24 / 27
第2話 もう一つの顔
23、素顔 ①
しおりを挟む
昨日の雨が嘘のように晴れ上がり、校庭の樹木も埃をすっかり落とし艶めいていた。
風も新緑の匂いを運んできていて、通常であれば気持ちが良い朝であり、誰もいなければ鼻歌でも歌いたい朝である。
それなのに、リシュアは笑顔を張り付け今朝から完璧な装いである。
クルトウシの学院生らしい規律正しいふるまいに言動。
どんなに気持ちの良い朝でも、その小鳥が機嫌よく鳴いて空を飛ぶようには飛べない。
友人たちもそんな普段以上にお嬢様らしい自制のきいたふるまいのリシュアに、同じく背伸びをした笑顔と挨拶をリシュアとそのリシュアが適度に距離を保ちつつ学院を案内する貴人に向ける。
その貴人とはリシュアの養い親、シリアンである。
「リシュア、一体どういうことなのよ」
くるくる髪のサラージュがシリアンが離れたすきを狙い、リシュアにぶつかるようにして尋ねた。
サラージュはリシュアの数少ない友人の一人である。
黒髪の生粋の安寧国人の子息子女が多い中、彼女はリシュアと同胞といえる。
彼女が安寧国に連れてこられた経緯は本人が口にしないでも過酷であるのだろう。
異国人であることは、リシュアと同様に淡い髪色目色で一目瞭然であった。
「あなたの養父は、まあ、養父というほど年を取ってはないけど、あんたには全く興味がなかったのではなかったかしら」
「わたしに興味なんて示したことはないわよ」
リシュアは肩をすくめた。
きしりと首筋が痛む。
半日シリアンといるだけで肩がありえないほど凝っている。
昨日館を抜け出していたことを知られ、リシュアはその行動を完全に疑われてしまっていた。
それで、シリアンは今日の予定をすべてキャンセルし、その代わりに彼が一度もしたことがないこと、リシュアの学校の見学に訪れている。
本当にきちんと学業を修めているのか、確認しにきたのだ。
リシュアが館を抜け出して娼館を出入りしていたことはシリアンとの間で築いていたとは言えないほどの信頼を、さらに粉々に打ち砕いた。
そのため、シリアンはリシュアの朝の通学にダビドや護衛たちと物々しく同行し、理事と面談した後、学内の案内を理事から直接リシュアがまかされてしまったのだった。
そして、授業の様子を見せろという。
見せた結果どうなるのか、暗澹たる気持ちになる。
おのれの目を欺くようなことをする娘など庇護し続ける必要などないと思うのか。
手放すことを選ぶのか。
シリアンの考えを読めないまま、リシュアは完璧な笑みを張り付け、シリアンと並んで校内を歩き回ることになったのである。
午後からはシリアンは再び理事室に呼び戻される。
シリアンがしばらく戻ってこないことを知ると、リシュアの周りに女子たちが集まりだした。
いつもつんとしてリシュアを歯牙にもかけない様子であるクラスの生粋のお嬢さまたちが、リシュアにシリアン皇子を紹介して欲しいという。
サラージュは心外そうに眉をあげた。
「あなたに興味がないのなら、養父になったりしないわよ。それで、お嬢さま方を紹介してあげるの?シリアンさまは独身だし、まだ正妻を娶っていないのだから、あなたが紹介してあげるあの中の誰かが妻になるかもしれないんだけど?」
「それは、面白くもない冗談でしょう」
作った笑みでリシュアは返した。
「まあ、たとえそうなってもあなたは大丈夫でしょうけれど。彼女たちよりもずっと素敵で美しいのだから。だからあなたはシリアンさまをとりこにし続けなさいよ?」
サラージュは力を込めて言う。
「とりこって、、、」
リシュアは冗談でもないサラージュの言葉に絶句する。
とりこも何も、シリアンと会話をしたことも思い出すだけでも数回ほどしかないのだ。
年に数度、館に戻ってきてもシリアンは忙しく立ち働いていて、リシュアに興味を向けたことがなかったのである。
そういってもサラージュは信用してくれないが。
「寵を失ったわたしたちは哀れなものよ。正妻が迎えられても正妻よりも目立たず控えめにしつつ、閨では主人をとりこにして一生囲ってもらえるようにしなければならないわ。わたしたちがここに教養を身に付けるのもそのため」
サラージュはリシュアから目をそらして庭を見る。
リシュアとサラージュの立場はよく似ている。
サラージュは貴族の養女である。
自分自身に言い聞かせているのだとリシュアは悟ったのである。
リシュアにはサラージュのような覚悟はない。
