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第5夜 鳳の羽
34、呪いの羽
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「告白したのはミーナにしては上出来だけど、そこからまったく進んでいないって、どういうこと!?」
ありえないと声を荒げたのは華蓮である。
寮の部屋のわたしのベッドの上で、二人寝そべっての定期女子会で、ふわふわの髪を頭のてっぺんで団子に結んでノーメイクなのにかわいい。
「進んでいない訳じゃないのよ。晴海さん、美奈ちゃん、って仲良く呼び合う間柄になったんだから!」
「そんなの、おじさんと姪っ子でも呼び合う程度なんだって!ミーナの側に、高校のときのトラウマがあるのはわかるんだけど、オジサン側にも進められない何かストッパーがあるのかなあ」
「晴海さんのストッパーって?」
声を潜めて聞くと、華蓮も眉を寄せてひそひそと答えた。
薔薇のクリームの香りがする。
同じものをわたしの肌にもたっぷりと塗りこんだのだけれど。
「たとえば、本当は男子が好きで、ミーナは目くらましだとか、年下よりも年上じゃないと駄目だとか、恵子さんのお気に入りで理事長のお気に入りでもあるし!」
「それなら、わたしははどう頑張っても駄目じゃないの……」
背中に漬け物石を背負っているかのように身体が重い。
枕に顔を押しつけた。
「その方がむしろ救われると思うよ。だって、先に進めないのはあんたのせいじゃないんだから。むしろ、そんなミーナの魅力になびかない男なんて捨て置いて、次ぎに進んじゃうか、もうすこし頑張ってみるのなら、彼をゆさぶってみてもいいんじゃない?」
「ゆさぶるって?」
「そりゃ、煮え切らない男の背中を押すのは、やはりライバルの登場じゃないの?ミーナに好意を寄せる男性をちらつかせて、うかうかしていると他の男にとられるかもと焚きつけるのよ!」
ポテトチップスを振りながら華連は熱弁する。
「カレンじゃないんだから、そんな都合良くわたしに好意を寄せてくれる人なんていないわよ」
花蓮はポテチに食いつきぼりぼりとかみ砕いた。
いっても無駄だからいわないけれど、ポテチの欠片をわたしのベッドに落とさないでほしい。
「ド金髪の留学生だってミーナにべったりなのに、どうしてそう自信がないのかなあ、これは、もう謎の領域だよね。とにかく、あんたのあの残念な男が本気を出さないのなら、この際そっちに乗り換えるというのもありと思うわよ?」
……という会話がついこの前のことである。
放課後の昼下がり。
神坂晴海事務所では、机を挟んで恋人未満である上司の神坂と、考古学コースの友人大鳥大吾がはす向かいに座っている。
大鳥大吾は黒ぶち眼鏡で、いろんな授業で一緒になると自然に近くに座ったりチームを組んだりする眼鏡仲間である。
「ここが櫻木のバイト先なんですね。初めてはいりました。神坂さんは誰にも解決できないようなことを専門にされていると聞いているんですが、最近解決された事件はどんな感じですか?」
「悪夢系はいくつか解決しましたよ。一つ解決すると、評判が評判を呼んで相談件数が増えます。他に解決したのは美奈ちゃんがホームページにあげてくれているからそれを、みてもらったらこうして僕に聞くこともありませんよ。大鳥さんは僕に仕事を依頼しようとこんな辺鄙な場所にある僕の事務所まできてくださったのでしょう?僕の実績が知りたい依頼人はホームページの隅々まで目を通してくださっているのですが、大鳥さんの場合は違うようですね」
「櫻木の、職場だから信用していないわけじゃないです」
笑顔で二人は会話しているが、冷ややかな空気がせまい事務所に満ちている。大島の前には風呂敷に包まれた長細い箱が置かれていた。
「……あの、コーヒーを淹れましょうか?」
