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一年もわたしに追いつくために走り続けたなんて、こんな最高の愛の告白などなかった。
走りの好きなわたしには最高の口説き文句である。
彼は底抜けに頭がいいと思う。
彼のことを知りたいと思う。

わたしの運の悪いヤツという呪縛がほろりと緩んだ。


藤崎啓司は姉と同じクラスだった。
だが、色白で楚々とした美人の姉とこんがり肌のわたしが姉妹だとはよぎりもしなかったようである。

付き合い始めて初めてのお誕生日。
藤崎啓司から小さなプレゼントをもらう。
なんのことはない、スポーツタオルだったのだけど、それは一番のお気に入りになった。
それを持っていると彼に応援してもらっているような気がするのだ。

汗をこまめに拭く回数が増えたのか。
顔を洗ってふく回数が増えたのか。
それとも幸せオーラがでているのか。
恋する気持ちがホルモンバランスを整えてくれたのか。

ある日姉のかおりがわたしの顔を覗き込んだ。

「ねえ、何かいいことあったの?あんたきれいになったんじゃない?何かあったの?いいなさい」

問い詰められて、藤崎啓司と付き合っていることを白状する。
姉は大きな目をさらに大きく見開き驚いた。

「まさか、あの優等生で堅物を落としたのがさくらなわけなの?
何人の女子を振っていたか知っている?ずっと好きな人がいると一点張りだったわ。
わたしもいいなって思っていたのに。それがまさか、去年からよりによってずっとさくらのことが好きだったなんて」

初めてみせる、姉のほんのすこし悔しさがにじむ顔だった。



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