リシュアがこのクルトウシのシリアンの館に留まるのは、惰性もあったのだけれど安寧国を知るためである。
館では奴隷扱いではなく、養い子として何不自由なく育てられた。
一般市民が通うことなどできない学院にも入れて学ばせてもらっている。
10歳からの5年間は、リシュアが館から逃走して草原の国へ出奔するには世間を知らずおさなすぎた。
頼るべき者たち、顔見知りの村の者たちは死んでしまった。
捕虜になった者たちとも、バラバラになってしまった。
リシュアはたったひとり投げ出されたのだ。
幼いリシュアに館のメグ女中頭や老執事たちなどリシュアを取り巻く人たちは寛大であった。
シリアンの思惑はどうであれ、広げられた懐の中にリシュアは飛び込んでしまった。
シリアンの意図はわからない。
巫女の振りをしろと言われたが、その振りなどしたこともない。
具体的に求められたこともない。
実際に自分にできるとも思えない。
そもそもその振りをすることで、シリアンにどういう利益があるのかもわからない。
厄を払い、天啓を授けるとでも言って、巫女のリシュアを金持ちに抱かせて金を稼ぐつもりなのか。
リシュアはその考えを頭から払う。
シリアンには金を稼ぐ必要などない。
この彼の直轄地は交易や工業で豊かである。
年々、人が流入し町が大きくなり賑やかになっていくのをリシュアは目の当たりにしていた。
シリアンはその仕組みづくりに必死で、リシュアのことなど昨晩のあの事件まで完全に失念していたのだ。
金よりも、巫女のもつ属性の方に興味があったのかもしれない。
例えば反乱する草原の民の気持ちを支配するために、巫女を利用するとか。
草原との境にあるクルトウシは、大がかりなものはないが、しばしば草原の民の襲撃を受けることもあったのだ。
最近はそれも減ってきているのではあるが。
「シリアン殿下が弓の勝負をされるぞ!!」
そのときリシュアの思考を断ち切る男子生徒の上ずった叫び声。
わっと教室が沸いた。
シリアンが戻ってこないので、リシュアは通常授業の教室に収まっていた。
どうやらシリアンは、弓術の授業の見学に誘われ、そのまま生徒に強引にその腕前を請われたようであった。
シリアンの弓術など見たことがないリシュアは思わず腰を浮かした。
見に行きたくなったのだ。
「こら、待ちなさい。授業があるのですよっ」
数学の先生が引き止めようとするのは無駄に終わる。
先生でさえも、皇子の腕前を見てみたいというのが本音である。
窓という窓が開かれ、そして実際に近くで見ようと運動場へ駆けだした者たちも多い。
リシュアとサラージュも間近で見ようと外に駆けだしたその一人である。
グランドに出ると、さらに近くに寄ろうとした生徒たちが、体格の良いシリアンの護衛の騎士たちに阻まれていた。
シリアンが滞在する時にしかいない、この護衛の騎士たちも、クルト学園の生徒たちの鑑賞の対象であったが、今は剥き身の剣のような彼らよりも、バーライト皇の皇子の実力を知りたかった。
そうめったに披露することなど王族にはない。
これ以上ないという注目を集めながら、シリアンはジャケットを脱いで側近のダビドに渡す。
片胸をあらわにした。
半裸の姿に、おお~と女子たちの間から軽いどよめきが沸く。
渡された弓の弦の張り具合を何度か確認すると、きりりと弓を引き絞った。
「ねえ、皇子さまの腕前は実際のところどうなの?皇族は騎士や側近たちに守られて、戦うのは彼らでしょう?実際に弓をひくことなんてないから、外したら恥ずかしいわね」
サラージュがこそりとリシュアに囁いた。
そういうサラージュの目は、他の女子たちと同様にシリアンの日の光を返す半裸姿に釘付けである。
「知らないわよそんなこと」
リシュアは口元を引き締めた。
肌を見せなくても弓ぐらい引けるではないかと思うのだ。
リシュアの弓道着姿のクラスの男子、ブライアンが恭しく控えている。
彼は以前、リシュアに交際を迫ったこともあった。
将来国の中枢にかかわる仕事をしたいと明言している秀才である。
ブライアンは後ろで息を飲みつつ射られるのを待つ観客に視線を向け、リシュアを見つけると、その瞬間生意気な笑みを口元に浮かべた。
バーライト皇に姿かたちは似ているにもかかわらず、その実、実力がないと見せつけて恥をかくことを見たい男子学生たちが、シリアンをこの弓場にひっぱりあげたのは確実だった。
沸き上がった唾をリシュアは飲み込んだ。
シリアンの実力をリシュアは知らない。
シリアンのことなどリシュアは全く知らなかったのだった。
風も新緑の匂いを運んできていて、通常であれば気持ちが良い朝であり、誰もいなければ鼻歌でも歌いたい朝である。
それなのに、リシュアは笑顔を張り付け今朝から完璧な装いである。
クルトウシの学院生らしい規律正しいふるまいに言動。
どんなに気持ちの良い朝でも、その小鳥が機嫌よく鳴いて空を飛ぶようには飛べない。
友人たちもそんな普段以上にお嬢様らしい自制のきいたふるまいのリシュアに、同じく背伸びをした笑顔と挨拶をリシュアとそのリシュアが適度に距離を保ちつつ学院を案内する貴人に向ける。
その貴人とはリシュアの養い親、シリアンである。
「リシュア、一体どういうことなのよ」
くるくる髪のサラージュがシリアンが離れたすきを狙い、リシュアにぶつかるようにして尋ねた。
サラージュはリシュアの数少ない友人の一人である。
黒髪の生粋の安寧国人の子息子女が多い中、彼女はリシュアと同胞といえる。
彼女が安寧国に連れてこられた経緯は本人が口にしないでも過酷であるのだろう。
異国人であることは、リシュアと同様に淡い髪色目色で一目瞭然であった。
「あなたの養父は、まあ、養父というほど年を取ってはないけど、あんたには全く興味がなかったのではなかったかしら」
「わたしに興味なんて示したことはないわよ」
リシュアは肩をすくめた。
きしりと首筋が痛む。
半日シリアンといるだけで肩がありえないほど凝っている。
昨日館を抜け出していたことを知られ、リシュアはその行動を完全に疑われてしまっていた。
それで、シリアンは今日の予定をすべてキャンセルし、その代わりに彼が一度もしたことがないこと、リシュアの学校の見学に訪れている。
本当にきちんと学業を修めているのか、確認しにきたのだ。
リシュアが館を抜け出して娼館を出入りしていたことはシリアンとの間で築いていたとは言えないほどの信頼を、さらに粉々に打ち砕いた。
そのため、シリアンはリシュアの朝の通学にダビドや護衛たちと物々しく同行し、理事と面談した後、学内の案内を理事から直接リシュアがまかされてしまったのだった。
そして、授業の様子を見せろという。
見せた結果どうなるのか、暗澹たる気持ちになる。
おのれの目を欺くようなことをする娘など庇護し続ける必要などないと思うのか。
手放すことを選ぶのか。
シリアンの考えを読めないまま、リシュアは完璧な笑みを張り付け、シリアンと並んで校内を歩き回ることになったのである。
午後からはシリアンは再び理事室に呼び戻される。
シリアンがしばらく戻ってこないことを知ると、リシュアの周りに女子たちが集まりだした。
いつもつんとしてリシュアを歯牙にもかけない様子であるクラスの生粋のお嬢さまたちが、リシュアにシリアン皇子を紹介して欲しいという。
サラージュは心外そうに眉をあげた。
「あなたに興味がないのなら、養父になったりしないわよ。それで、お嬢さま方を紹介してあげるの?シリアンさまは独身だし、まだ正妻を娶っていないのだから、あなたが紹介してあげるあの中の誰かが妻になるかもしれないんだけど?」
「それは、面白くもない冗談でしょう」
作った笑みでリシュアは返した。
「まあ、たとえそうなってもあなたは大丈夫でしょうけれど。彼女たちよりもずっと素敵で美しいのだから。だからあなたはシリアンさまをとりこにし続けなさいよ?」
サラージュは力を込めて言う。
「とりこって、、、」
リシュアは冗談でもないサラージュの言葉に絶句する。
とりこも何も、シリアンと会話をしたことも思い出すだけでも数回ほどしかないのだ。
年に数度、館に戻ってきてもシリアンは忙しく立ち働いていて、リシュアに興味を向けたことがなかったのである。
そういってもサラージュは信用してくれないが。
「寵を失ったわたしたちは哀れなものよ。正妻が迎えられても正妻よりも目立たず控えめにしつつ、閨では主人をとりこにして一生囲ってもらえるようにしなければならないわ。わたしたちがここに教養を身に付けるのもそのため」
サラージュはリシュアから目をそらして庭を見る。
リシュアとサラージュの立場はよく似ている。
サラージュは貴族の養女である。
自分自身に言い聞かせているのだとリシュアは悟ったのである。
リシュアにはサラージュのような覚悟はない。
リシュアがこのクルトウシのシリアンの館に留まるのは、惰性もあったのだけれど安寧国を知るためである。
館では奴隷扱いではなく、養い子として何不自由なく育てられた。