「埃が入ると身体に毒になる場合があるからお客さんにもいらないよ、ありがとう」
神坂も負けてはいないようである。
ありえないと声を荒げたのは華蓮である。
寮の部屋のわたしのベッドの上で、二人寝そべっての定期女子会で、ふわふわの髪を頭のてっぺんで団子に結んでノーメイクなのにかわいい。
「進んでいない訳じゃないのよ。晴海さん、美奈ちゃん、って仲良く呼び合う間柄になったんだから!」
「そんなの、おじさんと姪っ子でも呼び合う程度なんだって!ミーナの側に、高校のときのトラウマがあるのはわかるんだけど、オジサン側にも進められない何かストッパーがあるのかなあ」
「晴海さんのストッパーって?」
声を潜めて聞くと、華蓮も眉を寄せてひそひそと答えた。
薔薇のクリームの香りがする。
同じものをわたしの肌にもたっぷりと塗りこんだのだけれど。
「たとえば、本当は男子が好きで、ミーナは目くらましだとか、年下よりも年上じゃないと駄目だとか、恵子さんのお気に入りで理事長のお気に入りでもあるし!」
「それなら、わたしははどう頑張っても駄目じゃないの……」
背中に漬け物石を背負っているかのように身体が重い。
枕に顔を押しつけた。
「その方がむしろ救われると思うよ。だって、先に進めないのはあんたのせいじゃないんだから。むしろ、そんなミーナの魅力になびかない男なんて捨て置いて、次ぎに進んじゃうか、もうすこし頑張ってみるのなら、彼をゆさぶってみてもいいんじゃない?」
「ゆさぶるって?」
「そりゃ、煮え切らない男の背中を押すのは、やはりライバルの登場じゃないの?ミーナに好意を寄せる男性をちらつかせて、うかうかしていると他の男にとられるかもと焚きつけるのよ!」
ポテトチップスを振りながら華連は熱弁する。
「カレンじゃないんだから、そんな都合良くわたしに好意を寄せてくれる人なんていないわよ」
花蓮はポテチに食いつきぼりぼりとかみ砕いた。
いっても無駄だからいわないけれど、ポテチの欠片をわたしのベッドに落とさないでほしい。
「ド金髪の留学生だってミーナにべったりなのに、どうしてそう自信がないのかなあ、これは、もう謎の領域だよね。とにかく、あんたのあの残念な男が本気を出さないのなら、この際そっちに乗り換えるというのもありと思うわよ?」
……という会話がついこの前のことである。
放課後の昼下がり。
神坂晴海事務所では、机を挟んで恋人未満である上司の神坂と、考古学コースの友人大鳥大吾がはす向かいに座っている。
大鳥大吾は黒ぶち眼鏡で、いろんな授業で一緒になると自然に近くに座ったりチームを組んだりする眼鏡仲間である。
「ここが櫻木のバイト先なんですね。初めてはいりました。神坂さんは誰にも解決できないようなことを専門にされていると聞いているんですが、最近解決された事件はどんな感じですか?」
「悪夢系はいくつか解決しましたよ。一つ解決すると、評判が評判を呼んで相談件数が増えます。他に解決したのは美奈ちゃんがホームページにあげてくれているからそれを、みてもらったらこうして僕に聞くこともありませんよ。大鳥さんは僕に仕事を依頼しようとこんな辺鄙な場所にある僕の事務所まできてくださったのでしょう?僕の実績が知りたい依頼人はホームページの隅々まで目を通してくださっているのですが、大鳥さんの場合は違うようですね」
「櫻木の、職場だから信用していないわけじゃないです」
笑顔で二人は会話しているが、冷ややかな空気がせまい事務所に満ちている。大島の前には風呂敷に包まれた長細い箱が置かれていた。
「……あの、コーヒーを淹れましょうか?」
「埃が入ると身体に毒になる場合があるからお客さんにもいらないよ、ありがとう」
神坂も負けてはいないようである。
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