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パリスの第一王子

30、招待リスト

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リリアスは体を溶かすあたたかな体に身を委ね、さらに熱い熱が流れ込んでくるのにまかせた。

鮮やかな赤色がベースではあるが、豊かなさまざまな色味を伴なって、心も体も隅々まで染め上げていく。
手を伸ばせば捉えられて、胸の前におりたたまれ、からだごと抱き締められる。
ふわっと体が軽くなりももの上に抱えあげられた。

「ムハンマド、、」

目を閉じたままその名を口にすると、そのまま唇を奪われる。
逃れられないように頭を固定される。
口内を凌辱するような激しいキスに、リリアスは息がつけず喘いだ。
さらに強く抱き締める背中に回された熱い腕が、すべりおりる。
ウエストを一度ぎゅっと腹に押し付けると、さらに下にすべっていく。
乱暴におしりを揉み上げられた。
唇を解放してもらえる。

「ようやくあったまってきたようだな、あなたは」

リリアスには、目を閉じていてもムハンマドの怒りはわかる。

「こんなになるまで力を使ってあいつを逃がしたのだな、、」

「、、、わかっていたの」

「あなたの挙動不審はすぐわかる」

リリアスはおりたたまれた腕をほどいてムハンマドの背中に回した。
胸を押し付ける。

「学園祭は、、、?」

「無事終わった。女子の部は創作劇が優賞したので、女神が一杯だ。女子が男装をして、男役もやる。、、お前からヒントを得たそうだ。
なかなか勇ましかったぞ」

無事に終了して良かったと思う。
「見れなかったのが残念、、他のも見たかった」

歌や舞、劇などは当日のみだが、手芸品などの創作物は学園祭が終わってももうしばらく展示される予定だった。

「そろそろいいか?あなたの中に入りたい」
「待って、、」
「待てない」

ムハンマドはリリアスの後ろの口に指をいれてほぐしだした。
だが、ムハンマドの雄は、前の口に押し当てられる。

「逃げないで受け入れろ」

ゆっくりリリアスは奥に受け入れていく。
もう無理、と思った時にムハンマドにさらに奥へ突き入れられた。

(やだ、、)

腰を浮かせて逃れようとするも、ムハンマドは片手で腰をつかみ、後ろにいれている指も抜かずリリアスを固定し、複雑にゆすり始めた。

「無茶をするなと言わなかったか?」

「ごめん、、バードに捕まってほしくなかったんだ」

リリアスのしたことは、パリス国王子の暗殺者を助ける行為だ。
リリアスが犯人の一人として捕まってもおかしくない状況である。
だがバードが捕まれば、以前バードを親衛隊にいれていたムハンマドにもあらぬ嫌疑がかけられるかもしれない。
バードに暗殺命令をくだしたのはカルサイトの弟ルージュだろう。
それが、バードの口から明るみに出れば、兄弟間の殺し合いを白日の元にさらすことになる。
バードは捕まれば自ら口を塞ぐ手段をとることが予測できた。

(結果的に、バードとルージュの繋りは切れていなかったということだ。
バードが捕まっても捕まらなくても、ジャンバラヤ族、バラモンの仕業にできる。
あの、青二才め)


次第にリリアスの中が充血し、ムハンマドを心地よく締め付ける。
辛いあえぎが、甘いものに変わっていく。
ムハンマドはリリアスが登り詰めるのを冷静に見極める。
リリアスが達してぎゅっと締め付けるのを楽しむ。

「動かないで、、」

リリアスの懇願にムハンマドは少しの間だけ止まるが、ベットに押し倒すと、今度は容赦のない、ムハンマドのリズムで抽挿を再開する。
強い刺激にリリアスはすぐにいかされた。

「あなたは一人で気持ちよくなりすぎだ」

ムハンマドはリリアスをうつ伏せにして腰を高くあげさせる。

「もう、許して、、」

リリアスは限界まで快楽を引き伸ばされて、しばしの解放を求めて喘いだ。

「こちらも欲しいのだろう?」

ムハンマドは解れた後ろの口に、愛液にぬめる己の大きく猛ったものを押し当てる。
いやいやと逃げようとするのを逃さない。
押し込んで行くが、リリアスを傷つけないように理性を振り絞る。
半ばまで納めると、リリアスのそれを握りすりあげる。
ムハンマドの手のなかで強い快楽にひくついた。
リリアスの意識をそちらに向かせて気をそらせ、さらに押し込む。

すっかり収めると、いつもより性急にリリアスの中を探り出す。
だんだんと、ムハンマドにも余裕がなくなっていく。

(あなたを私は手放せないのだ。
学校にいれたのも、あなたが望んだからだ。
それなのに、パリスの王子の思い付きの交換留学の話に目を輝かせて)

リリアスの顔をこちらに向かせ、息を乱して喘ぐ口を塞ぐ。
リリアスの舌が伸ばされ、ムハンマドの舌を、口内を唇を頬を味わう。
ムハンマドが頬に延びたリリアスの舌を舌でとらえる。
捕まえらて、リリアスはムハンマドを吸い上げた。
だがそれも、ムハンマドの激しい突きに耐えきれず、放してしまう。
ムハンマドは絶頂に達して果てた。



学園祭が終わり、学校内にはあちこち今年の女神を祝福するパレードで撒かれた花びらが散っている。
日中の喧噪が嘘のように静まり、祭りの後の寂しさがただよっていた。
犯人が捕まらないので、厳戒体制は解かれていないが、既に校内にはいないのではないか?との見方が強い。


「リリーは大丈夫か」
バーライトはリリアスが昼の部前に友人を送ってから、貧血で倒れた報告を受けていた。

「大丈夫だ、私があたためた」
とムハンマドは答える。
バーライトには意味がわからない。
なぜなら、バーライトと過ごした一年の間、リリアスは一度も精霊の力を使わなかったから。
リリアスが精霊の力を複数同時に使った後の、精魂尽き果てた姿をバーライトは知らない。

「見掛け通りジャンバラヤ族だと思うか?」
バーライトは訊ねる。

「まさか、弟の青二才の方だろう」
「あちらは王位争奪戦のまっただ中か、、」

バーライトは一年ほど前に、リリーが自分を求めてすがりついた視線を忘れられていない。
あの時、バーライトはリリーより王座を選んだ。
もしリリーを選んでいたらどうなっていたのだろうと、死ぬ間際まで思うのかもしれないと、バーライトは思うのである。


ムハンマドが退いた後に届いた警察兵団の報告書に目を通す。
招待状の現物確認、招待リストの照らし合わせだ。

招待状忘れ8名。招待リスト全員確認済み。
招待者の来校1853名。
出たもの1854名!

招待リストに追加で手書きの殴り書きがあった。

それには
と記入されていた。
不思議なことに、書いた覚えのある者はいない。
バーライトは無言で報告書を握りつぶす。


その後、西のジャンバラヤ族の若き族長イーサンは、暗殺に使われた矢をみて一年以上前に粛清されたはぐれものの物と断定する。

結果、この王都国立学校で密かに行われた暗殺未遂事件は、事件があったことも公にされずうやむやのまま、幕を閉じるのである。


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