一般市民が通うことなどできない学院にも入れて学ばせてもらっている。
10歳からの5年間は、リシュアが館から逃走して草原の国へ出奔するには世間を知らずおさなすぎた。
頼るべき者たち、顔見知りの村の者たちは死んでしまった。
捕虜になった者たちとも、バラバラになってしまった。
リシュアはたったひとり投げ出されたのだ。
幼いリシュアに館のメグ女中頭や老執事たちなどリシュアを取り巻く人たちは寛大であった。
シリアンの思惑はどうであれ、広げられた懐の中にリシュアは飛び込んでしまった。
シリアンの意図はわからない。
巫女の振りをしろと言われたが、その振りなどしたこともない。
具体的に求められたこともない。
実際に自分にできるとも思えない。
そもそもその振りをすることで、シリアンにどういう利益があるのかもわからない。
厄を払い、天啓を授けるとでも言って、巫女のリシュアを金持ちに抱かせて金を稼ぐつもりなのか。
リシュアはその考えを頭から払う。
シリアンには金を稼ぐ必要などない。
この彼の直轄地は交易や工業で豊かである。
年々、人が流入し町が大きくなり賑やかになっていくのをリシュアは目の当たりにしていた。
シリアンはその仕組みづくりに必死で、リシュアのことなど昨晩のあの事件まで完全に失念していたのだ。
金よりも、巫女のもつ属性の方に興味があったのかもしれない。
例えば反乱する草原の民の気持ちを支配するために、巫女を利用するとか。
草原との境にあるクルトウシは、大がかりなものはないが、しばしば草原の民の襲撃を受けることもあったのだ。
最近はそれも減ってきているのではあるが。
「シリアン殿下が弓の勝負をされるぞ!!」
そのときリシュアの思考を断ち切る男子生徒の上ずった叫び声。
わっと教室が沸いた。
シリアンが戻ってこないので、リシュアは通常授業の教室に収まっていた。
どうやらシリアンは、弓術の授業の見学に誘われ、そのまま生徒に強引にその腕前を請われたようであった。
シリアンの弓術など見たことがないリシュアは思わず腰を浮かした。
見に行きたくなったのだ。
「こら、待ちなさい。授業があるのですよっ」
数学の先生が引き止めようとするのは無駄に終わる。
先生でさえも、皇子の腕前を見てみたいというのが本音である。
窓という窓が開かれ、そして実際に近くで見ようと運動場へ駆けだした者たちも多い。
リシュアとサラージュも間近で見ようと外に駆けだしたその一人である。
グランドに出ると、さらに近くに寄ろうとした生徒たちが、体格の良いシリアンの護衛の騎士たちに阻まれていた。
シリアンが滞在する時にしかいない、この護衛の騎士たちも、クルト学園の生徒たちの鑑賞の対象であったが、今は剥き身の剣のような彼らよりも、バーライト皇の皇子の実力を知りたかった。
そうめったに披露することなど王族にはない。
これ以上ないという注目を集めながら、シリアンはジャケットを脱いで側近のダビドに渡す。
片胸をあらわにした。
半裸の姿に、おお~と女子たちの間から軽いどよめきが沸く。
渡された弓の弦の張り具合を何度か確認すると、きりりと弓を引き絞った。
「ねえ、皇子さまの腕前は実際のところどうなの?皇族は騎士や側近たちに守られて、戦うのは彼らでしょう?実際に弓をひくことなんてないから、外したら恥ずかしいわね」
サラージュがこそりとリシュアに囁いた。
そういうサラージュの目は、他の女子たちと同様にシリアンの日の光を返す半裸姿に釘付けである。
「知らないわよそんなこと」
リシュアは口元を引き締めた。
肌を見せなくても弓ぐらい引けるではないかと思うのだ。
リシュアの弓道着姿のクラスの男子、ブライアンが恭しく控えている。
彼は以前、リシュアに交際を迫ったこともあった。
将来国の中枢にかかわる仕事をしたいと明言している秀才である。
ブライアンは後ろで息を飲みつつ射られるのを待つ観客に視線を向け、リシュアを見つけると、その瞬間生意気な笑みを口元に浮かべた。
バーライト皇に姿かたちは似ているにもかかわらず、その実、実力がないと見せつけて恥をかくことを見たい男子学生たちが、シリアンをこの弓場にひっぱりあげたのは確実だった。
沸き上がった唾をリシュアは飲み込んだ。
シリアンの実力をリシュアは知らない。
シリアンのことなどリシュアは全く知らなかったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる