12 / 12
番外編2、プロローグ2 神託~聖痕編
3、
しおりを挟む
「ニナはミナさまと双子なのにタダヒトで、しかも女なのに男だろ、残念だったな」と、悪友たちは容赦ない。
痣がないぶんミナよりもきれいなはずなのに、ニナはきれいだといわれたことなど一度もなかった。
ニナのふるまいが許されたのも、月のものが訪れるまでだった。
王の娘たちと美貌や頭脳で選ばれた娘たちは、そのころから厳重に警護された城内の女の館で寝起きする。
彼女たちはしかるべき男のもとへ嫁ぐべく、家事采配能力を養い、あるいは愛でられるべく生きた宝石のような女となることが望まれた。
二つ下のタマのように、二十も年の差がある男の元へ、五番目の妻となることが誕生とともに決められるのも稀なことではない。
織の部の母の元に生まれたアヤは、アヤ自身が踊りが好きだとしても、創作した踊りを月光以外に披露することはない。
次々に嫁ぎ先が決まっていくなか、ニナの順はこなかった。
子供時代が終わったのはハヤトたちも同じである。
悪友たちは魚の部、匠の部、農の部、犬飼の部、織の部、そして物の部など、それぞれの部族の掟に従い、役割を果たすことを求められた。
ハヤトはどうしているのだろうと思う頃、彼らを隔てる尖った柵を楽々と越えてやってくる。そんなときハヤトは、甘い蜂の巣の欠片や、山の民と交換して手に入れたといううさぎのような形の淡水真珠や熊の手を手土産にして、ニナだけでなく娘たちを驚かせ、うらやましがらせたのである。
しかしながら、十五になっても十六になってもハヤトの肌に一人前の戦士のしるしである藍の刺青が刻まれることはなかった。
抜群の運動神経と弓矢の腕前を誇っても、ハヤトの成長はゆるやかだった。
十八の夏、事件が起こった。
朱の国に組み込まれた海辺の国が、漂着した瀕死の男たちをひそかに匿っていたことが発覚したのだ。
嵐の夜から既に二月が経つ。
彼らの言葉は朱の一族に古くから伝わる言葉ととてもよく似ていた。
異国の男たちが城に迎えられるその朝、娘たちは肌に香りの良い油が塗り込められ髪は念入りにくしけずられ、巻き上げられた。
顔にはおしろいが厚く塗られ、頬には紅を、唇はうさぎの筆で赤く引かれる。特にニナは、婚礼の夜かと思うぐらいに仰々しく飾り立てられた。通訳に抜擢されたのだった。
痣がないぶんミナよりもきれいなはずなのに、ニナはきれいだといわれたことなど一度もなかった。
ニナのふるまいが許されたのも、月のものが訪れるまでだった。
王の娘たちと美貌や頭脳で選ばれた娘たちは、そのころから厳重に警護された城内の女の館で寝起きする。
彼女たちはしかるべき男のもとへ嫁ぐべく、家事采配能力を養い、あるいは愛でられるべく生きた宝石のような女となることが望まれた。
二つ下のタマのように、二十も年の差がある男の元へ、五番目の妻となることが誕生とともに決められるのも稀なことではない。
織の部の母の元に生まれたアヤは、アヤ自身が踊りが好きだとしても、創作した踊りを月光以外に披露することはない。
次々に嫁ぎ先が決まっていくなか、ニナの順はこなかった。
子供時代が終わったのはハヤトたちも同じである。
悪友たちは魚の部、匠の部、農の部、犬飼の部、織の部、そして物の部など、それぞれの部族の掟に従い、役割を果たすことを求められた。
ハヤトはどうしているのだろうと思う頃、彼らを隔てる尖った柵を楽々と越えてやってくる。そんなときハヤトは、甘い蜂の巣の欠片や、山の民と交換して手に入れたといううさぎのような形の淡水真珠や熊の手を手土産にして、ニナだけでなく娘たちを驚かせ、うらやましがらせたのである。
しかしながら、十五になっても十六になってもハヤトの肌に一人前の戦士のしるしである藍の刺青が刻まれることはなかった。
抜群の運動神経と弓矢の腕前を誇っても、ハヤトの成長はゆるやかだった。
十八の夏、事件が起こった。
朱の国に組み込まれた海辺の国が、漂着した瀕死の男たちをひそかに匿っていたことが発覚したのだ。
嵐の夜から既に二月が経つ。
彼らの言葉は朱の一族に古くから伝わる言葉ととてもよく似ていた。
異国の男たちが城に迎えられるその朝、娘たちは肌に香りの良い油が塗り込められ髪は念入りにくしけずられ、巻き上げられた。
顔にはおしろいが厚く塗られ、頬には紅を、唇はうさぎの筆で赤く引かれる。特にニナは、婚礼の夜かと思うぐらいに仰々しく飾り立てられた。通訳に抜擢されたのだった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
古書館に眠る手記
猫戸針子
歴史・時代
革命前夜、帝室図書館の地下で、一人の官僚は“禁書”を守ろうとしていた。
十九世紀オーストリア、静寂を破ったのは一冊の古手記。
そこに記されたのは、遠い宮廷と一人の王女の物語。
寓話のように綴られたその記録は、やがて現実の思想へとつながってゆく。
“読む者の想像が物語を完成させる”記録文学。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜
かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。
徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。
堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる……
豊臣家に味方する者はいない。
西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。
しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。
全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
【最新版】 日月神示
蔵屋
歴史・時代
最近日月神示の予言本に不安を抱いている方もあると思うがまったく心配いらない。
何故なら日月神示では「取り越し苦労や過ぎ越し苦労はするな!」
「今に生きよ!」
「善一筋で生きよ!」
「身魂磨きをせよ!」
「人間の正しい生き方」
「人間の正しい食生活」
「人間の正しい夫婦のあり方」
「身も心も神さまからお借りしているのじゃから夜になって寝る前に神さまに一旦お返しするのじゃ。そうしたら身と心をどのようにしたらよいか、分かるじゃろ!」
たったのこれだけを守れば良いということだ。
根拠のない書籍や情報源等に惑わされてはダメだ。
日月神示も出口王仁三郎もそのようなことは一切言っていない。
これらの書籍や情報源は「日月神示」が警告する「臣民を惑わすものが出てくるから気をつけよ!」
という言葉に注目して欲しい。
今回、私は読者の皆さんに間違った解釈をされている日月神示を分かりやすく解説していくことにしました。
どうか、最後までお読み下さい。
日月神示の予言については、私が執筆中の「神典日月神示の真実」をお読み下さい。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる