知っているのに、私はずっとルベルにそれを任せきりにしてきた。公爵令嬢と執事という立場だった頃は、しょうがないことだと諦めていたけれど。今は違う。

「リヴ……」

 心が揺らいでいるように見えるわね。あとひと押し、かしら?

「ルベルったら、私が自分で結界を張れると知っているくせに、それすら全然やらせてくれないじゃない。ちょっと過保護過ぎるのよ。もっと私を信じて」

「はぁ……わかりました。そのかわり、本当に結界からは出ないで下さいよ」
 
 しぶしぶ、ルベルは私がアンデッドと戦うことを許してくれた。

「ありがとう!さあ、行きましょう!」

 回復魔法をアンデッドにお見舞いしてあげるわ。

「待って下さい、一応ドアは俺が開けます」

「もう、心配性ね」

 この家の敷地内には結界があるから、入ってこられるはずが無いのに。玄関のドアをガチャリと開けて、ルベルは周囲を見渡した。

「大丈夫です」

 安全を確認し、ルベルと外へ出ると。


「まあ!結構いるわね」

 十体くらいのアンデッドが、結界に弾かれていた。

 初めて見たアンデッドは、体の所々が欠損していて、目は白目を向いていて不気味。

「この数は、異常ですね……」

 何日も遺体を放置したり、強い魔力を浴びたり、と。遺体がアンデッド化する理由は、様々あるとされている。でも、アンデッド化するのは本当に珍しく。一つの国で一年に一度起きるか起きないか、というものだと聞いたことがあるわ。

「とにかく、まずは一度やってみるわね」

 一体のアンデッドに、回復魔法を掛けてみた。

「アァアアァ!」

 大きな声を上げながら、体がサラサラと砂に変わっていく。

「やったわ!この調子で」

 残りも私が倒すわ、と言おうとしたその時。

「アァ……ウ……ロー、ラ」

 一体のアンデッドが首をぐりん!と動かし、私の方を向いて、そう言った。

「え?」

「アウローラ」

「アウローラ」

「アウローラ」

「アウローラ」

「アウローラ」
 
「アウローラ」

「アウローラ」

「アウローラ」

「アウローラ」

「なんなの!?どうして急に?」

 今まで、うめき声しか出していなかったのに。アンデッド達は私に顔を向け、一斉にアウローラと言い始めた。

「アンデッドは、体を動かすエネルギーである魔力を持つものを求めてさまよい襲うだけで、意識は無い。うめき声しか出せないはずです。言葉を話せるなんて、聞いたことがありません」

 私だけではなく、ルベルも驚いている。

 その間にも、アンデッド達は『アウローラ、アウローラ』と繰り返し唱えていて、とても気味が悪い。

「アウローラって、光の神アウローラのことなのかしら?」

「ええ、それしか思いつきませんね。理由はわかりませんが、異様なことが起きているのは確かです。あとは俺が倒しましょうか?」

 アンデッドの様子に怯える私を見たルベルに、そう提案されてしまった。

「待って!私が倒すわ」

 怯えている場合では無いわね。戦うと決めて来たのだから、怖くても最後までやり遂げないと。

 自分を奮い立たせ、いっきにアンデッド達に回復魔法を掛ける。

「無理をしなくても良かったんですよ?」

「私も、やれば出来るのよ」

 無事に倒したことに安心していると。

「ワ、タシ……ノ……モ、ノ……」

 最後の一体のアンデッドが、そう言ってから砂になった。

 明らかに私を見ていたわね。

「は?リヴはお前のものじゃないが?」

 すぐにルベルが言い返したけれど。相手は砂になってしまっているので、意味が無い。

「なんだったのかしらね?」

 アンデッドが言葉を話すだけでも不思議なのに。最後に『わたしのもの』と言い残すなんて、意味深で怖いわ。

「許さない……絶対に許しません!!この砂を全て燃やし尽くしてやります!」
 
 こめかみに青筋を立てて、ルベルは怒り狂っている。よく見たら、瞳孔まで開いているわ。

「おいおい、なんの騒ぎだぁ?」

 のんきな顔で、何も知らないティグレがやって来た。お風呂上がりで、ちょっとツヤツヤしている。

「色々あって、ルベルが怒っちゃってるのよ」

 結界の向こう側に、ルベルは無表情で何度も何度も火魔法を放っている。

「ええぇっ!?何やってんだよ!そんなにやったら、ここ以外全部燃えるぞ!?」

「延焼しないように結界は張ってある。騒ぐな」

 怒っていても、ちゃんと考えて魔法を使っていたのね。

「偉いわ、ルベル」

「絶対、今褒めるタイミングじゃないぞぉっ!!」


 ルベルの火魔法の炎がごうごうと燃え盛る中、ティグレの叫び声が大きく響いた。


 

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